信用保証協会等が受ける抵当権の設定登記等の税率の軽減

私が勤務時代に知らずにスルーしてしまい、先輩司法書士から指摘されてはじめて知ったのが、「農業信用基金協会」が抵当権者になる場合の抵当権設定の登録免許税の税率が1000分の1.5に軽減されるという特例でした。

申請前に指摘されて助かりましたが、そんなことまで知っておかないといけないのかと実務の怖さを感じた瞬間でした。

今回は農業信用基金協会のほかに抵当権設定登記の登録免許税税率の軽減の適用を受ける法人についてまとめました。

目次

抵当権設定の登録免許税

抵当権設定登記の登録免許税の原則は債権額の1000分の4です(登録免許税法別表第一・1・(5))。

住宅用家屋証明書があるときは、債権額の1000分の1になります(租税特別措置法第75条参照)。

居住用不動産を住宅ローンを組んで買ったとき、または建てたときは、住宅用家屋証明書を取得するケースがほとんどで、抵当権設定登記の税率が1000分の1となるため、あまり意識することがありません。

ところが、家を建てるための土地を先行して買ったとき、つまり住宅用家屋証明書を取得しない場合の抵当権設定が要注意です。

あるいは、住宅が絡まなくても、見慣れない金融機関が登場したときには警戒したほうがよいかもしれません。

抵当権設定登記の税率軽減を受けられる法人

抵当権設定登記の税率軽減を受けられる法人は以下のとおりです(租税特別措置法第78条)。

(令和5年3月31日までの期限あり。ただし更新されていくと思いますが。)

  • 信用保証協会
  • 農業信用基金協会
  • 独立行政法人農林漁業信用基金
  • 漁業信用基金協会
  • 清酒製造業等の安定に関する特別措置法第2条第3項に規定する中央会

以下、各法人について長々と書いていきますが、おおまかに「中小企業」「農業」「林業」「漁業」「酒造業」は保護されてそうというイメージを持っていれば、実務で遭遇したときに意識にひっかかってくるのではないかと思います。

信用保証協会

信用保証協会は、信用保証協会法を根拠法とする法人です。

中小企業者等が銀行その他の金融機関から貸付等を受けるについてその貸付金等の債務を保証することを主たる業務とする信用保証協会の制度を確立し、もって中小企業者等に対する金融の円滑化を図ることを目的としています(同法第1条)。

信用保証協会が、同法第20条第1項各号(中小企業者等が銀行その他の金融機関から資金の貸付け又は手形の割引を受けること等により金融機関に対して負担する債務の保証など)に掲げる業務に係る債権を担保するために受ける抵当権の設定の登記については、その登記に係る登録免許税の税率は、1000分の1.5となります。

農業信用基金協会

農業信用基金協会は、農業信用保証保険法を根拠法とする法人です。

この法律は、農業近代化資金その他農業経営に必要な資金の融通を円滑にするため、農業協同組合その他の融資を行う機関の農業者等に対する貸付けについてその債務を保証することを主たる業務とする農業信用基金協会の制度及びその保証等につき独立行政法人農林漁業信用基金が行う農業信用保険の制度を確立し、もって農業の生産性の向上を図り、農業経営の改善に資することを目的としています(同法第1条)。

農業信用基金協会が、同法第8条第1項第1号(会員たる農業者等が農業近代化資金などの資金を借り入れることにより融資機関に対して負担する債務の保証)に掲げる業務に係る債権を担保するために受ける抵当権の設定の登記については、その登記に係る登録免許税の税率は、1000分の1.5となります。

独立行政法人農林漁業信用基金

独立行政法人農林漁業信用基金は、独立行政法人農林漁業信用基金法を根拠法とする法人です。

この基金は、農業信用基金協会が行う農業近代化資金等に係る債務の保証、漁業信用基金協会が行う漁業近代化資金等に係る債務の保証等につき保険を行うこと、都道府県が行う木材の安定供給の確保に関する特別措置法第16条第1号に規定する事業並びに農業信用基金協会及び漁業信用基金協会の業務に必要な資金を融通すること並びに林業者等の融資機関からの林業の経営の改善に必要な資金の借入れ等に係る債務を保証することにより、農林漁業経営等に必要な資金の融通を円滑にし、もって農林漁業の健全な発展に資することを目的としています(独立行政法人農林漁業信用基金法第3条第1項)。

独立行政法人農林漁業信用基金が、同法第12条第1項第5号に掲げる業務(林業者等が融資機関から借り入れることにより当該融資機関に対して負担する債務の保証など)に係る債権を担保するために受ける抵当権の設定の登記については、その登記に係る登録免許税の税率は、1000分の1.5となります。

漁業信用基金協会

漁業信用基金協会は、中小漁業融資保証法を根拠法とする法人です。

この法律は、中小漁業者等の漁業経営等に必要な資金の融通を円滑にするため、金融機関の中小漁業者等に対する貸付け等についてその債務を保証することを主たる業務とする漁業信用基金協会の制度及び独立行政法人農林漁業信用基金がその保証等につき保険を行う制度を確立し、もって中小漁業の振興を図ることを目的としています(同法第1条)。

同法第4条第1項第1号(会員たる中小漁業者等が漁業近代化資金などの資金の借入れをすることにより金融機関に対して負担する債務の保証)に掲げる業務に係る債権を担保するために受ける抵当権の設定の登記については、その登記に係る登録免許税の税率は、1000分の1.5となります。

清酒製造業等の安定に関する特別措置法第2条第3項に規定する中央会

清酒製造業等の安定に関する特別措置法は、清酒製造業及び単式蒸留焼酎製造業の経済的諸条件等の著しい変化に対処して、清酒製造資金及び単式蒸留焼酎製造資金の融通の円滑化並びに清酒製造業等の整備合理化を図るため、中央会の事業の範囲を拡大するとともにこれに伴う措置を講ずることにより、清酒製造業等の経営基盤の安定及び酒税の確保に資することを目的としています(同法第1条)。

中央会が、同法第3条第1項第1号(会員たる酒造組合、会員たる酒造組合連合会、当該酒造組合連合会の構成員たる酒造組合その他政令で定める者が、清酒の製造に係る資金で政令で定めるものを銀行その他の金融機関から借り入れることによりこれらの金融機関に対して負担する債務の保証)に掲げる事業に係る債権を担保するために受ける抵当権の設定の登記については、その登記に係る登録免許税の税率は、1000分の1.5となります。

— どうぞお気軽にご相談ください。—

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この記事を書いた人

愛媛県四国中央市出身
早稲田大学政治経済学部卒業

平成28年司法書士試験合格
平成29年から約3年間、東京都内司法書士法人に勤務
不動産登記や会社・法人登記の分野で幅広く実務経験を積む

令和2年から香川県高松市にて開業
地元四国で超高齢社会の到来による社会的課題への取組みや地方経済の発展のために尽力している

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