2023年も思い返せば毎日毎日いろいろあったような気がします。

司法書士としての仕事は常に変化に富み、新たな挑戦が絶えないものですね。

この一年間、私の業務を支え、知識の拡充に寄与した数々の実務書があります。

今回は、その中でも特に印象に残った書籍を紹介し、それぞれがどのように私の仕事に役立ったかを掘り下げていきたいと思います。

目次

Q&A 不動産の時効取得・瑕疵担保責任に関する法律と実務―占有・援用・登記・売買・契約不適合・現況有姿

まずは愛媛県会の末光祐一先生の『』です。

末光先生の著作はけっこう多いのですが、どれも激渋なテーマばかりです。

戦前・戦後の新旧民法が交差する相続とか、隣地・隣家に関する法律とか。

とはいえ、『』などは司法書士であれば必携の書でしょう。

さて、地方で開業しておりますと、誰しもいつかは不動産の時効取得の相談を受ける日が来るのではないかと思います。

普段、商業しかやりたくないと言い続けている私のような者のところにもついに時効取得の相談が舞い込んできた2023。

そんなときに購入したのが『』です。

時効取得にはたいてい対象物件の不動産名義人の相続の問題が絡んでくると考えられますが、様々なパターン別に判例・先例・実例をふまえて解説されている書籍です。

本件は単なる時効取得ではなく、複数の問題が絡み合った案件で、士業数名のチームが組まれていましたが、ある事柄について弁護士さんを納得させる材料としても本書に助けられました。

それから、日ごろから思うのは、司法書士試験の受験でやったところは実務でけっこう出てくるなということで、本件でも占有の承継の話などいろいろ思い出すことがありました。

受験勉強は大切です。

全訂 設問解説 相続法と登記

もしかしたら今年最も申請するときに緊張したのが、ある相続の案件だったかもしれません。

同業者2人に断られてまわってきたお話でした。

依頼者がいうには、その断った司法書士の1人は法務局に照会したけどダメだと言われたということで…

でも依頼者の話を聞く限り、申請できるとしか思えない。

断った司法書士が法務局に何を相談して、どんな回答があったかわからないし、申請できると思うんですけど…

そう思いながらひっぱり出してきたのが、ド定番といっていい『設問解説 相続法と登記』。

10月に『』が発売されました。

持っていない司法書士はいないと思います…。

関連する箇所を隅々まで確認しました。

やはり頼りになります。

それでも同業者2人が断っている相続案件、そのうち1人はベテランだったし、自分の知らない何かがあるのか??とオンライン申請のボタンを押すときは震えたし、完了するまではずっとそわそわしていました。

結果、申請は通りましたけど。

依頼者の方にはかなり感謝されました。

この仕事をやっていてよかったと思える瞬間のひとつです。

所有者不明土地解消・活用のレシピ―令和3年改正民法・不動産登記法の徹底利用術─

今年の8月に参加した全青司おかやま全国研修会に参加したときに、講師の先生に勧められた『』。

すぐ買いました。

2023年4月に所有者不明土地解消のための法改正の一部が施行されました。

地方に移ってから所有者不明土地・建物に悩まされている人が多いという印象を持っていたので、気になる法改正だったし、実務はどうなっていくのか関心があったところでした。

本書を買ったすぐ後ぐらいに早速、所有者不明土地管理命令申立ての相談があり、全国研修会に参加してよかったと思いました。

本書は、司法書士4名が議論する形式で、いくつかの題材を素材として、現行法・改正法それぞれに当てはめ、様々な角度から検証していくという内容となっています。

申立書の書式例なども掲載されていて、すでに発売されていた他の所有者不明土地関連の解説書よりも実務向きと思われます。

なお、所有者不明土地関連の改正法の解説書としては『』と『』がマストでしょう。

そういえば、開業前の事業計画に地方の課題解決に力を入れるというようなことを書いたことを思い出しました。

今後は地方の所有者不明土地問題に取り組んでいくかもしれない。

あるいは取り組まないかもしれない。

でもきっと取り組むだろう。

〔補訂版〕利益相反行為の登記実務

本書も持っている人が多いかもしれません。

今年は利益相反について考える機会が多かったように思います。

実務では見逃したらかなりまずいですし、これも受験で頻出論点だったことが思い出されます。

本書で学んだのは、利益相反取引と取締役会での特別の利害関係を有する取締役とは分けて考える必要があるということでした。

つまり、会社間自己取引にあっては、当該自己取引をする取締役は、『自己取引原因取締役』ではあっても、『特別利害関係取締役』とはならず、当該取締役会において議決権を行使できるものと考えられるとされています(本書155ページ)。

