株式会社と合同会社どちらを選ぶ??それぞれの違いをわかりやすく解説

香川県高松市の司法書士 川井事務所です。

「株式会社と合同会社はどう違うんですか?」

よくあるご質問です。

今回は、合同会社に向いている事業、株式会社の特徴、合同会社の特徴、両者の比較などについて取り上げます。

目次

合同会社に向いている事業

飲食店を開業したいです。
ラーメン屋で修行を終えて、独立することにしました。

司法書士K

ラーメン屋を始めるんですか。

はい。
「天下統一」という店を開きます。

司法書士K

とにかく野望が大きいことは伝わってきます。

それで、会社を設立したいのですが、株式会社と合同会社どちらがいいでしょうか?
ふたつの違いがいまいちよくわかりません。

司法書士K

まずどんな事業が合同会社に向いているかみていきましょう。
次のような事業が合同会社に向いています。

  • 飲食店、美容系サロン、介護事業、農業など、会社名が前面に出ない事業
  • 個人の能力に頼るところが大きいコンサルティング事業
  • 個人や家族のための資産管理会社を作りたい場合

私は飲食店なので合同会社がよいでしょうか。

司法書士K

飲食店でもいずれは全国チェーンを展開したいなどの展望があるのであれば、株式で資金調達しやすい株式会社を選択したほうがよいかもしれません。

店名を思い出してください。「天下統一」です。
全国展開したいです。

司法書士K

であれば、株式会社ということになりそうですね。

株式会社の特徴

いきなり結論が出たっぽいですが、一応、株式会社と合同会社の違いを聞いておきたいです。

司法書士K

株式会社はもともと巨額の資金を集めて大きな事業をするために作られたしくみです。

株式会社はなぜ資金を集められるのですか?

司法書士K

株式会社の特徴として次の3つがあげられます。

  1. 株主の有限責任制
  2. 株主は株式を自由に譲渡することができる
  3. 所有と経営の分離
司法書士K

「株主の有限責任制」は、株主は会社に出資した額を限度に責任を負うというものです。
たとえば会社に100万円出資したところ、その会社が事業に失敗してつぶれたとしても出資した100万円がゼロになって終わりです。
会社に借金が残っていたとしても株主はそれを返済する責任を負いません。

株主にとってはリスクが限定されていて出資しやすいということですね。

司法書士K

はい。
次に「株主は株式を自由に譲渡することができる」という点について。投資家が会社に出資すると、会社は資金を受け取る代わりに、投資家に株式を発行します。
つまり、投資家は会社の株主になります。

ここまではわかります。

司法書士K

会社は原則として株主から出資を受けた資金を株主に返す必要がありません。
その代わり株主は株式を第三者に譲渡することによって会社の事業から撤退することができますし、投資資金を回収することができます。

そうすることで、会社には返済しなくていい資金が残るということですね。

司法書士K

そうです。
最後に「所有と経営の分離」について。

学校で習ったかもしれない。
株主が会社を経営してくれる人を選ぶことができるということですよね。

司法書士K

はい。
つまり、投資家は、会社を経営することに興味がなくても出資して株主になれるというわけです。

金銭的なリターンだけを目的として投資してもいいってことですね。

司法書士K

そうです。
もちろん株主自らが経営してもかまいません。

この株式会社の3つの特徴…。
株主の有限責任制、株主は株式を自由に譲渡できる、所有と経営の分離。
よくよく考えてみると、とにかく金を集めたいという強い意志を感じますね。

司法書士K

そうですね。

株式会社が資金を集められる理由はなんとなくわかってきました。

司法書士K

はい。
会社はその資金を使ってより大きな事業をすることができるというわけです。

でも、株主はリスクをとって出資しているものの、リスクの範囲は限定されていて、それ以外はある意味、無責任のような気も。

司法書士K

はい。
さきほども言ったように、株主は会社の経営にそれほど強い関心を持っていない場合があります。
一方で経営者は人のお金を預かって経営しており、身銭を切っているわけではないため、気が緩む場合があります。
結果、株式会社は不正が起こりやすい構造になっているといえます。

