香川県高松市の司法書士 川井事務所です。
会社は法人の種類のひとつです。
法人とは、法律を根拠につくられる法律上の人格のことです。
つまり、見たり触れたりすることができない実体のないものです。
その実体のないものの存在をどうやって確認するのでしょうか?
会社や法人について必要な事項を公示して取引を円滑にするための制度が「登記制度」です。
今回は会社の登記簿について、登記簿の見方、登記事項証明書の種類、登記事項証明書の取得方法などについて取り上げます。
会社の登記簿
会社の登記簿の信頼性が低下しているなぁ。
言うやん、急に。
さっきそう言って嘆いているおじさんとすれ違いました。
でもこれってどういう意味なんですかね?
では、まず会社の登記簿とは何かみていきましょう。
そこからですか。
会社って目に見えないものじゃないですか?
いや、見えてますよ。
みんな毎日行っているし。
それは、会社のオフィスです。
会社はオフィスがあるから存在しているんじゃあないですよ。
じゃあ会社って何なんですか?
私たち生身の人間は、生まれたときから人として権利が認められていて法律行為ができますよね?
そうですね。認められていると思っています。
会社は、法律によってつくられる「営利事業を目的として、人と同じように法律行為をすることができる存在」のことです。
会社の名前で契約をしたり、資産を保有したり、銀行口座をつくったりすることができるようになります。
法律でつくられる人のような存在。
なんか、バーチャルな感じですね。
そうなんです。
だから、実体がない存在なんですよ。
じゃあどうやってその存在を確認すればいいんですか?
そこで登場するのが「登記制度」です。
そうくると思った。
国が管理する登記簿という帳簿があります。
会社は、その登記簿に設立の登記をすることで誕生します。
つまり、登記されていることではじめて会社の存在を確認することができるというわけです。
会社の存在証明書のようなものですね。
登記簿には法律で登記すべき内容が定められています。
たとえば、会社名・本店の場所・役員の名前などです。
会社の登記簿をみれば、どんな会社かある程度知ることができるということですか。
でも登記簿ってどこで見ればいいんですか?
法務局という役所に行って、手数料を払って請求すればだれでも取得することができます。
この登記簿があることで会社の取引を円滑なものにしています。
なるほど。
この登記されている内容に変更が生じたら変更の登記をしなければなりません。
会社の登記は法律上の義務です。
たとえば、会社の役員が変更になったとします。
変更の効力発生日から2週間以内に登記しないと過料という制裁金のようなものを払わなければならないことがあります。
この会社の設立や変更の登記の申請を代理するのが司法書士の仕事です!!
そうだったんだ。
知らなかった。
何者か知らずに話しかけていた。
え?
登記簿を実際に見てみないとイメージがわかないですね。
では登記簿のサンプルを見てみましょう。
会社の登記簿の見方
会社の登記簿のサンプルです。
もちろん実在しない架空の会社のものです。
これが会社の登記簿。
登記簿の左の列が登記事項といって法律で登記せよと決められている内容です。
これで全部ではないですが、会社設立当初はこんな感じです。
簡単に内容を見ていきましょう。
会社法人等番号 | 特定の会社を識別するための番号です |
商号 | 会社名のことです |
本店 | 会社の本店の所在場所です |
公告をする方法 | 公告とは、特定の事項を広く一般に知らせることです 次の3つの方法に限られます (1)官報に掲載する方法 (2)時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法 (3)電子公告 |
会社設立の年月日 | 会社が設立された日です |
目的 | 会社の事業の目的です |
発行可能株式総数 | 会社が発行できる株式の上限です |
発行済株式の総数 | 会社が発行済みの株式の数です |
資本金の額 | 会社の資本金です |
株式の譲渡制限に関する規定 | 株式を譲渡により取得するためには、会社の承認を要する旨を登記します 一般的に未上場の会社であれば、譲渡制限が付いています |
役員に関する事項 | 取締役や監査役などの役員の氏名、代表取締役の住所・氏名が登記されます |
登記記録に関する事項 | 登記記録を起こした事由、閉鎖した事由を登記します |
なんとなくイメージがわいてきました。
この架空の会社は、令和4年5月2日に設立の登記がされたことにより誕生しています。
たしかその日は一粒万倍日。
代表取締役の碇厳人氏、開運日を選んで設立している。
令和4年6月22日に「発行済株式の総数」と「資本金の額」が変更になっています。
これはその日に増資が行われたということを意味しています。
誰かが出資して、株式が発行されたと。
はい。
下線部分は抹消された情報ということを表しています。
誰が出資したかはわからないのですか?
