【起業準備シリーズ】そもそも株式会社とは?

香川県高松市の司法書士 川井事務所です。

株式会社を経営したり、株式会社に勤めている人は多いと思います。
誰でもその名は見聞きしているはずですが、株式会社のことをよくわかっていますという人は少ないのではないでしょうか。

この記事では、個人と法人、株式会社の歴史と仕組み、株式上場のメリット・デメリット、非公開会社の実際などについて取り上げています。

起業をお考えの方にとってご参考になる内容となっていると思います。

目次

個人と法人

株式会社をつくりたいよー

司法書士K

株式会社をつくりたい?
よくみたらキャラクタービジネスやってる顔ですね。

でも株式会社って名前はきくけど、いまいちよくわからないといいますか。

司法書士K

たしかに、わかっている人少ないかもしれないですね。

個人事業をやっている人が会社をつくることを、よく法人化っていうじゃないですか。
法人って何ですか?

司法書士K

私たち生身の人間は、生まれたときから人として権利が認められていて法律行為ができますよね。
つまり、自分の名前で契約したりすることができますよね。

そうですね。

司法書士K

法人は法律によってつくられる「人と同じように法律行為をすることができる存在」のことです。
法人の名前で契約したりすることができるようになります。

だから、法人。法律上の人、ってことですか。
なんかバーチャルな感じですね。

司法書士K

そうですね。乱暴な言い方かもしれませんが、人の頭の中にしか存在しないものです。

そうかも。
で、会社と言うのは??

司法書士K

会社は法人の種類のうちのひとつです。

司法書士K

法人は「営利法人」「非営利法人」のような分類のされ方をすることがあります。

司法書士K

「営利法人」は利益を追求して法人の構成員に利益を分配することを目的としています。

司法書士K

「非営利法人」は法人の構成員に利益を分配することを目的としない法人で、代表的なのは一般社団法人やNPO法人、学校法人、宗教法人などが挙げられます。

あ~。聞いたことあるかもしれないです。

司法書士K

「営利法人」でいちばんメジャーな存在が株式会社です。
「会社法」という法律を根拠につくることができます。

株式会社の歴史

なぜ株式会社がメジャーな存在になったんでしょうか。

司法書士K

では株式会社の歴史から振り返ってみましょうか。

そこから⁈

司法書士K

株式会社のはじまりは1600年代初頭のオランダ東インド会社といわれています。

世界史で習ったような・・・いわゆる大航海時代ですね。
日本では江戸時代初期ぐらい。

司法書士K

はい。
そのオランダ東インド会社が「有限責任」という考え方を発明をしたといわれています。

有限責任?

司法書士K

有限責任とは投資家が会社に出資をした金額以上の責任は負わないということです。
たとえば、株式会社に1,000万円出資したとして、その株式会社が事業に失敗してつぶれたとしても、その1,000万円の価値がゼロになるだけです。


それはそうなんじゃないですか。
当たり前のように思っていました。

司法書士K

いまじゃ当たり前に感じる有限責任ですが、それに対して「無限責任」という考え方がありまして、有限責任が発明されるまでは投資家は無限責任を負うしかありませんでした。

どういうことですか?

司法書士K

たとえば、投資家が出資した会社が借金したまま事業に失敗したら、会社の借金まるごと負担しなければならないのが無限責任です。

どこまで責任を負うかわからないってことですか。
無限責任ってこわいですね。

司法書士K

そうなんです。
これが有限責任となると、投資家は出資しやすくなりますし、事業者からみれば資金調達しやすくなります。

なるほど~

司法書士K

資金が集まるということは、より大きな事業をすることができるようになるんですよ。
人間ひとりでつくれる船の大きさなんて知れてるじゃないですか。

はい。

司法書士K

大金を集めて、人材を集めて力を合わせた方がより大きな船をつくることができます。
鉄道をつくることもできますし、油田を掘ることだってできるようになります。

たしかにそうですね。

司法書士K

それに小口でたくさん資金を集めるということはリスクヘッジにもなるんです。
それまでは王族・貴族から大口の資金を調達して船を建造して貿易事業をしていたものが、庶民も「株式」を買えるようになっていきました。
こうして証券取引所が誕生しました。結果、より大きな事業ができるようになっていきました。

株式について知りたいです。

司法書士K

株式というのは、簡単にいえば、出資をしてくれた人に対して渡す「証明書」のようなものです。株式を持っている人を株主といいます。

その株主に事業からうまれた利益を分けるということですね?

