香川県高松市の司法書士 川井事務所です。

株式会社設立手続きの時間的な流れ―

私は当然のように手続きしてきたつもりでしたが、ネットの情報をみると、専門家(?)の人も、会社設立登記に必要な書類の日付について、けっこう誤ったことを書いてあって、しかも検索上位にあがっていたりします。

そこで、この記事では株式会社設立登記の添付書面(発起人決定書・電子定款作成委任状・定款・就任承諾書・払込みがあったことを証する書面・登記委任状)の日付についてまとめてみました。

受験勉強で会社法はやったけど、まだ実務に慣れていない司法書士の方にも参考になると思います。

目次

会社法上の手続きの順序

よくあるパターンの方が話がわかりやすいと思いますので、以下の条件を前提とします。

  • 発起設立による設立
  • 現物出資なし
  • 種類株式の発行なし
  • 委員会設置なし
  • 定款に設立時役員を定める

会社法上の手続きの順序

STEP
定款作成(第26条)
STEP
定款認証(第30条)
STEP
発起人全員同意による設立時発行株式に関する事項の決定(第32条)
STEP
発起人による出資の履行(第34条)

定款で設立時役員を定めていた場合は、出資の履行完了時に、設立時役員は選任されたものとみなされる(第38条第4項)

STEP
設立時取締役等による調査(第46条)
STEP
設立登記申請(第49条)

必要書類

一般的には以下のようになるはずです。

  • 電子定款作成委任状
  • 発起人の印鑑証明書(法人の場合は登記事項証明書も)
  • 定款
  • 発起人決定書
  • 払込みがあったことを証する書面
  • 就任承諾書
  • 設立時役員の印鑑証明書・本人確認証明書
  • 登記委任状

書類の日付

発起人決定書

会社法の条文の順番は上のとおりですが、定款を最初に作らなければならないというわけではありません。

発起人全員が最初に定款の主要な事項を定めて、定款よりも先に決定書を作成しても一向にかまわないですし、むしろ実体にあっていると思います。

個人的には少なくとも、会社法第32条第1項の内容(発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数・引換えに払い込む金銭の額)と本店所在場所(●市●町一丁目1番1号や●市●町●1番地1、要するに住所の最後まで。以下同じ。)を記載しています。

定款に本店所在地として、最小行政区画(市区町村)までを記載することが一般的ですが、その場合は本店所在場所の決定日は定款認証日よりも後の日付でなければならない・・・ということはありません。

本店所在場所を決めた後に定款には最小行政区画までしか記載しない、としても問題ありませんし、登記はとおります。

私が発起人決定書をいちばん早い日付で作成する理由は、実務上、発起人決定書に「発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数・引換えに払い込む金銭の額」を定めておけば、その日以降の発起人による出資金の払込みが有効と認められるからです( 111ページ)。
定款認証日より前の払込みでもかまいませんし、定款作成日前でもかまいません。

※通達:令和4年6月13日民商第286号について

令和4年6月13日民商第286号により、上記の取扱いが変更になりました。

つまり、

出資金の払込み時期については、定款の作成日または発起人全員の同意があったことを証する書面に記載されているその同意があった日後に払込みがあった場合はもとより、その前に払込みがあった場合であっても、発起人等の口座に払い込まれているなど当該設立に際して出資されたものと認められるものであれば差し支えない。

で、どれくらい前までの出資金の払込みが認められるかについてですが、

設立登記申請の4週間前など近接した時期のものであれば、出資に係る払込みがあったものと認めることとする。

ということのようですね・・・。

取扱い変更の趣旨としては、スタートアップに関する規制・制度の見直しということらしいです。

何か本質からずれた見直しのように感じます。

何かやっている感を出そうとしているだけじゃないでしょうか。

発起人全員による同意の前の払込みに一体どんな意味があるのかよくわかりません。

個人的には、これまでどおりの取扱いを続けますし、それで何か支障が生じることはないと考えます。

電子定款作成委任状

定款作成日以前の日付で作成します。

委任を受けなければ定款を作成することはできません。

定款

発起人決定書の作成と同時期に定款案を作成して、公証人に事前確認依頼をしています。

定款作成日は公証人による定款案の事前確認が終了後、かつ、電子定款作成委任状の日付以降の日付にしています。

就任承諾書

設立時役員を定款で定めているため、条件付きなどの事情がなければ、就任承諾の日付は、定款作成日以降、かつ、発起人の出資履行完了日(選任されたものとみなされる日(会社法第38条第4項))以降の日付になります。

払込みがあったことを証する書面

当然、発起人の出資履行完了日以降でなければなりません。

かつ、証明者は設立時代表取締役ですので、設立時代表取締役の就任承諾日以降の日付になります。

登記委任状

商業登記の委任状の日付は、

「委任状に記載された登記原因の内容等からみて、委任状作成時に委任の内容となる登記原因が既に確定していると判断できる場合には、委任状の作成時期が登記原因となる事実の発生前であっても、当該委任状によって適法な代理権の授与があったと判断することができる」と解されています(登記情報645号9ページ)。

とはいうものの、効力発生日以後の日付にするのが無難かなと思いますが。

株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します(会社法第49条)ので、株式会社の設立登記の委任状については、そもそも効力発生日より後の日付で委任状を作成することはできません。

では、どの時点で委任の内容が確定するといえるでしょうか。

株式会社の設立においては、設立の登記申請の起算点が定められています。

会社法第911条
株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。
 第四十六条第一項の規定による調査が終了した日(設立しようとする株式会社が指名委員会等設置会社である場合にあっては、設立時代表執行役が同条第三項の規定による通知を受けた日)
 発起人が定めた日

ということで、少なくとも会社法第46条第1項に規定する設立時取締役による調査が終了した日以降の日付とするのがよさそうです。

具体的には、発起人の出資の履行が完了している必要があり、設立時役員が就任している必要があり、定款認証日以降である必要がありそうです。

つまり、委任状の日付は設立時取締役による調査終了日以降であればよいと考えられ、設立予定日でなければならないということはありません。

参考書籍

『商業・法人登記360問』神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介(編著)|テイハン

『商業登記ハンドブック〔第4版〕』松井 信憲(著)|商事法務

『論点解説 商業登記法コンメンタール』神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木 龍介(編著)

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この記事を書いた人

愛媛県四国中央市出身
早稲田大学政治経済学部卒業

平成28年司法書士試験合格
平成29年から約3年間、東京都内司法書士法人に勤務
不動産登記や会社・法人登記の分野で幅広く実務経験を積む

令和2年から香川県高松市にて開業
地元四国で超高齢社会の到来による社会的課題への取組みや地方経済の発展のために尽力している

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