香川県高松市の司法書士 川井事務所です。
会社の代表者の肩書は代表取締役社長、代表取締役CEO、代表取締役会長など、いろいろあって実はよくわからないという人がいるかもしれません。
今回は、CEO、社長、代表取締役の違いや執行役員などについて取り上げます。
アメリカの株式会社のしくみ
ユニコーン先輩、お久しぶりです。
おお、君か。
元気にしてた?
はい。
先輩の背中を追いかけて起業することにしました。
あ、そうなんだ。
どんな事業はじめるの?
恋愛ドラマで恋人が記憶を失うという展開をこれ以上作らせない事業をやります。
あと男女が入れ替わる話ももう作らせません。
人は、恋人が記憶を失う話や男女が入れ替わる話を何度でも見たいものなんだ。
会社を作ったらCEOを名乗りたいです。
君はそういうタイプだよな。
社長というよりやはりCEOと呼ばれたいです。
ところで社長の英訳がCEOということでいいんでしょうか?
Presidentという言い方もありますよね?
やれやれ、今日もふわっとした知識で生きているな。
ではCEOと社長について整理してみよう。
お願いします。
まず、CEOというのはChief Executive Officerの略で、最高経営責任者のことをいうんだ。
前提としてアメリカの会社のしくみをわかっていないといけない。
アメリカの会社のしくみ。
アメリカの会社はDirectorとOfficerの役割がわかれているんだ。
Directorは日本でいうところの取締役、Officerは執行役のことをいう。
取締役は日本と同様に株主総会で選ばれる。
しかし、取締役の職務はアメリカと日本では異なっていて、アメリカの取締役は取締役会で経営の意思決定に参加して、執行役を選び、その執行役の業務執行を監督するのが主な役割なんだ。
取締役が具体的な業務執行をするわけではない。
取締役は業務を執行しない。
執行役が取締役会の指揮のもと、会社の業務を執行する。
業務の執行というのは、経営戦略や事業計画を実行することだと思ってもらえればいいと思う。
CEOはたいていの場合、すべての業務執行を統括して経営の責任を負っている。
会社の実質的なトップといっていいだろうね。
日本の取締役は業務の執行をしますよね?
そう。
日本の取締役は株主総会で選ばれて、一般的には、自ら業務を執行する。
それから、これはあくまでもアメリカの会社の制度であって、たとえば、イギリスの会社ではCEOという役職名はないんだ。
イギリスの会社の社長は、Managing Directorと呼ばれるので気をつけたほうがいい。
そうだったんだ。
日本の指名委員会等設置会社
ところで、日本の会社でもアメリカの会社のしくみを取り入れた会社の形態があるにはあるんだけどね。
あるにはある。
あまり使われていないやつの言い方。
指名委員会等設置会社というのがあるんだ。
聞いたことがないです。
やはりマイナーな会社形態っぽいですね。
日本に100社もないぐらいだからね。
上場企業のなかでも、ごく一部が指名委員会等設置会社にしているにすぎない。
その指名委員会等設置会社のしくみはアメリカの会社のそれに近いんですか?
そう。取締役会が執行役を選んで、執行役が会社の業務を執行する。
取締役は業務執行をしない。
会社の代表者は代表執行役であって、法律上、代表取締役という地位はないんだ。
指名委員会等設置会社には代表取締役がいない。
知りませんでした。
しくみとしては、たしかにアメリカの会社に近そうですね。
日本のCEO・社長・代表取締役
ところで代表取締役って社長のことですか?
日本の代表取締役は、指名委員会等設置会社以外の会社の代表者のことで、法律上定められた地位のことなんだ。
だから契約の締結などの法律行為は代表取締役の名前でしなければならない。
社長ということばは法律に出てこないんですか?
社長ということばについて法律上の規定はないね。
日本ではCEOについても法律上の規定はない。
社長もCEOも会社内部の役職の名称に過ぎない。
「代表取締役社長」や「代表取締役CEO」という役職を名乗っている人が多いと思う。
社長とCEO両方のポジションが存在する会社もあるし。
それってどっちが偉いんですか?
それも会社ごとに違っていて社長がCEOより上の会社もあるし、CEOが社長よりも上の地位という会社もあるね。
そうだったんだ。
CEO・COO・CFO・CTOなどの執行役員
なぜCEOを名乗る人が増えてきたんですかね?
CEOだけではなく、COOやCFOなどの役職名もよく聞くようになったと思わない?
たしかによく聞くようになりました。
主な役職をまとめると次のようになる。
CEO(Chief Executive Officer)最高経営責任者
会社の実質的なトップ。すべての業務執行を統括して経営の責任を負っている。
COO(Chief Operating Officer)最高執行責任者
業務執行を統括する役職でCEOに次ぐナンバー2の役職として扱われることが多い。
CFO(Chief Financial Officer)最高財務責任者
財務面に関する経営戦略のトップとして、予算やコストの管理・資金調達などを担当する。
CTO(Chief Technical Officer)最高技術責任者
ITや研究開発など専門的な技術・知識を要する技術部門のトップとして置かれる。
どれも執行役員という位置づけで会社の中の特定の部門を管理する最高責任者を置くことが増えてきたんだ。
たとえば旧来の部長職だと現場管理者のイメージが強いかもしれないけど、それよりも責任が重い役職ということだろうね。
執行役員は会社の役員なんですか?
執行役員も法律上の規定にないことばで、法律上の役員とは別のことばだから気をつけたほうがいい。
そうなんですね。
とにかく日本の法律上のしくみではないけど、アメリカ型の経営体制を取り入れる会社が増えているということなんですね。
そういうことだろうね。
私は代表取締役しか名乗ってないけど。
私はぜったいにCEOを名乗りたいです。
参考書籍
『株式会社法〔第8版〕』江頭憲治郎(著)|有斐閣
『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』秋場大輔(著)|文藝春秋
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