Setouchi-i-Baseイベント出演回の補充解説と参考書籍

香川県高松市の司法書士 川井事務所です。

香川県のオープンイノベーション拠点「Setouchi-i-Base(セトウチ・アイ・ベース)」のライブ配信イベント「せとうち未来創造研究所〜香川のスタートアップ企業のリアルを深掘るトークライブ〜」2022年6月22日の回に司法書士川井が出演しました。

「経営者がおさえておくべき会社の資金調達 ~そもそも株式会社とは?~」をテーマにお話ししました。

ライブ配信終了後に「わかりやすかった」「勉強になった」「次は種類株式をやってください」「内容も良かったし、話すスピードもちょうどいいし、川井さんに依頼したいと思いました!」「ゲッツに笑った」「ゲッツいらんやろw」などのご感想をいただきました。

ご視聴くださったみなさま、誠にありがとうございます。

今回は、その配信イベントの内容について補充解説と参考書籍についてのご紹介です。

目次

アーカイブ視聴できます

後から客観的に観てみると、自分が思っているよりも話すスピードが遅くなっていました。
(話すスピードはちょうどよかったというご意見もいただいていますが)

再生スピード上げていただければちょうどいいかもしれません。

登記についての補足

イベント中に言ったように、一般の人が日常生活の中で司法書士に出会う機会というのは、ほとんどなく、どういう仕事なのかあまり知られていません。

セミナーなどで毎回説明が必要となる職業です。

さらに「登記」がどういうものなのかも簡単に説明しなければなりません。

セミナーだと登記簿サンプルをお見せする方法が多いでしょうか。

今回もそうでした。

イベント中、「法人と登記」のチャプターで、「会社法人登記は法律上の義務」という説明をしましたが、これすべての登記に当てはまるわけではありません。

不動産登記は義務ではありません。

不動産登記は義務ではないですが、

2024(令和6)年4月1日から「相続」を原因とする登記については義務になります。

??どういうこと??って感じですよね。

詳細についてはこちらのリンクをご参照ください。

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全部説明したくなる性分なので、不動産登記のことも話したい衝動にかられたのですが、かろうじて我慢しています。

あの流れで不動産登記のことを話すと流れを切りますし、聞いている人が混乱するだろうという配慮です。

事業のための資金調達

イベント内では、「金融機関の融資」「株式発行」「クラウドファンディング」の3つをとりあげました。

金融機関から融資を受けることを「デットファイナンス」、株式発行による資金調達を「エクイティファイナンス」ということもあります。

クラウドファンディングの種類がいくつかあるという話をしましたが、「株式投資型」というものがあります。

株式投資型クラウドファンディングとは、非上場株式の発行により、インターネットを通じて多くの人から少額ずつ資金を集める仕組みです。

事業内容に共感すれば、だれでもエンジェル投資のようなことができる仕組みです。

つまり、クラウドファンディングであり、エクイティファイナンスでもあると言えそうです。

ただし、法規制により、

  • 株式投資型クラウドファンディングにより、同一の会社が資金調達を行うことができる金額は、1年間に1億円未満
  • 1人の投資家の方が株式投資型クラウドファンディングを通じて投資できる金額は、同一の会社が発行する株式につき1年間に50万円以下

などの制約があります。

数千万程度の資金調達であれば検討してみてもよいかもしれません。

また、投資する動機も、キャピタルゲインを得るという目的もありつつ、どちらかというと、その事業を応援したいからという一面が強いようです。

株式会社の歴史

株式会社の歴史について話しました。

今回のイベントの視聴者の対象は、主に起業家・起業したい人を想定していましたが、そうではないお勤めの人や学生、あるいは同業者の方にも見られるだろうと思っていました。

なので社会人の教養講座のようなことも意識したかもしれません。

もちろんその後に話す株式上場のことなどが理解しやすくなるだろうという考えで、歴史から話しました。

参考書籍は『』平川克美(著)です。

オランダ東インド会社の設立から産業革命までのくだりはこの書籍を参考にしています。

ところで、改めて「株主の有限責任制」「株式を自由譲渡できるシステム」「所有と経営の分離」のトライアングルを考えてみると本当に「なりふり構わず資金を集める方法だな」と感じます。

合同会社は、株式会社と同様に出資者の責任は有限責任ですが、法律上原則として出資者が経営することになりますし、持分は自由に譲渡することができませんので、資金調達力は全然違います。

