いわゆる「おひとりさま」です。私の遺産はどうなるのでしょうか?

香川県高松市の司法書士 川井事務所です。

「おひとりさま」の明確な定義はないのですが、ここでは「夫・妻がいなく、子もいない人」とします。

そのような人たちの心配のひとつが、自分が亡くなった後の財産はどうなるのかということだと思います。

今回は、いわゆる「おひとりさま」の相続・老後の備えなどの生前対策などについて取り上げます。

目次

兄弟姉妹間の相続

パートナーに先立たれ、子もおらず、私、いわゆる「おひとりさま」というやつだと思うんですよ。

司法書士K

おひとりさまって言葉、よく聞くようになりましたね。

私が亡き後の私の財産ってどうなるのかなと思いまして。

司法書士K

ご兄弟姉妹はいらっしゃいますか?

姉がいましたけど、もう亡くなっています。
両親もいません。
姉の子が1人います。

司法書士K

わかりました。
相続の基本ルールをおさらいしておきましょう。

出た、このパターン。

司法書士K

相続には順位というものがあります。

相続順位相続人
常に相続人配偶者
第1順位子(代襲相続により孫になることも)
第2順位親など上の世代
第3順位兄弟姉妹(代襲相続により甥姪になることも)
相続の順位
司法書士K

配偶者は常に相続人です。

そうですね。

司法書士K

今回のケースだと、第3順位のお姉さまを代襲相続して甥御さんが相続人になります。
代襲相続というのは故人の相続人が先に亡くなっていた場合に、その相続人の子が相続することをいいます。

私の甥に財産がいく、と。

司法書士K

そうです。

相続人がいない場合

もし甥もいなかったらどうなるんですか?

司法書士K

その場合は相続人がいないということになりますね。

そうなったら私の財産はどうなるんですか?

司法書士K

遺言があれば、遺言で指定された人に行きます。

なるほど。
遺言がなければ?

司法書士K

もし、故人と特別の縁故がある特別縁故者がいれば、家庭裁判所に財産分与の申立てをすることができます。

特別の縁故って具体的にはどういう人ですか?

司法書士K

故人と生計を同じくしていた者、たとえば、法律上の婚姻関係がない内縁の配偶者とか。
あるいは故人の療養看護を行っていた人ですかね。
業務として報酬を受け取っていた人はもちろん除かれますが。

特別縁故者もいなければどうなりますか?

司法書士K

最終的に国庫に帰属することになります。

国庫に帰属。

司法書士K

つまり、国の財産になるということです。
国庫に納付される遺産額は増加しています。
2018年度は600億円を超えています。
10年で3倍になっています。

(日本経済新聞2020年9月26日記事より引用)

そんなに。
なんだかもったいないような気がしますね。

生前対策

遺言書を作成する

話は戻りますけど、甥とは疎遠なんですよ。
甥の方も私の遺産を相続するとなると違和感があるんじゃないかなと想像するのですが。

司法書士K

もし、相続人以外で、ほかに財産を譲りたい人がいたら、遺言するしかありません。

司法書士K

遺言とは、基本的に自分が亡くなった後の財産の分け方や認知・相続人の廃除などの身分上の事柄を書いておくもので、法的拘束力があります。

遺言は、財産の分け方や身分上の事柄を書いておくもので、法的拘束力がある。

司法書士K

あるいは、遺贈寄付というものがあります。
遺贈とは、遺言で財産を譲ることです。
遺言で非営利団体や大学、公共団体等に寄付することで社会貢献することができます。
たとえば、日本承継寄付協会という遺贈寄付の相談などができるプラットフォームがあります。

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社会貢献。
寄付先選びも手伝ってくれるんですね。
考えてみます。

死後事務委任契約

とりあえず遺言書を書いておけば準備万端ですか?

司法書士K

遺言は基本的に財産の分け方を書いておくものです。
遺言で葬儀や埋葬その他亡くなった後の諸々の事務手続きを託すことはできません。

どうすればいいでしょうか?

司法書士K

「死後事務委任契約」という方法があります。

死後事務委任契約。

司法書士K

死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後の葬儀・埋葬、施設利用料の支払いその他様々な事務手続きを第三者に任せる契約です。

そんなのがあるんですね。

司法書士K

はい。相続人や親族がいない、あるいは、いたとしても疎遠である場合などに利用されることが多いです。

誰に任せてもいいんですか?

司法書士K

まわりに信頼できる人がいて託すことができそうならその人でもいいですし、弁護士や司法書士などの専門家に任せることもできます。

慎重に選ぶ必要がありそうですね。
具体的にどんな事務を任せられますか?

