香川県高松市の司法書士 川井事務所です。
現在、株式会社を設立するときには、その株式会社が成立した場合の実質的支配者となるべき者について、その氏名・住所・生年月日等と、その者が暴力団員および国際テロリストに該当しないことを公証人に申告して認証してもらう制度となっています。
その「認証証明書」をもって銀行などの金融機関で会社名義の銀行口座を開設する流れとなっています。
2018(平成30)年11月30日以降にはじまった制度ですので、最近、株式会社を設立した人であれば、記憶にあるかもしれません。
既存の株式会社については同様の仕組みはなく、新たに既存の株式会社についても実質的支配者を把握する仕組みを創設しようということになりました。
これを実質的支配者リスト制度といいます。
この記事では、実質的支配者リスト制度の概要、対象となる実質的支配者、手続きの流れ、必要書類・添付書面などについて取り上げています。
制度の概要
いきなりですけどね、先日、取引銀行から2022年1月31日から始まる制度のことを聞いたんだけど、それの名前を忘れてしまって、どうしても思い出せないんですよ。
どんな特徴を言ってましたか?
株式会社(特例有限会社を含む。)からの申出により、商業登記所の登記官が、申出をした株式会社が作成した実質的支配者リストについて、所定の添付書面により内容を確認し、その保管および登記官の認証文付きの写しの交付を行う制度だって言ってました。
その特徴は完全に「実質的支配者リスト制度」ですね。
ほとんど答え言ってしまってますよ。
この制度は義務なんですか?
この制度は、義務ではありません。
新たな行政サービスを提供するものだと思っていただいてかまいません。
対象となる実質的支配者
実質的支配者って要は会社に対して議決権、口出しできる権利を持っている人っていう理解でいいんですよね?
そうですね。
正確にいうと、次のようになります。
本制度の対象となる実質的支配者とは、犯収法施行規則第11条第2項第1号の自然人(同条第4項の規定により自然人とみなされるものを含む。)に該当する人をいいます。
具体的には、次の①または②のいずれかに該当する人です。
- 会社の議決権の総数の50%を超える議決権を直接または間接に有する自然人
- ①に該当する人がいない場合は、会社の議決権の総数の25%を超える議決権を直接または間接に有する自然人
(※どちらも当該会社の事業経営を実質的に支配する意思または能力がないことが明らかな場合を除く。)
フローチャートで示すと次のようになります。
「直接または間接に有する」とはどういう意味ですか?
実質的支配者が会社の株式を直接持っているか、間に法人が入っているかの違いです。
図で示すと直接保有が次のようになります。
間接保有が次にようになります。
なるほど~
手続きの流れ
実質的支配者のことはわかってきましたが、実際の手続きはどうすればよいでしょうか?
手続きの流れは次にようになります。
申出者の手続き
申出する会社の本店所在地を管轄する法務局に提出します。
手数料は無料です。
郵送による申出も可能です。
委任による申出も可能です。
商業登記所(法務局)の手続き
登記官が申出内容を確認し、問題がなければ、実質的支配者リストを保管します。
利用
必要に応じて、再交付の申出も可能です
実質的支配者リストの見本です。
申出書の見本です。
添付書面
添付書面は何を用意すればよいでしょうか?
基本的な添付書面は次のようになります。
株主名簿の写しに代えて,申告受理及び認証証明書(公証人発行、設立後最初の事業年度を経過していない場合に限ります。)または法人税確定申告書別表二の明細書の写し(申出日の属する事業年度の直前事業年度に係るもの)を添付することも認められます。
運転免許証の表裏両面のコピー、住民票などが該当します。
代理人によって申出がされる場合には、添付が必要です。
申出書または委任状に代表者印(会社実印のことです)が押印されていないときは、申出会社の代表者本人の本人確認書面を添付する必要があります。
株主名簿を作っている会社は少なさそうですね~
ですね・・・
それはまた別の機会にとりあげたいと思います。
まとめ
- 2022年1月31日から実質的支配者リスト制度が開始されます
- この制度は義務ではなく、新たな行政サービスという位置づけです
- 実質的支配者とは会社の議決権の総数の25%を超える議決権を直接または間接に有する自然人のことをいいます
- 実質的支配者リストは主に銀行に提出することが求められます
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