根拠先例も掲載されていますので、気になる方は確認してみてください。

ただし、反対説(特別利害関係取締役に該当する説(『』462ページ注(6)))もあり、弁護士が関与している議事録はこの説に立って作成されていることもあるようです。

会社議事録・契約書・登記添付書面のデジタル作成実務Q&A 電子署名・クラウドサインの活用法

今年はリーガルの「RSS-SR」と「RSS-VR」を使い始めました。

クラウド型電子署名サービスで、要は依頼者がスマホとマイナンバーカードだけで電子署名ができるというものです。
https://www.legal.co.jp/products/rss/sr/

おかげで完全オンライン申請の件数がずいぶんと増えたというのが、今年の業務の大きな変化のひとつでした。

電子署名が増えて参考にすることが多かったのが『』です。

マイナンバーカード・商業登記電子証明書による電子署名だけでなく、事業者署名型(立会人型)であるクラウドサインによる電子署名についても署名方法や署名の検証方法が詳しく解説されています。

また、インターネットによる会議出席を行った場合や書面決議を行った場合など、株主総会議事録、取締役会の議事録記載例も掲載されており、大変参考になりました。

今後も完全オンライン申請率を上げていきたいところですが、マイナンバーカードで電子署名ができるということが、いまいち世の中に周知されておらず、電子署名用のパスワードを覚えていないという人が多いのが悩ましいところです。

商業・法人登記500問

』です。

300問、360問ときて、今年500問が発売されました。

ついこないだ360問を買ったばかりのような気がしていましたが、もう新しいのが出るのか、しかも500問に増えてるという驚きがありました。

正直360問までは、実務で必要な個所を参照する程度にしか読んでいなかったのですが、500問はすきま時間に前から読んでいくということをやりました。

商業登記の実務に就いてから6年ほど経ちますが、「総論」が大事だなと思う今日この頃。

第1部総論(Q1~Q50)が身にしみる。

特に第1章総則(Q1~Q10)は、君たちはどう商業登記やるのか、といった内容で、定期的に読み返したいぐらいです。

Q5の「善解の理論」は商業登記に関わるすべての人(司法書士・登記官)に読んでほしいと願います。

商業登記ハンドブック〔第4版〕

これまたド定番。

持っていない司法書士はいない、という感覚でしたが、司法書士試験に合格してしばらく経ってから、同期に

商業登記ハンドブックって何?

と聞かれたことがあったので、あるいは持っていない人もいるかもしれません。

買ったほうがいいと思いますよ。

個人的には定番すぎてここに挙げるのもどうかと思いつつ、やはり今年お世話になったので挙げておきます。

来年同じテーマで記事を書くならまた挙げると思われる。

ということで常に手元にある一冊です。

ご紹介した書籍

『Q&A 不動産の時効取得・瑕疵担保責任に関する法律と実務―占有・援用・登記・売買・契約不適合・現況有姿』末光祐一 (著)|日本加除出版

『全訂 設問解説 相続法と登記』幸良秋夫(著)|日本加除出版

『所有者不明土地解消・活用のレシピ―令和3年改正民法・不動産登記法の徹底利用術─』中里功・神谷忠勝・倉田和宏・内納隆治(著)|民事法研究会

『会社議事録・契約書・登記添付書面のデジタル作成実務Q&A 電子署名・クラウドサインの活用法』土井万二(編集代表)|日本加除出版

『〔補訂版〕利益相反行為の登記実務』青山修(著)|新日本法規出版

『商業・法人登記500問』神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介(編著)|テイハン


商業・法人登記500問 [ 神崎満治郎 ]

『商業登記ハンドブック〔第4版〕』松井 信憲(著)|商事法務

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この記事を書いた人

愛媛県四国中央市出身
早稲田大学政治経済学部卒業

平成28年司法書士試験合格
平成29年から約3年間、東京都内司法書士法人に勤務
不動産登記や会社・法人登記の分野で幅広く実務経験を積む

令和2年から香川県高松市にて開業
地元四国で超高齢社会の到来による社会的課題への取組みや地方経済の発展のために尽力している

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