香川県高松市の司法書士 川井事務所です。
株式会社の株式は自由に譲渡することができるのが原則です。
ところが、ほとんどの株式会社は設立するときに株式の譲渡制限をつけることになります。
一体なぜでしょうか。
今回は株式の譲渡制限をつける理由、譲渡承認機関をどうすべきか、株主間契約との関係、株式譲渡の手続きなどについて取り上げます。
株式の譲渡制限なぜつける?
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覚悟とは、暗闇の荒野に進むべき道を切り開くことです。
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覚悟を決めたんですか?
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覚悟を決めました。
株式会社を設立します。
株式上場を目指します。
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それが、ゴールド・エクスペリエンス。
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株式会社を設立するときにはいろいろと決めることが多くて大変ですね。
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そうですね。
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それで、今回は株式の譲渡制限について聞きたいと思いまして。
重要らしいということは聞いたのですが。
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株式の譲渡制限は重要です。
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なぜ株式の譲渡制限をつけるのですか?
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株式の譲渡制限を付ける理由としては、
株式の譲渡制限を付ける理由
- 会社の株式が会社にとって望まない人に渡るのを防ぐため
- 株主間の持株比率を維持するため
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という2つの理由が挙げられます。
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まず、上場会社とは違って非公開会社の場合、その会社の株主が誰なのかということは非常に重要になってきます。
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上場会社とは違い非公開会社では、株主が誰なのかということは非常に重要。
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会社の株式が会社にとって望まない人に渡るのを防ぐために、株式の譲渡制限をつけます。
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会社の株式が会社にとって望まない人に渡るのはこわいです。
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2つ目の株主間の持株比率を維持するためというのも重要です。
持株比率はそのまま株主総会での議決権の割合でもあります。
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そうですね。
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ところが、次のような規定にしている会社を見かけることがあります。
株式の譲渡制限に関する規定
当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を要する。
ただし、当会社の株主が当会社の株式を譲渡により取得する場合においては、当会社が承認したものとみなす。
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どういうことですか?
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これは、既存の株主間の株式の譲渡については自由に譲渡することができるという意味です。
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ということは持株比率が維持できないということですか?
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はい。
たとえば、株主Aが40株、株主Bが30株、株主Cが30株持っていたとします。
株主Aが筆頭株主です。
ところが、株主Bが株主Cの株式を買い取ってしまったら、株主Bが60株持つことになり、株主Bが筆頭株主になってしまいます。
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筆頭株主の座が逆転するのはこわいです。
株主間の譲渡も制限したほうがいいということですね。
株式譲渡の承認機関はどうする?
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株式の譲渡を制限する方法を具体的に教えてください。
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厳密にいうと、譲渡による「取得」することについて、その会社の承認が必要ということになります。
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会社はどうやって承認するのですか?
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原則として、取締役会設置会社であれば取締役会、取締役会設置会社でなければ株主総会で承認します。
ただし、定款で別段の定めを置くことが認められています。
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定款には次のどちらかで記載することが多いです。
株式の譲渡制限に関する規定
当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を要する。
または
株式の譲渡制限に関する規定
当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を要する。
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このように株主総会か取締役会を承認機関として記載している例をよく見かけますが、次のような記載方法でもかまいません。
株式の譲渡制限に関する規定
当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を要する。
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当会社としておけば、取締役会設置会社であれば取締役会、取締役会設置会社でなければ株主総会で承認するという意味になります。
取締役会設置会社になったときに株式の譲渡制限の規定を変更する必要がありません。
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なるほど。
定款で別段の定めを置くことができるとはどういうことですか?
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たとえば、取締役会設置会社でも承認機関を株主総会とすることができます。
株主総会は取締役会よりも上位の機関ですので問題ないとされています。
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わかるかもしれない。
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ほかに、代表取締役を承認者とする例をみかけることがあります。
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いいんですか?