司法書士K

次のような事務を任せることができます。

死後事務委任契約の委任事務の例

  • 通夜、葬儀、埋葬に関する事務
  • 親族等関係者への連絡事務
  • 医療費、老人ホーム等の施設利用料の清算事務
  • 家財道具や生活用品の処分に関する事務
  • 行政官庁等への諸届け事務
司法書士K

他にも、飼っているペットを指定の施設に入れてもらうとか、ツイッター・フェイスブック・インスタグラムなどのSNSやブログ記事の削除または閉鎖などもあります。

SNSの削除。
いわれてみればどれも必要な事務手続きですね。
SNSの削除は絶対に頼みたいです。

任意後見契約・財産管理契約

今はまだ元気だけど、この先、病気したり認知症になったり、からだが弱ってきたときのことを考えると不安なのですが。

司法書士K

成年後見制度というものがあります。

なんか聞いたことがありますね。

司法書士K

成年後見制度とは、認知症などで判断能力が低下した人のために、成年後見人などの支援者が本人に代わって契約をしたり、財産管理をしたりする制度です。

後見人などの支援者が本人に代わって契約や財産管理をする制度。

司法書士K

成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類あります。

成年後見制度には2種類ある。

法定後見制度任意後見制度
利用開始本人の判断能力が衰えた後
家庭裁判所の審判により開始
本人の判断能力が衰える前に契約
判断能力が衰えたときに家庭裁判所に申立て
後見人の選定家庭裁判所が選任自分で選んで契約する
後見人の報酬家庭裁判所が決める契約で自由に設定できる
後見監督人つく場合がある必ずつく
支援の内容原則としてすべての法律行為(※)
例)
財産管理
遺産分割協議の参加
介護保険サービスの契約
病院の入院・介護施設の入居の手続き
代理権目録で決める
法定後見と任意後見

(※)「後見」「保佐」「補助」の類型によって支援内容が異なります。

司法書士K

すでに判断能力が低下してしまった人のために利用されるのが法定後見制度です。
家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所の審判により開始します。
法定後見制度には、判断能力低下の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3つの支援方法が用意されています。

法定後見制度は、すでに判断能力が低下してしまった人のための制度。

司法書士K

元気なうちに自分で将来後見人になってもらいたい人との間で契約をしておくのが任意後見制度です。
本人の判断能力が衰えたときに家庭裁判所に申立てをします。

法定後見の後見人は家庭裁判所が選ぶのですか?
自分で後見人を選べないということでしょうか?

司法書士K

はい。
法定後見の場合、家庭裁判所が後見人を選びます。
申立てのときに家庭裁判所に後見人候補者の希望を伝えることはできますが、希望が通るかどうかわかりません。
司法書士などの専門家が選ばれることが多いです。

見ず知らずの人に自分の財産が管理されるということですか?

司法書士K

そうですね。

なんか、すごいですね。
それに対して、任意後見制度は、元気なうちに自分で後見人を選べると?

司法書士K

はい。
死後事務委任契約と同様に専門家に任せることもできます。
候補者を複数選ぶこともできますし、法人に任せることもできます。

後見人に報酬を払うのですか?

司法書士K

そうですね。
法定後見の場合、月額2万円からかかります。
任意後見は契約によります。
さらに任意後見の場合は後見監督人の報酬も発生します。
後見監督人の報酬は、月額1万円からかかります。

後見監督人とは何ですか?

司法書士K

後見監督人とは、文字どおり後見人を監督する人のことです。
任意後見の場合は必ず後見監督人がつくことになります。

法定後見の場合はどういうときに後見監督人がつきますか?

司法書士K

主に本人の財産の額が大きい場合に、家庭裁判所が選任します。

専門家と任意後見契約をした場合、本人の判断能力が衰えたかどうか定期的に確認してくれるのでしょうか?

司法書士K

専門家などに任せる場合は、判断能力が低下していないかを定期的に訪問したり電話したりして確認してもらう「見守り契約」をセットで締結されることが一般的です。

見守り契約とセット。

司法書士K

また、判断能力が低下しなくても、からだが不自由になってきた場合などに備えて「財産管理契約」を締結しておくことも考えられます。
自分で自由に動くのが難しくなってきても判断能力がしっかりしていれば任意後見は開始しません。
そのような場合に預貯金や不動産などの財産管理を第三者に任せることができるのが財産管理契約です。

言われてみれば、いろいろ考えるべきことが多いですね。

司法書士K

そうですね。
とにかく生前対策は元気なうちに決めておくことが大事です。

よくわかりました。

まとめ

  • 相続人がいない人の財産は、遺言がなく、特別縁故者もいなければ、最終的に国庫に帰属することになります
  • 遺言書を作成することで、相続人以外の人や団体に財産を譲ることができます
  • 遺言で実現できないことを死後事務委任契約で任せることができます
  • 判断能力が低下したときやからだが不自由になったときに備えて任意後見契約や財産管理契約を結ぶことができます

参考書籍

『認知症に備える』中澤まゆみ、村山澄江(著)|自由国民社

『高齢者の財産管理 モデル契約書式集-ホームロイヤー契約・家族信託・死後事務委任等』第二東京弁護士会 高齢者・障がい者総合支援センター運営委員会(編集)|新日本法規出版

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この記事を書いた人

愛媛県四国中央市出身
早稲田大学政治経済学部卒業

平成28年司法書士試験合格
平成29年から約3年間、東京都内司法書士法人に勤務
不動産登記や会社・法人登記の分野で幅広く実務経験を積む

令和2年から香川県高松市にて開業
地元四国で超高齢社会の到来による社会的課題への取組みや地方経済の発展のために尽力している

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