たしかに、株式会社の不正問題は絶えないですね。
ところで、ここまでの話、すべての株式会社に当てはまる話ではないような気もするのですが。

司法書士K

はい。
ここまでは株式会社の中でも主に上場企業に当てはまる話です。
中小企業は別世界です。

そうくると思った。

司法書士K

上場していない会社のほとんどは、経営者=株主で所有と経営は分離していません。
株主は自由に株式を譲渡することができず、譲渡制限が付いています。
銀行から融資を受けるときは、経営者個人が会社の連帯保証人になることがほとんどです。
つまり、会社の債務について株主である経営者が無限に責任を負うことになり、株主の有限責任も形だけのものといえます。

今までみてきた株式会社の3つの特徴を何も備えていないじゃないですか。
上場を目指していない会社がほとんどだと思いますが、なぜ株式会社が選ばれるのですか?

司法書士K

それでも株式会社は法律でルールが細かく決められていますし、信頼があると思われているのではないでしょうか。
ルールが決められている方が使いやすいというのはあります。
株式会社は誰でも聞いたことのある名前ですし。
どうしても株式会社にしたいという人は多いですよ。

たしかに知らない人は少ないですね。

司法書士K

はい。
中小企業だからという理由で、合同会社を選べばいいというわけではありません。

合同会社は株式会社の簡易版みたいなものじゃないんですか?

合同会社の特徴

合同会社とは、いったいどういう会社なんですか?

司法書士K

まず合同会社に出資する人のことを「社員」といいます。
世間一般で使われる正社員や派遣社員など従業員の意味として使われる社員とは別のことばです。

まぎらわしいですね。

司法書士K

はい。
社員の責任は有限責任です。
これは株式会社の株主と共通している点です。

なるほど。

司法書士K

合同会社の社員は、原則として自分で会社を経営します。
株式会社の所有と経営の分離とは異なる点です。

法律上そうなっているということですね?

司法書士K

そうです。

出資した社員には株式が発行されるのですか?

司法書士K

合同会社では株式は発行されません。
社員は「持分」という権利を取得します。
持分とは「社員が会社財産に対して持っている権利の割合」のことです。

ちょっと何言っているかわからないです。

司法書士K

では具体例でみていきましょう。
社員Aが90万円、社員Bが10万円出資して、全額資本金に計上して合同会社を設立したとしましょう。

はい。

司法書士K

第1期の利益が200万円とします。
損益は定款に別段の定めを置かなければ、各社員の出資額の割合で分配されます。
つまり、この場合、200万円の利益のうち、社員Aに対して9割の180万円、社員Bに対して1割の20万円が分配されます。

資本金損益持分
社員A90万円180万円270万円
社員B10万円20万円30万円
合計100万円200万円300万円
社員ごとの持分管理表
司法書士K

この各社員の資本金と損益の合計額が「持分」です。

なんとなくわかりました。

司法書士K

この持分は第三者に譲渡することができますが、原則として他の社員の同意が必要となります。
自由に譲渡することができません。

ここまでの話をまとめると、合同会社の社員の責任が有限責任という点では株式会社の株主と共通しているけど、社員自身が経営することと、持分を自由に譲渡することができない点が株式会社とは異なる、ということですね。

司法書士K

そのとおりです。

この合同会社のしくみだと、多くの人から資金を集めて大きな事業をすることには向いていないように思えますね。

司法書士K

はい。
株式上場のようなしくみはありません。

株式会社と合同会社の比較

株式会社と合同会社。
似ているようで、似ていないような気もするし、まだよくわかりません。

司法書士K

では、もう少し詳しく両者を比較していきましょう。

株式会社合同会社
会社の意思決定(※例外あり)株主の出資額による社員1人1議決権
役員の任期最長10年なし
代表者の名称代表取締役代表社員
株式会社と合同会社の比較
司法書士K

