香川県高松市の司法書士 川井事務所です。

今までになかった商品・サービスを生み出す(イノベーション)を目的とするスタートアップの事業はリスクが高いものになります。

スタートアップが急成長するためには、資金が必要になりますが、銀行などの金融機関から借入れは期待できません。

結果、株式を使った資金調達をすることになります。

起業家にとって、株式を使った資金調達をする上で、資本政策の基本的な知識は欠かせません。

なぜなら、資本政策は、失敗したからといって後から簡単にやり直せるものではないからです。

今回は、スタートアップが株式で資金調達する理由、出口戦略、資本政策の重要性などについて取り上げます。

目次

スタートアップが株式で資金調達する理由

起業したいと思っています。

司法書士K

どんな事業をするつもりですか?

Web5で世の中をいい感じにします。

司法書士K

ぜひ出資させてください。

それで、資金が必要な私は、銀行に融資の相談に出かけたところ、断られたのです。

司法書士K

銀行は基本的にローリスク・ローリターンのビジネスモデルです。
今までになかった商品・サービスを生み出すというイノベーションを目的とするスタートアップが、銀行から融資を受けるのは難しいでしょうね。

たしかに、しばらく赤字が続く予定なので、月々の元本利息の返済は厳しいです。
他に資金調達する方法はないのでしょうか?

司法書士K

スタートアップは株式を使って投資家から資金調達をするのが一般的です。

株式を使った資金調達。
投資家って具体的にどういう人なんですか?

司法書士K

主にエンジェル投資家やベンチャーキャピタルのことを指しています。
簡単にいうと、エンジェル投資家は個人投資家で自分のポケットからお金を出している人です。
ベンチャーキャピタルは投資会社や投資ファンドのことで、投資家から預かったお金を使って会社に投資している人たちのことです。

銀行からの融資と何が違うのでしょうか?

司法書士K

銀行からの融資は借りたものを返せばそれで終わる関係です。
それに対して、株式で資金調達すれば、出資を受けた資金は株主に返す必要がありません。
その代わり、投資家に会社の株式を渡すことになり、投資家は株主になります。

投資家が株主になるとどうなるのですか?

司法書士K

株主は次の4つの権利を持つことになります。

  1. 利益の配当を受ける権利
  2. 残余財産の分配を受ける権利
  3. 株主総会で議決権を行使する権利
  4. 株式を譲渡する権利
司法書士K

4つのうち、スタートアップにとって重要になってくるのは、③の株主総会で議決権を行使する権利と④の株式を譲渡する権利です。

そうなんですか。

司法書士K

はい。
スタートアップが上場前に株主に利益の配当をすることはほぼありませんし、残余財産の分配は会社が解散したときの話です。

なるほど。

司法書士K

③の株主総会で議決権を行使する権利ですが、株主総会というのは、株主による会社の重要な意思決定をするための機関のことです。
議決権はその株主総会で議案の賛否を投票する権利です。
どの株主がどれだけ株式を持っているかという持株比率は超重要です。

なんとなくわかりました。

司法書士K

④株式を譲渡する権利ですが、実は、ほとんどの株式会社はこの権利が制限されています。
ほぼ上場企業のみが株式を自由に譲渡することができるといっていいと思います。

なぜ非上場企業は譲渡制限を付けるのですか?

司法書士K

株式の譲渡制限を付ける理由としては、

  1. 会社の株式が会社にとって望まない人に渡るのを防ぐため
  2. 株主間の持株比率を維持するため
司法書士K

という2つの理由が挙げられます。

司法書士K

ほとんどの株式会社は譲渡制限がある会社としてスタートします。

そうだったんだ。

司法書士K

上場したら株式の譲渡制限がなくなるということはぜひ覚えておいてください。

はい。

ここまでの話をまとめると、銀行の融資と違って、株式を使って投資家から出資を受けた資金は返済義務がない。
その代わり投資家は株主になるため付き合いが続く、ということですね。

司法書士K

はい。

とにかく出資金を返さなくていいというのは助かります。
でもどうして投資家はそんなリスクをとってくれるのですか?

司法書士K

もちろん投資家はただリスクをとってくれるわけではありません。
当然、投資家に対するリターンが必要になります。

だと思った。

出口戦略とは?

司法書士K

投資家から出資を受けるからには、何らかの出口戦略が必要となります。
出口戦略というのは、主に2つあります。

  1. 株式上場
  2. M&Aによる会社の売却
司法書士K

株式上場することによって、株式の譲渡制限がなくなり、株主は、ようやく株式を売ることができます。
会社設立から株式上場までの間に出資したときの株価よりも高い株価で売却することができます。
この株式売却益のことをキャピタルゲインといいます。

絶対にキャピタルゲインが欲しいです。

司法書士K

もうひとつは、M&Aによる会社の売却です。
M&Aは企業の合併や買収のことをいいます。
ここでは主に買収のことを指しています。
つまり、会社の株式を上場企業や大企業に売ってキャピタルゲインを得るということです。

絶対にキャピタルゲインが欲しいです。

司法書士K

・・・。

とにかく、それでリスクの高い事業に出資してくれた投資家に報いることができるということですね。

司法書士K

そうです。
出資を受けることが目的になってはいけません。

資本政策の重要性

司法書士K

ここまで理解できたら、資本政策の重要性が理解できるようになると思います。

資本政策とは?

司法書士K

資本政策とは、資金調達や株式上場を見据えて、必要な資金や持株比率について考える戦略や計画のことをいいます。

計画は必要かもしれない。

司法書士K

前提として事業計画をつくる必要があります。
事業計画があってはじめて、どの時期にどれだけ資金が必要で、どのような株主に、いくらの株価で、何株の株式を割り当てるかという計画を立てることができるということです。

たしかにそうですね。

司法書士K

なぜ、この資本政策が重要なのかというと、資本政策の失敗は、創業初期の失敗ほどあとから修正するのが困難になってくるからです。

そうなんですか。

司法書士K

企業価値が上がったあとで株式を譲ってもらうのは、課税の問題が生じることや多額の資金が必要になることから非常に難しいです。
つまり、投資家に株式を渡しすぎるなど持株比率を間違ってしまったということに後から気づいても、修正はかなり難しいということです。

持株比率が超重要という話がありましたね。

司法書士K

「創業者の持株比率が一度下がったら、その後上がることはまずない」ということを絶対に覚えておいてください。

「創業者の持株比率が一度下がったら、その後上がることはまずない」ですね。
わかりました。

司法書士K

どんなに事業内容が優れていても、こんなことでつまづいたら本当にもったいないです。

そうですね。
事業計画から見直してみます。
絶対にキャピタルゲインが欲しいです。

参考書籍

『起業のファイナンス増補改訂版』磯崎哲也(著)|日本実業出版社

『増補改訂版 起業のエクイティ・ファイナンス-スタートアップを成長させる「インセンティブ」の設計図』磯崎哲也(著)|ダイヤモンド社

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この記事を書いた人

愛媛県四国中央市出身
早稲田大学政治経済学部卒業

平成28年司法書士試験合格
平成29年から約3年間、東京都内司法書士法人に勤務
不動産登記や会社・法人登記の分野で幅広く実務経験を積む

令和2年から香川県高松市にて開業
地元四国で超高齢社会の到来による社会的課題への取組みや地方経済の発展のために尽力している

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