香川県高松市の司法書士 川井事務所です。

起業といってもどのような事業をするかというのは様々で、事業内容や将来の展望によって法人形態を選ぶ必要があります。

法人の種類としては、株式会社のような会社、NPO法人、一般社団法人、一般財団法人などがあります。

他にも学校法人や宗教法人などありますが、そのような目的が決まっていて、それしか選ぶ余地がないものについては、取り上げません。

今回は、一般的な法人形態として、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社、NPO法人、一般社団法人、一般財団法人の特徴などについて取り上げます。

目次

営利法人と非営利法人

法人の種類って多くないですか?

司法書士K

そうかもしれないですね。
起業といっても、様々な事業がありますので、それに合った法人形態を選ぶ必要があります。

それぞれどういう特徴があるんですか?

司法書士K

まずは大きく分けて「営利法人」と「非営利法人」に分かれると思います。

「営利法人」と「非営利法人」。

司法書士K

営利法人は、利益や残余財産を社員に分配することが認められる法人です。
社員というのは、法人の構成員のことで、法律用語です。
世間一般でいう正社員とか派遣社員のように従業員の意味で使われている社員のことではありません。
株式会社の社員だけ特別に「株主」と呼ばれます。紛らわしいですが。

そうだったんだ。

司法書士K

非営利法人は、利益や残余財産を社員に分配することが認められない法人です。

非営利法人は事業活動で利益をあげてもいいんですか?

司法書士K

これも紛らわしいですが、非営利法人は、事業活動で利益をあげてはいけないわけではありません。

非営利というぐらいなので、儲けてはいけないのかと思いました。

司法書士K

非営利法人は、事業活動で利益をあげていいですし、役員報酬や従業員給与などを受け取ることもできます。

意外ですね。

営利法人

営利法人といえばやはり株式会社のイメージですが。

司法書士K

そうですね。
他に、合同会社、合資会社、合名会社があります。

合同会社は最近よく聞きますけど、合資会社と合名会社はあまり聞いたことがありませんね。

司法書士K

数は少ないですが、日常生活で注意していたら、見かけますよ。
居酒屋のカウンターに並んでいる日本酒のラベルをみると「製造者:合資会社●●酒造」と書かれてあったり、おみやげでもらったお菓子のラベルをみると「製造者:合名会社●●製菓」と書かれてあるとか。

そんなところまで見ていなかった。
それぞれどんな違いがあるんですか?

司法書士K

合同会社・合資会社・合名会社の3つは、所有と経営が分離していないグループで、会社に対して出資した人が会社を経営します。
それに対して、株式会社は所有と経営が分離していて、会社に出資した株主と経営者が必ずしも一致しません。

所有と経営が分離していないか、分離することができるかの違い。

司法書士K

合同会社・合資会社・合名会社の違いは、社員の債権者に対する責任が有限責任か、無限責任かによって分かれます。
なお、株式会社の株主の責任は、有限責任です。

有限責任か無限責任か。

司法書士K

有限責任は、出資者が会社に出資した金額を限度として責任を負います。
たとえば、投資家が株式会社に1,000万円出資した場合、その株式会社が事業に失敗してつぶれたとしても、投資家はその1,000万円を超えて責任を負うことはありません。

ええやん。

司法書士K

無限責任は、出資者は、会社が負った借金などの負債について全額を支払う責任を負います。
出資者個人の財産に対しても責任が及びます。
出資者である社員が会社の保証人になるのと同じようなものです。

保証人か。

司法書士K

まとめると次のようになります。

会社の種類所有と経営社員の責任
株式会社分離できる有限責任
合同会社一致有限責任
合資会社一致無限責任+有限責任
合名会社一致無限責任
司法書士K

社員の責任が無限責任の合名会社は、法人ではあるけど、限りなく個人事業に近い形の法人ということになりますね。

たしかに、個人事業は事業用の財産と私的な財産が分離していないですよね。

司法書士K

つまり、合名会社はリスクの少ない小規模なビジネスに向いているということになります。
一方で、多額の資金を集めて大きな事業をするためには株式会社を一択ということになります。

非営利法人

特定非営利活動法人(NPO法人)

NPO法人ってよく聞きますけど、どんな法人なんですか?

