香川県高松市の司法書士 川井事務所です。
株式会社をつくったけど株主の権利や株主総会のことがいまいちわからないという人は多いと思います。
今回は、株主総会はどんなときに必要か、株主総会の決議要件と決議事項、株主総会の手続きの流れなどについて解説します。
株主総会はどんなときに必要?
株式会社をつくりました。
はっきりいってプライム市場を狙っています。
株式上場を目指している。
東証の鐘を鳴らしたいと思っている。
それで株式会社は株主総会を開く必要があるらしいのですが、どんなときに必要なのかいまいちわかりません。
では株主総会がどんなときに必要なのかみていきましょう。
お願いします。
そもそも株主総会とは何か?というところから確認したいと思います。
そこからですか。
株主総会とは会社の所有者である株主が集まり会社の重要な意思決定をするところです。
会社の重要な意思決定。
難しいことばでいうと、会社の最も上位の意思決定機関が株主総会です。
最も上位の意思決定機関というとすごそうですね。
株主総会で決まったことを、株主から経営を任された取締役が実行するというのが法律上のルールです。
なんとなくわかります。
株主総会は原則として株式会社の組織、運営、管理などあらゆることを決めることができます。
ただし取締役会を置いた場合は株主総会の役割の一部が取締役会に移り、株主総会では会社法で決められていることと定款に定めたことに限り決議することになります。
取締役会があるかないかで株主総会の権限が変わるということですね。
なんとなくどういうものかわかってきましたが、具体的にいつ必要になるのですか?
株主総会には定時株主総会と臨時株主総会があります。
定時株主総会と臨時株主総会
定時株主総会 | 毎事業年度の終了後、一定期間内に開催しなければならない株主総会 一定期間内とは通常2か月以内だが3か月以内に延長することも可 |
臨時株主総会 | 必要がある場合にいつでも開催することができる株主総会 |
少なくとも定時株主総会は毎年開催する必要があるということですね。
株主総会の決議事項と決議要件
定時株主総会ではどんなことを決めるのですか?
定時株主総会ではまず対象となる事業年度の事業報告と計算書類が取締役から提出されます。
株主は取締役から事業の報告を受け、計算書類の承認をします。
要するに取締役から株主にその事業年度の経営成績が報告されるというわけですね。
はい。
株主が計算書類を承認した時点でその事業年度の決算が確定します。
そうだったんだ。
決算が確定してはじめて税務申告できることになりますので、税務申告書提出日は、定時株主総会の開催日よりも後になります。
税務申告の期限は決算から2か月以内ですので定時株主総会も通常2か月以内に開催されます。
そういうことか。
株主は取締役の経営成績をみて、取締役の任期が満了する定時株主総会のときは、取締役を再任するかしないか決めることになります。
取締役や監査役の任期が満了するのは定時株主総会が終了する時点というきまりになっています。
株主は取締役に経営を任せるというのが株式会社でしたね。
ここまでの話をまとめると、定時株主総会では最低限、取締役から株主への事業報告と株主による計算書類の承認が必要です。
任期が満了する取締役や監査役がいる場合は、再任するかどうかなどを決めます。
他に決めることがあれば決めていいんですか?
はい。
利益の配当を決めることがありますし、その他何を決めてもかまいません。
何を決めてもいいというのがずっとピンときてないのですが、どんなものがありますか?
全部あげていくのは難しいのですが、主な株主総会の決議事項と決議要件は次のとおりとなります。
株主総会決議事項の例(一部)
普通決議 2分の1超(過半数) | 計算書類の承認・取締役の選任・取締役の報酬決定など |
特別決議 3分の2以上 | 合併や会社分割などの組織再編行為・新株発行・新株予約権発行・定款変更・解散など重要な事項 |
株主は持っている株式数に応じて議決権を持っています。
つまり持っている株式数に応じて会社の意思決定権を持っていることになります。
より多く出資している人が決定権を持っている。
会社法ではどの決議事項にどの決議要件が必要か定められています。
計算書類の承認、取締役の選任、取締役の報酬決定などは議決権の過半数あれば決議することができます。
一般的に普通決議と呼ばれます。
これが普通決議。
次に合併や会社分割などの組織再編行為、新株発行、新株予約権発行、定款変更、解散など重要な事項は議決権の3分の2以上が必要となります。
一般的に特別決議と呼ばれます。
これが特別決議。
その普通決議や特別決議などと言われるといやになるのですが。
とにかく会社の株式を3分の2以上持っていれば、会社の重要事項を決定する権利を持つことになるということを覚えておきましょう。
わかりました。
スタートアップや中小企業では限られた人だけが株主であることが多いため、日常それほど気にする場面はないのですが、意見が割れた場合には重要になってきます。
スタートアップにおいては株式上場やM&Aによる株式売却の際の株主の利益にも関わってきますので持株比率は超重要です。
持株比率は超重要。
株主総会手続きの流れ
実際に株主総会を開くとなるとどうすればよいでしょうか?
株主総会の大まかな流れは次のとおりです。
株主総会の手続きの流れ
取締役が決定
取締役会設置会社であれば取締役会の決議により決定
株主全員の同意があれば省略可
株主全員が書面などにより同意の意思表示をすることで株主総会の決議自体を省略可(書面決議)
株主が一か所に集まるのが原則だが一部オンラインによる参加も可
まずは取締役か取締役会が招集を決定するということですね。
そのとおりです。
それから株主に招集通知を送る。
いつまでに送ればいいですか?
非公開会社であれば、原則として株主総会の1週間前までに通知します。
1週間前とは中7日のことを意味しています。
取締役会設置会社でなければ定款で1週間より短い期間を設定することもできます。
招集通知は今どき書面を郵送ですか?
取締役会設置会社でなければ書面でなくてもかまいません。
口頭でもいいですが、後に紛争になった場合に備えるため電子メールなど証拠が残る方法にしておいた方がよいでしょう。
紛争ですか。
こわいです。
招集手続は株主全員の同意があれば期間を短縮することができますし、省略することも可能です。
株主総会自体も株主全員の書面などの同意があれば開催を省略できるのですか?
はい。
実際に集まる必要がありません。
書面決議と呼ばれたりみなし決議と呼ばれたりします。
また、総会を開催する場合には株主が一か所に集まるのが原則ですが、一部オンラインによる出席も認められています。
株主総会議事録には誰が押印すればよいでしょうか?
実は会社法上、押印義務はないのですが、通常は代表取締役が押印します。
会社の認印でよいでしょうか?
通常は認印でかまわないのですが、代表取締役の変更登記に使用する場合には会社実印が必要になることがあります。
株主総会議事録をつくっていなかったらどうなるのですか?
捕まりますか?
株式上場をめざしている会社は議事録がないと上場審査で問題になるという話は聞きます。
M&Aなどで株式を売却する場合なども買主から提出を求められることになります。
ちゃんとルールを守って手続きをしていないと重要な場面で困るということですね。
そうですね。
結局、日ごろから地道にルールを守っておくことが成功への近道だったりします。
よくわかりました。
参考書籍
『ベンチャー企業の法務AtoZ』後藤勝也・林賢治・雨宮美季・増渕勇一郎・池田宣大・長尾卓(編集)|中央経済社
『会社議事録・契約書・登記添付書面のデジタル作成実務Q&A 電子署名・クラウドサインの活用法』土井万二(編集代表)|日本加除出版
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