日本ではひと昔前のように親と同居というケースは減ってきて、高齢者のひとり暮らしが増えてきています。
そんなひとり暮らしの高齢者が、ある日、自宅で亡くなり、その事実が誰にも気づかれず数日過ぎるということもそう珍しいことではなくなっているようです。
その場合、正確な死亡日が判明せず、戸籍上、【死亡日時】推定令和●年●月●日、と記載されることがあります。
登記実務では、原則として、相続を原因とする所有権移転登記の登記原因の日付は、戸籍の記載どおりに登記しますので、登記簿に「推定」の文字が入ります。
しかし、相続人の心情を考えると、どうなんだろう・・・と思ってしまいます。
「推定」を省略して登記することはできないのでしょうか?
結論
法務局によって結論が異なります。
個人的な経験からいえば、「推定」を省略して登記できるときと、できないときがあるということです。
よって、この記事は参考程度に読んでいただければと思います。
省略できる説
冒頭に書いたように、原則は相続を原因とする所有権移転登記の登記原因の日付は、戸籍の記載どおりに登記します。
「推定」入るの嫌だな・・・と思っていたときに出会ったのが、山中正登・渡邉敬冶監修『不動産・商業・法人登記実務事例集』日本加除出版。
この本にそのものずばりな事例が載っていました(第1編第2章事例6)。
著者の考えとしては、申請情報の内容として、「推定」の文字を省略することが申請人の意思である旨を、例えば、「申請人は、登記原因及びその日付を『推定』の文字を省略して『平成何年何月何日相続』とすることを希望する。」のように明示されている場合には、「推定」を省略した登記が認められるのではないか、となっています。
詳細な解説がされていますが、読んでいてもっともだなと思える内容になっていますのでぜひ読んでいただきたいです。
他の収録事例も絶妙なセレクトになっていると思いますので、お手元にあれば役に立つと思います。
実例①
ここからはあくまでも一つの実例として、こうでしたという話になっています。
実務では、登記申請前にあらかじめ法務局に相談することが必要かと思います。
相談の際には、上記書籍の該当ページと、念のため「監修者・執筆者一覧」のページのコピーも合わせて添付しました。
相談票を送ってから数日の時間がかかりましたが、貴見のとおり、ただし、委任状には申請人(相続人)から「推定」を省略して申請する旨の記載が必要との回答がありました。
また、一度、「推定」の省略が認められた法務局でも、都度、個別相談してほしいと言われました。
委任状
上記相談の回答のとおり、委任状には、委任内容のひとつとして、「登記原因及びその日付を『推定』の文字を省略して『令和●年●月●日相続』として登記申請すること」という記載を入れました。
申請書
申請書にも、「申請人は、登記原因及びその日付を『推定』の文字を省略して『令和●年●月●日相続』とすることを希望します。」という記載が必要です。
実例②
実例①と同様に、法務局には事前相談しました。
上記でご紹介した書籍の該当ページと、念のため「監修者・執筆者一覧」のページのコピーも合わせて添付しました。
回答としては、書籍の意見もわかるけれども、明確な先例が出ていないため、原則どおり登記原因及びその日付は戸籍の記載のとおりに記載して申請してくださいということでした。
参考書籍
『不動産・商業・法人登記実務事例集』山中 正登 (監修)・渡邉 敬治 (監修)|日本加除出版
— どうぞお気軽にご相談ください。—