司法書士K

そうです。
こうして現在の株式会社の原型がうまれました。
現在の上場会社が本来の株式会社の形に近いといっていいかもしれません。

今では当たり前になっている有限責任って画期的な発明だったというわけですね。

司法書士K

その仕組みが経済を大きく発展させてきたといっても過言ではありません。

株式会社の仕組み

現在の株式会社の仕組みについて教えてください。

司法書士K

株式会社は株主から出資を受けて事業をすることになりますが、株主から出資を受けた資金は、銀行からの融資とは異なり、返済する義務はありません。

司法書士K

会社は、その返済しなくてもよい資金を受け取るのと引き換えに、次の4つの権利を株主に与えることになります。

  1. 利益の配当を受ける権利
  2. 残余財産の分配を受ける権利
  3. 株主総会で議決権を行使することができる権利
  4. 株式を自由に譲渡することができる権利

株主は出資したお金が会社から戻ってこない代わりに④の株式を自由に譲渡する権利が与えられているというわけですね。

司法書士K

そうです。
それから、株主は株主総会で会社の経営者を選ぶことができます。
もちろん株主と経営者が同一人物であってもかまいませんが、法律上は別の地位です。

ああ~、「所有と経営の分離」ってやつですか。学校で習ったような。

司法書士K

はい。
経営者は事業年度ごとに会社の決算書をつくって、株主総会で株主に事業と決算の報告をして、株主から決算の承認を受けなければなりません。

決算書?

司法書士K

会社の売上や支出、現預金、借金などを記録した成績表のようなものです。
株主は、その成績表をみて、株式の売買の参考にしたり、成績が悪ければ、経営者を変えようかという判断になってきます。

株主の力ってすごいですね。

司法書士K

経営者は株主から経営を任されているという関係ですので、経営者には任期というものがあります。

国民に政治を任されている政治家に任期があるようなものですね。

司法書士K

そのとおりです。
株主は経営者の任期ごとに経営者に継続して会社を経営してもらうか、辞めてもらうか判断していくことになります。

株式上場のメリット・デメリット

株式会社の仕組みはなんとなくわかってきました。

どうせ株式会社つくるなら上場したいよー

司法書士K

どうして上場したいんですか?

なんか、かっこいいじゃないですか。
箔がつくっていうか。
どうせやるなら上を目指したいし。

司法書士K

上場するメリットは主に2つあります。

2つ⁈

司法書士K

はい。
ひとつは株式を売って換金できるようになるということです。
難しいことばでいえば、株式の流動性が上がるということです。

さっき、株主の権利4つあるうちの「④株式を自由に譲渡することができる権利」というのがあったじゃないですか。

司法書士K

株式上場していない株式会社の株式は、ほぼ間違いなく「株式の譲渡制限」が付いていて、自由に譲渡することができません。
理由はまた後で説明します。

はい。

司法書士K

株式を持っている創業者は、株式の売却益を得ることができます。
ベンチャーキャピタルなどの投資家が出資している会社であれば、上場により投資資金を回収することができます。
ストックオプションを発行して、役員・従業員へのインセンティブを提供することができるようになります。

すごいメリットですね。
絶対に株式の売却益がほしいです。
絶対に株式の売却益がほしいです。
絶対に株式の売却益がほしいです。
絶対に株式の売却益がほしいです。
絶対に株式の売却益がほしいです。

司法書士K

もうひとつの上場メリットは資金調達がしやすくなるということです。
株式会社の歴史でみたように、小口の出資を広く募ることができるようになるからです。
1億円持っている人が1,000万円出資するとなると難しいかもしれないけど、100万円だったらまあ出してもいいかなみたいな感覚ですね。
逆に銀行からの融資で資金調達できる事業であれば、上場する必要はないんです。

さっき上場会社が株式会社の本来の形に近いと言っていたのはそういうことですね。

司法書士K

この2つの目的がなければ、上場する必要がないといえます。

上場したら社会的な信用力が上がるとか、人材を集めやすくなるとか聞きますけど。

司法書士K

それはあくまでも上場の副産物みたいなもので、上場の本質ではないです。
それらは上場しなくても得られるものです。

そうなんですか。

司法書士K

竹中工務店、YKK、佐川急便、大創産業(ダイソー)、JTB、ロッテ、小学館、朝日新聞社など非上場でも有名企業はたくさんあります。

へえ、意外。
逆に上場のデメリットは何がありますか。

司法書士K

まずは、上場維持コストがかかるということです。
内部統制の構築やIR(投資家向け広報)など必要な部署を置かなければなりませんし、株主総会の開催、監査法人による監査など、年間1億円以上かかるといわれています。

そんなに。

司法書士K

投資家向けに決算内容やビジネスモデルを公開しないといけないところもデメリットといえます。

それがわからないと投資の判断ができないですからね。

司法書士K

あとデメリットとしては、メリットの裏返しでもありますが、誰でも株式を買えることになるので、誰に株式を買われても仕方がない。誰が株主になるかわからない。というのがあります。

そっか。上場企業の買収防衛策ってそもそもおかしな話なんですね。

司法書士K

そうです。それがいやならMBOして非上場化した方がいいです。

ちょっと何言っているかわかんないです。MBO?