まず会社の意思決定について。株式会社の場合は株式を多く持っている人、つまり、会社に多く出資している人の力が強いです。
たとえば、株主が5人いたとして、そのうちの1人が70%の株式を持っていれば、その1人がほとんどの会社の重要な意思決定をすることができます。
やろうと思えば、その1人の決定により会社の定款を変更したり、解散することができます。

お金の力が強いですね。

司法書士K

それに対して、合同会社は出資額に関係なく1人1議決権です。
さきほどと同じ例で、社員Aが90万円、社員Bが10万円の出資をしているとします。
この場合、2人の意見が一致しなければ、ものごとが決まりません。

9割出資していても1割しか出資していない人の同意がないと決定ができないんですか。
株式会社の感覚で慣れていると違和感がありますね。

司法書士K

ですから、合同会社の場合は、出資者の数が多い事業には向かないことになります。
迅速な意思決定は難しいでしょう。

たしかにそうかもしれない。
でも合同会社って1人では設立できないんですよね?
「合同」っていうぐらいだし。

司法書士K

合同会社は1人でも設立できます。

そうなんですか。
まぎらわしいですね。

司法書士K

次に役員の任期について。
株式会社の役員には任期という考え方があります。
株式会社は法律のしくみ上、株主が経営者に経営を「任せる」形となっています。
たとえ株主と取締役が同一人物であっても任期が満了したら再任するかどうか決めなければなりません。

わかります。

司法書士K

それに対して、合同会社は法律のしくみ上、会社に出資している人と経営する人が同一人物です。
そもそも誰かが誰かに経営を任せるという考え方が発生しません。
つまり、任期という考え方はありません。

わかりました。

司法書士K

次に代表者の名称について。
合同会社では代表者は代表社員という名称になり、代表取締役と名乗ることはできないというのが注意点です。

そういえば、合同会社は設立費用が安いと聞きました。

司法書士K

そうですね。
株式会社と異なり定款認証がありませんし、設立登記にかかる登録免許税が安いことから会社設立コストを抑えることができます。

合同会社株式会社
登録免許税6万円
または
資本金の額×0.7%
いずれか高い額
15万円
または
資本金の額×0.7%
いずれか高い額
定款認証代なし3万円~
合計6万円~18万円~
会社設立時のコスト比較(電子定款を作成する場合)

※株式会社は定款謄本代約1,200円かかります。

十数万円の差ですね。
この差額をどう考えるかは人それぞれのような気もします。

司法書士K

はい。
結局、自分の事業にあっている会社形態を慎重に選ぶ必要があります。
合同会社は株式会社と比べてルールが少なくて自由な経営ができるといわれていますが、自由というのは難しいです。
自由といってもどこまで認められるかというのは、法律や税務に詳しくないと判断できません。

たしかにそうですね。
やはり私は株式会社を設立します。
合同会社は株式会社の簡易版ともいえないし、意外と難しいところもあると感じました。

司法書士K

はい。
会社の設立を考えているのであれば、ぜひ専門家に相談しましょう。

参考書籍

『商業登記実務から見た 合同会社の運営と理論(第2版)』金子登志雄(監修)、立花宏(著)|中央経済社

『5つの定款モデルで自由自在 「合同会社」設立・運営のすべて(第2版)』神﨑満治郎(著)|中央経済社

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この記事を書いた人

愛媛県四国中央市出身
早稲田大学政治経済学部卒業

平成28年司法書士試験合格
平成29年から約3年間、東京都内司法書士法人に勤務
不動産登記や会社・法人登記の分野で幅広く実務経験を積む

令和2年から香川県高松市にて開業
地元四国で超高齢社会の到来による社会的課題への取組みや地方経済の発展のために尽力している

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