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禁止されているわけではありません。
ただし、取締役会設置会社では、取締役会の下位にある代表取締役を承認者とすることはできないという学説があります。
学説はともかく、代表取締役を承認者とすること自体あまりおすすめできません。
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なぜですか?
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その会社の株主を代表取締役が選べるようなものですからね。
それに、代表取締役は自分が持っている株式を自分の承認で譲渡することができることになります。
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たしかにそうですね。
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いずれ投資家からの出資を受けることを想定しているスタートアップにとっては好ましくないように思います。
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そうなんですか?
株主間契約における創業株主の株式譲渡禁止と職務専念義務
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スタートアップの場合、投資家からみて創業者が経営を続けていくことが重要になってきます。
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それはそうなんじゃないですか。
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はい。
スタートアップの企業価値は創業者個人やそのチームの資質や能力が大きな位置を占めています。
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そうですね。
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つまり、投資家としては創業者には会社の経営に専念してもらわなければなりませんし、会社を簡単に辞められる状態というのは困るわけです。
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困りますね。
私はやめる気はないですけど。
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投資家がスタートアップに投資をする際には、株主でもある創業者と株主間契約を結びます。
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株主間契約?
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はい。
株主間契約とは、簡単にいうと、株主間で会社経営のルールについて決めておく契約です。
創業者株主と投資家株主との利害を調整するものとなっています。
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経営者側と投資家側の利害を調整する契約。
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その株主間契約で、たいていの場合、創業者は投資家の事前の承諾なくして第三者に対して株式を譲渡することができないという内容の条項が入ることになります。
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創業者の株式の譲渡が禁止されるというわけですか?
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そうです。
それで先ほどの、株式譲渡の承認機関を代表取締役とすることがいいのかどうかという話に戻りますが。
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そうでした。
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投資家からみて代表取締役を承認機関とすることは、どうでしょうか?
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創業者は株主であり代表取締役でもあるでしょうから、創業者が自分の持っている株式を自分の承認で譲渡することができるというのは、投資家の意向に反しますね。
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はい。
私が投資家であれば、株式譲渡の承認機関は取締役会か株主総会でなければ安心できないと思います。
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わかってきました。
譲渡制限株式の譲渡の手続き
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ところで、友人Aと共同で会社を設立した後に、友人Bが経営に合流する予定です。
私の株式の一部をBに譲渡したいと考えています。
どのような手続きをすればよいでしょうか?
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では株式譲渡の当事者側と会社側でわけて考えてみましょう。
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株式譲渡の当事者側の手続きは次のとおりです。
株式譲渡の当事者側の手続き
- 株式譲渡契約の締結
- 株式譲渡承認請求
- 株主名簿書換請求
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会社側の手続きは次のとおりです。
株式譲渡の会社側の手続き
- 譲渡承認の決定・通知
- 株主名簿の書換
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株主名簿の書換えも必要なんですね。
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とにかく会社側の承認手続きを忘れているケースが散見されます。
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承認手続きをしていなかったらどうなるのですか?
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会社の承認のない譲渡制限株式の譲渡は、会社との関係では無効とされています。
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無効。
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後の資金調達などの重要な場面で問題になることがありますので注意しましょう。
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よくわかりました。
参考書籍
『商業登記ハンドブック〔第4版〕』松井 信憲(著)|商事法務
『事例で学ぶ会社法実務〈全訂第2版〉』金子登志雄・立花宏・幸先裕明(著)東京司法書士協同組合 (編集)|中央経済社
『株式会社法〔第8版〕』江頭憲治郎(著)|有斐閣
『ベンチャー企業の法務AtoZ』後藤勝也・林賢治・雨宮美季・増渕勇一郎・池田宣大・長尾卓(編集)|中央経済社
『中小企業買収の法務』柴田堅太郎(著)|中央経済社
『会社・株主間契約の理論と実務: 合弁事業・資本提携・スタートアップ投資』田中亘(編集)森・濱田松本法律事務所(編集)
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