司法書士K

Management Buyoutの略称で、会社の経営陣が自社の株式を買い集めて自らオーナー経営者になることです。
吉本興業や、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブなど、この手法で非上場化した会社はけっこうあります。

へえ。それで、買収の心配はなくなるし、株主から経営について意見されることもなくなるわけですね。

非公開会社の実際

さきほど非上場会社の株式はほとんど「株式の譲渡制限」がついているという話でしたが。

司法書士K

そうです。
世の中のほとんどの株式会社は株式の譲渡制限がついた非公開会社です。
「非上場会社」と「非公開会社」は同じ意味ではないですが、ここではそれほど気にする必要ありません。

司法書士K

ちなみに非上場会社を「プライベートカンパニー」、上場会社を「パブリックカンパニー」と呼んだりすることもあります。

なぜ株式の譲渡制限をつけるのですか?

司法書士K

ひとつは会社の株式が望まない人に渡るのを防ぐためです。
株式は会社の支配権みたいなものですから。


これって、誰からみて「望まない人」の話ですか?

司法書士K

主にオーナー経営者からみて望まない人ですね。
オーナー経営者とは、自ら会社に出資して、かつ、自ら経営している人です。

ここまで株式会社の歴史や上場会社の話を聞いてきましたが、ここへきて株式会社のイメージがだいぶ変わってきました。
株主(所有)と経営も分離していないんですね?

司法書士K

そうですね。
法律上は別の地位ですが、事実上、所有と経営は分離されていないことが多いです。

オーナー経営者がだいぶ自由に経営できるというわけですね。
まさに「プライベートカンパニー」。
ほかに譲渡制限をつける理由があるんですか?

司法書士K

株主間の持株比率を維持するためです。

といいますと?

司法書士K

株主間の譲渡を制限なく認めてしまった場合、筆頭株主だと思っていたら、第2位の株主が少数株主から自由に株式を取得してしまい、筆頭株主の地位が脅かされることになりました。みたいなことになりかねません。

司法書士K

それから、株式会社の歴史のところで出てきた有限責任についても、補足があります。

なんですか?

司法書士K

会社が銀行から融資を受けるときは、会社代表者、つまり社長のことですが、社長が連帯保証人になるのが普通です。

といいますと?

司法書士K

結局、社長個人が無限責任を負うような形になります。
上場会社にはそういうのないんですが。

えええ。
それも違うんですか。
有限責任の素晴らしさに感動していた時間なんだったんだ。

司法書士K

株式会社といっても、上場している会社とそうでない会社とではだいぶ違うんですよ。

そこは理解できたような気がします。
今回は株式会社についての教養っぽい感じでしたね。

で、私は株式会社つくったほうがいいですか?どうなんですか?

司法書士K

え?

え?

まとめ

  • 法人とは法律によってつくられる「人と同じように法律行為をすることができる存在」のことです
  • 株式会社その法人の種類のひとつです
  • 株主の責任は有限責任です
  • 株式会社の制度上、所有と経営は分離されています
  • 株式上場のメリットは、①株式の流動性が上がること②資金調達がしやすくなること
  • 株式上場のデメリットは、①上場維持コストがかかる②決算書やビジネスモデルは公開しなければならない③誰でも株式を買うことができるので誰が株主になるかわからない
  • 株式の譲渡制限をつける理由は、①会社の株式が望まない人に渡るのを防ぐため②株主間の持株比率を維持するため

参考書籍

『中小企業における株式管理の実務』後藤孝典(著)、牧口晴一(著)野入美和子(著)、日本企業再建研究会(著)|日本加除出版

『事例で学ぶ会社法実務〔全訂版〕』金子登志雄(著)、立花宏(著)、幸先裕明(著)、東京司法書士協同組合(編集)|中央経済社

『生涯投資家』村上世彰(著)|文春文庫

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この記事を書いた人

愛媛県四国中央市出身
早稲田大学政治経済学部卒業

平成28年司法書士試験合格
平成29年から約3年間、東京都内司法書士法人に勤務
不動産登記や会社・法人登記の分野で幅広く実務経験を積む

令和2年から香川県高松市にて開業
地元四国で超高齢社会の到来による社会的課題への取組みや地方経済の発展のために尽力している

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