マイホームを買うときに住宅ローンを借りる人がほとんどだと思います。
住宅ローンを借りたときに、ご自分が買ったり、建てたりした物件に、金融機関の抵当権の登記がつくことになるのですが、
その抵当権っていったい何ですか?
そんなの学校で習っていないです!
という方のために解説していきます。
抵当権とは
まずは、お金を貸す側(債権者)の立場になって考えてみましょう。
住宅ローンとなると何千万という単位になってきますので、まあ大金といっていいと思います。
その大金を貸すわけですが、債権者にとって避けたいことは何でしょうか。
それはやはり「貸した金が返ってこない」ということですよね。
借りた側(債務者)のローンの返済が滞ったときに、債権者としては、当然、債権を回収しなければ!となるでしょう。
そこで、債権者は債務者がマイホームとして買った、あるいは建てた物件を担保にとります。
「担保にとる」とはわかりやすくいえば、その物件を競売などで売却した金銭から優先的に分配を受けることができる権利を持つということです。
逆に担保にとらず無担保であれば、物件の売却代金を他の債権者と平等に分け合うことになります。
担保権にはいくつか種類がありますが、そのうちの1つが「抵当権」です。
抵当権の特徴としては、担保提供者(通常は債務者)がその物件を自由に使うことができる。ということが挙げられます。
もちろん、ローンを期限どおりに返済している限りにおいて、ですが。
だから、住宅ローンの担保としては抵当権が利用されるというわけです。
抵当権設定と登記
抵当権は登記簿上、権利の部の乙区に登記されます。
債権者は抵当権の登記をしなければ、他の債権者に対して権利を主張することができず、他の債権者に優先して債権を回収することはできません。
また、抵当権の登記はその順位が重要となります。
同じ不動産に複数の抵当権の登記をすることができるのですが、同じ不動産に抵当権が2つ設定されているとしたら、先に登記された方が後に登記された抵当権よりも優先することになります。
たとえば、A所有の甲土地に対して、Xの抵当権が先に設定され、Yの抵当権がその後に設定されたのに、Yの方が先(順位番号1番)、Xの方が後(順位番号2番)で抵当権設定の登記をしたら、Yが最優先で債権を回収することができ、Xがその次ということになります。
つまり、抵当権を設定したのであれば、とにかく早く登記をしなければなりません。
不動産決済での司法書士の役割
「住宅ローンを借りて中古マンションを買う」という事例で考えてみましょう。
不動産決済についての解説はこちらのブログもご参照ください。
通常は、売買契約を締結して、後日、買主が売買代金を全額払ったときに、所有権が買主に移転して、売主が買主に不動産を引き渡すという取引の流れになります。
この売買代金全額の支払を決済とよんでいます。
決済場所は買主がローンの融資を受ける銀行が多いです。
決済日のお金の流れとしては、住宅ローンの融資が実行されて、売主に売買代金が支払われるという流れになります。
登記の順番としては、売買の対象となる物件の所有権移転登記がされ、不動産の名義が買主のものになったところで、金融機関の抵当権設定の登記が入ります。
↑令和2年5月1日に所有権移転登記(甲区2番・受付番号第1234号)がされ、その次に抵当権設定登記(乙区1番・受付番号1235号)がされています。
ところで、決済日の融資実行のタイミングについてですが、住宅ローンの融資担当者がここまで書いてきたことを十分に理解している人であれば、こう思うはずです。
登記ができないのであれば、融資実行できない
何千万円という金額の融資を実行したのに登記できないとなれば、かなり危険な状態ということになります。
そんな大事な登記を専門家でない人に任せることはできないということがわかっていただけると思います。
登記の専門家である司法書士が登記書類をすべてそろっているのを確認してはじめて融資を実行することができます。
融資が実行されたのであれば、原則として、必ずその日のうちに登記を申請します。
・・・と、ここまで書いてきましたが、私が決済日に金融機関に到着したら、すでに「融資実行しちゃいました、へへ」みたいなローン担当者が現実にいますね・・・。
まとめ
- 抵当権は、融資する側である金融機関が、いざというときに担保物件から優先的に債権を回収するために設定します。
- 住宅ローンの債務者は自分の住宅を担保提供することになりますが、ローンを期限どおりに返済している限り、自由に使用することができる。
- 債権者は抵当権の登記をしなければ、他の債権者に対して権利を主張することができず、他の債権者に優先して債権を回収することはできません。
- 抵当権の登記はその順位で優劣が決まります。
— どうぞお気軽にご相談ください。—