司法書士K

特定非営利活動法人のことをNPO法人といいます。
不特定多数の人の利益に寄与することを目的として設立される法人です。
法律で定められた20種類の活動のうちのどれかの活動をすることになります。

  1. 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
  2. 社会教育の推進を図る活動
  3. まちづくりの推進を図る活動
  4. 観光の振興を図る活動
  5. 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
  6. 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
  7. 環境の保全を図る活動
  8. 災害救援活動
  9. 地域安全活動
  10. 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
  11. 国際協力の活動
  12. 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
  13. 子どもの健全育成を図る活動
  14. 情報化社会の発展を図る活動
  15. 科学技術の振興を図る活動
  16. 経済活動の活性化を図る活動
  17. 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
  18. 消費者の保護を図る活動
  19. 上記に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
  20. 上記に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動

事業内容が限られているんですね。

司法書士K

はい。設立するためには、都道府県または政令指定都市による認証が必要となります。
そのため設立までに3~4か月かかります。
設立後も、1年に1回、都道府県または政令指定都市に事業報告書等を提出する必要があります。また、設立するためには10名以上の社員になる人が必要です。

一般社団法人

一般社団法人もよく見かけるような気がします。

司法書士K

一般社団法人は、NPO法人のように事業活動の内容が制限されることはありません。
設立するためには2名以上の社員になる人が必要です。
設立の登記をすることで設立することができます。

NPO法人よりも設立のハードルは低そうですね。

司法書士K

はい。
ただし、公益認定を受けて公益社団法人になるためには、学術、技芸、慈善その他の公益に関する法律で定められた23種類の活動に該当し、不特定多数の人の利益に寄与する公益目的事業をする必要があります。

  1. 学術及び科学技術の振興を目的とする事業
  2. 文化及び芸術の振興を目的とする事業
  3. 障害者若しくは生活困窮者又は事故、災害若しくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
  4. 高齢者の福祉の増進を目的とする事業
  5. 勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
  6. 公衆衛生の向上を目的とする事業
  7. 児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業
  8. 勤労者の福祉の向上を目的とする事業
  9. 教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性を涵養(かんよう)することを目的とする事業
  10. 犯罪の防止又は治安の維持を目的とする事業
  11. 事故又は災害の防止を目的とする事業
  12. 人種、性別その他の事由による不当な差別又は偏見の防止及び根絶を目的とする事業
  13. 思想及び良心の自由、信教の自由又は表現の自由の尊重又は擁護を目的とする事業
  14. 男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
  15. 国際相互理解の促進及び開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業
  16. 地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業
  17. 国土の利用、整備又は保全を目的とする事業
  18. 国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
  19. 地域社会の健全な発展を目的とする事業
  20. 公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
  21. 国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
  22. 一般消費者の利益の擁護又は増進を目的とする事業
  23. 上記に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの

一般財団法人

一般財団法人は、お金持ちが社会のために財産を役立てようみたいなイメージですが。
奨学金みたいな。

司法書士K

そうかもしれないですね。
ここまで見てきた会社・法人は「人の集まり」に法人格が与えられるというものでしたが、財団法人は「財産の集まり」に対して法人格が与えられます。
設立の登記をすることで設立することができます。

それで、財団法人。

司法書士K

財団の拠出者が300万円以上の基本財産を拠出して設立します。
一般社団法人と同様に公益目的がなくても設立することができますが、公益認定を受けて公益財団法人になるためには公益社団法人と同じように公益目的事業をする必要があります。

まとめ

  • 営利法人は、利益や残余財産を社員に分配することが認められる法人です
  • 非営利法人は、利益や残余財産を社員に分配することが認められない法人です
  • 株式会社は、株主の責任が有限責任で、所有と経営が分離しています
  • 多額の資金を集めて大きな事業をするためには株式会社を選ぶことになります
  • 合同会社・合資会社・合名会社は所有と経営が分離しておらず、出資者が会社を経営します
  • 合同会社・合資会社・合名会社は小規模なビジネスに向いています
  • NPO法人は事業内容が公益目的に限られ、設立するためには都道府県等の認証が必要となります
  • 一般社団法人も一般財団法人も事業内容は制限されませんが、公益認定を受けて公益法人になるためには公益目的事業をする必要があります

参考書籍

『NPOの法律相談[改訂新版] ―知っておきたい基礎知識62』BLP-Network (著)|英治出版

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この記事を書いた人

愛媛県四国中央市出身
早稲田大学政治経済学部卒業

平成28年司法書士試験合格
平成29年から約3年間、東京都内司法書士法人に勤務
不動産登記や会社・法人登記の分野で幅広く実務経験を積む

令和2年から香川県高松市にて開業
地元四国で超高齢社会の到来による社会的課題への取組みや地方経済の発展のために尽力している

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