香川県高松市の司法書士 川井事務所です。
相続登記の義務化に続き、不動産の所有者の住所や氏名が変わった際の「住所等変更登記」も法律上の義務となります。
今回は、住所等変更登記の義務化のルールや罰則、そして、手続をかんたんにしてくれる新制度「スマート変更登記」について取り上げます。
住所等変更登記の義務化とは

引越ししたら登記の住所も変更しないといけなくなったと聞きましたが、本当ですか?



はい。
不動産の所有者(所有権の登記名義人)は、氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、その変更日から2年以内に変更の登記の申請をすることが義務付けられます。



なんでそんな義務ができたんですか?



背景にあるのは「所有者不明土地問題」です。



ああ、不動産登記簿をみても所有者が誰かわからない土地のことですね。
相続登記の義務化のときにも聞いた気がする。





そうです。
不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地や、所有者が判明しても連絡がつかない土地が全国で増加しています。
これらの土地については、所有者の探索に多大な時間と費用が必要となり、公共事業や復旧・復興事業が円滑に進まず、民間取引や土地の利活用の阻害原因となっています。
また、土地が管理されず放置され、隣接する土地への悪影響が発生するなど、様々な問題が生じています。



そうでした。



全国のうち所有者不明土地が占める割合は九州の大きさに匹敵するともいわれており、その解決は喫緊の課題となっています。 そこで、所有者不明土地の主な発生原因である相続登記の未了及び住所等変更登記の未了に対応するため、これまで任意だったこれらの登記が義務化されることになりました。



なるほど。
ちなみに、いつから義務化されるんですか?



この住所等変更登記の義務化の施行日は、令和8年4月1日です。



私は3年前に引越しをしたんですが、それなら対象外ですよね?



いえ、対象になります。
施行日より前に住所等を変更した場合であっても、変更登記をしていない場合には義務化の対象となります。



そうくると思った。
いつまでに登記すればいいですか?



その場合は、令和10年3月31日までに変更登記をしていただく必要があります。
義務違反の罰則(過料)と正当な理由



もし期限までに登記しなかったら、どうなるんですか? 捕まりますか?



捕まることはありません。
正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、5万円以下の過料の適用対象となります。



過料。



はい。
罰金のような刑事罰とは異なります。



法務局はどうやって引越したことを把握するんですか?



登記官が登記申請の審査の過程等で把握した情報により行います。
例えば、所有権の登記名義人が表示に関する登記の申請をした場合において、申請情報の内容である所有権の登記名義人の住所等が登記記録と合致していなかったときなどです。



いきなり過料を取られるんですか?



いいえ。
登記官が義務違反の事実を把握しても、直ちに裁判所への通知(過料通知)を行うこととはしていません。
登記官は、義務に違反した者に対し、相当の期間を定めて義務の履行を催告します。
催告書に記載された期限内に登記や申出がされない場合、登記官は、裁判所に対してその義務違反を通知し、通知を受けた裁判所において、過料を科する旨の裁判が行われます。



先ほど「正当な理由がないのに」と言っていましたが、正当な理由って何ですか?



義務の履行期間内において、以下のような事情が認められる場合には、一般に「正当な理由」があると認められます。
- 検索用情報の申出又は会社法人等番号の登記がされているが、登記官の職権による住所等変更登記の手続がされていない場合
- 行政区画の変更等により所有権の登記名義人の住所に変更があった場合
- 住所等変更登記の義務を負う者自身に重病等の事情がある場合
- 住所等変更登記の義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
- 住所等変更登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合
便利な新制度「スマート変更登記」



引越しのたびに自分で登記するのは面倒ですね。



そこで、義務化に伴う環境整備策として、かんたん・無料の申出をしていただければ、その後は法務局が職権で住所等の変更登記をするサービスが設けられました。
これが「スマート変更登記」です。



スマート変更登記。
どうやれば利用できるんですか?



個人の方の場合、「検索用情報の申出」をしていただければ利用できます。
検索用情報とは「所有者の生年月日、メールアドレス」などを指します。
申出の後に住所や氏名の変更があった場合は、法務局において住所等の変更の事実を確認して、ご本人の了解を得た上で、職権で変更登記をします。



それをすると、どうなるんですか?



法務局が定期的に住基ネットに照会して住所等の変更の有無を確認します。
住所等に変更があった方に対し、変更登記をしてよいかを確認するメールを送信し、変更登記をしてよい旨の回答があった方について、順次、変更登記が行われます。



メールで確認するだけなら簡単ですね。
その申出はどうやってやるんですか?



令和7年4月21日以降、「かんたん登記申請」(https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/mtouki/)のページから、「検索用情報の申出」の手続を選択いただき、画面上の案内に従い、所有者の生年月日、メールアドレス、不動産の地番等の情報を入力いただくことなどにより、Webブラウザ上で申出ができます。
電子証明書は不要です。



法人の場合はどうですか?



法人の方の場合は、「会社法人等番号の登記」をすれば、スマート変更登記が利用できます。
商業・法人登記上で住所等に変更があった都度、不動産登記のシステムに通知され、それを受けて順次、不動産登記上の住所等の変更登記が行われます。



法人は自動で連携されるんですね。
誰でも利用できるんですか?



海外に居住されている方や、会社法人等番号を有していない法人については、法務局側で住所等の変更を確認することができないため、スマート変更登記は利用できません。
この場合は、住所等に変更があったときは、変更登記の申請をしていただく必要があります。



私は国内なので申出をしておこうと思います。



そうですね。
住所等の変更があるたびにご自身で登記申請をしなくても、義務違反に問われることがなくなりますので大変便利です。
まとめ
- 不動産の所有者は、住所や氏名の変更日から2年以内に変更登記をすることが義務付けられます。
- 令和8年(2026年)4月1日より前に住所変更した場合も対象となり、令和10年(2028年)3月31日までに登記が必要です。
- 正当な理由なく申請を怠ったときは、5万円以下の過料の対象となります。
- 「検索用情報の申出」(個人の場合)や「会社法人等番号の登記」(法人の場合)をすれば、法務局が職権で登記をしてくれる「スマート変更登記」が利用できます。
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