株主は登記簿には記載されません。
登記簿から誰が株主なのかはわかりません。
そうなんだ。
ところで、抹消された記録も残るんですね?
そうです。変更された内容の履歴は残ります。
たとえば、会社名を頻繁に変更していたりするとその履歴が残ります。
理由が説明できるものであればいいですが、そうでなければ、会社の信頼を損なう可能性は高いです。
そうかもしれない。
登記事項証明書の種類
ところで、登記の変更の履歴は残るのですが、取得する登記事項証明書の種類によっては履歴が表示されません。
登記事項証明書?
法務局で手数料を払って請求すれば誰でも登記簿を取得できるという話をしました。
正しくは「登記事項証明書」という証明書を取得します。
「登記簿謄本」ということばを聞いたことありますけど?
それは登記簿が紙だった時代のことばです。
謄本とは、原本の内容の全体を原本そのままに完全に写した文書のことをいいます。
登記事項証明書の昔の言い方ですね。
いまだに登記簿謄本と呼ばれることが多いですが。
そうなんだ。
会社の登記事項証明書にはいくつか種類があります。
履歴事項証明書 | 登記簿に記録されている事項のうち,現在効力を有する事項及びおおむね3年前(証明書の請求日の3年前の日の属する年の1月1日)から請求日までの間に抹消された事項が記載されます |
現在事項証明書 | 登記簿に記録されている事項のうち、現在効力を有する事項が記載されます |
閉鎖事項証明書 | (1)現在事項証明書及び履歴事項証明書のいずれにも出力されない事項が記載されます (2)清算結了、本店移転等により閉鎖された登記簿に記録された事項が記載されます |
代表者事項証明書 | 会社の代表者の代表権に関する登記事項で現在効力を有する者が記載されます |
4種類も。
基本的には履歴事項証明書を取得することになると思います。
登記事項の変更の履歴が記載されています。
登記事項証明書には、登記官の認証文というものが付きます。
登記官の認証文。
さきほどみた登記簿のサンプルの下の方に書かれてあった部分です。
これか。
はい。
この認証文の入った登記事項証明書は、証明書として利用することができます。
証明書はどんなときに使うのですか?
たとえば、会社名義の銀行口座をつくるために銀行に提出する場合などがあります。
登記事項証明書はどこで取得できる?
登記事項証明書を取得するには、やはり法務局の窓口に行くことになるのですか?
そうですね。
法務局窓口で請求することもできますし、こちらのウェブサイトから請求して郵送してもらうこともできます。
「登記・供託オンライン申請システム」
https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/
そうなんだ。
請求するためには、登記簿を取得したい会社の会社名と所在地の情報が必要です。
所在地は都道府県単位でもかまいません。
登記情報提供サービスによる登記情報とは?
ところで、登記されている内容だけ閲覧できるサービスがあれば便利だと思いませんか?
なんですか、いきなり。
ちょっと何言っているかわからないです。
証明書として使うわけではないけど、登記されている内容だけ見たいという場合です。
言いたいことはなんとなくわかりました。
「登記情報提供サービス」というインターネットを使ったサービスがあります。
「登記情報提供サービス」
https://www1.touki.or.jp/
インターネット上で、登記されている内容を閲覧できるというものです。
登記官の認証文の入った登記事項証明書ではないので、証明力はありません。
インターネット上で登記されている内容だけ確認できる。
便利かも。
ちなみに、利用時間が、2022(令和4)年10月1日から次のように拡大変更されました。
令和4年9月30日まで | 令和4年10月1日から |
---|---|
平日 午前8時30分から午後9時まで | 平日 午前8時30分から午後11時まで 土日祝日 午前8時30分から午後6時まで |
ええやん。
というか、これまで不便すぎだったんじゃ…
ありがたいです。
これで、土日に相談を受けるときも登記情報が見られるんじゃないですか?
私の仕事をよく知っているじゃないですか。
土日も仕事できますね。
うう…
参考書籍
『商業・法人登記360問』神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介(著)|テイハン
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