イベント中は、株式会社の資金調達力があるというメリットについてしか触れていませんが、よくない面も多い仕組みだと感じます。

  • 経営者は人の金を預かって経営しているので、どこか不正に対して甘い
  • 株主は、必ずしも経営に強い興味をもっているわけではない

などの理由から腐敗は起こりやすい構造になっています。

法改正のたびに取締役に対する監視を厳しくしようとしてきましたが、企業の不祥事・不正事件は後を絶たないですし、今後もそうでしょう。

株式上場のメリット・デメリット

株式上場について話しました。

株式会社の本来の形は、多額の資金を集めて、大きな事業をするためのものと考えられます。

上場のメリット・デメリットについての参考書籍は、『』村上世彰(著)です。

その他、株式上場時の創業者利益のくだりは『』磯崎哲也(著)や『』石割由紀人(著)を参考にしています。

イベント中、ストックオプションについて詳しく話しませんでしたが、ご興味のある方はこちらの記事をご参照ください。

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投資家からの資金調達・出口戦略・資本政策

投資家からの資金調達、出口戦略、資本政策までの一連の流れは、ほぼ『』のとおりです。

これとあわせて同じ著者の『』は、スタートアップ支援に関わる人にとって必須の書籍です。

これを読んでいないと会話ができないですし、スタートアップの成長にとって、それを支える士業の存在が必要だということが理解できないと思うのですが…以下省略。

投資家からの資金調達

「投資家からの資金調達」では、スタートアップはリスクが大きい事業をすることになるので、株式による資金調達がよいという話をしました。

基本はそうですが、売上が安定してくると金融機関の融資を組み合わせることもありえます。

また、政府系金融機関である日本政策金融公庫国民生活事業では資本制ローンというものを提供しています。

貸付期間が長い、元本は貸付期間の終わりに一括返済(金利は払っていく必要あり)など資本に近い特色があります。

そういったものも検討する余地はありそうです。

イベント内では、投資家選びは結婚相手を選ぶようなものという話をしました。

もっと言うなら、

会社の株式を外部投資家に渡すのは、自分の身体の一部を渡すようなもの

ぐらいに考えてもらっていいと思います。

たとえ1%を渡すのであっても死ぬほど考えたほうがいいでしょう。

出口戦略

「出口戦略」では、「株式上場」「M&Aによる会社の売却」の2つをとりあげました。

いまのところ、日本では株式上場によるものが多く、M&Aによる会社の売却はアメリカなどに比べるとまだ少ないとされています。

上記2つの他、未上場株式のセカンダリーマーケットといわれる、未上場株式の売買ができる場がないわけではありません。

しかし、現状、日本ではまだまだ発展途上の分野のようです。

なお、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)というものがありまして、これはキャピタルゲインを目的とするものではなく、事業会社が主にシナジー目的で投資するというものです。

スタートアップのよくある失敗事例

Setouchi-i-Baseコーディネーターとの打ち合わせで、失敗事例について、いくつか話してほしいという要望がありましたので、取り上げました。

実際に、イベント内で取り上げたような内容の失敗を多く見ているということなのでしょう。

先に挙げた『』『』の他、『』後藤勝也・林賢治・雨宮美季・増渕勇一郎・池田宣大・長尾卓(編集)、『』山岡佑(著)なども参考にしています。

イベント内でも言いましたが、イベント内で掲げた4つの失敗事例以外にも、多くの論点があります。

株式以外についても、資本金、税務、役員の任期、事業の目的、会社名、口座開設できるかどうかなど、検討すべきことは一般の方が思われているよりも多岐にわたります。

「形式的に」会社ができあがることと、事業の目的や将来の展望にあった会社をつくることとは違います。

本気で事業をはじめたい方は、ぜひ専門家にご相談ください。

私たちの仕事というのは、問題が起こらないことに価値があります。

そのため、なかなかその価値がわかりづらいのかもしれません。

なにしろ、なにも起こらないわけですから。

かといって、問題が起きている人が、どこに原因があったか振り返り、はじめから専門家に依頼しておけばよかった…という結論に至るかといえばそうではない気もするので難しいです。

ただ、こちら側の発信が足りていないとも感じます。

イベントの宣伝にご協力くださった方々

ご協力くださいましてありがとうございました!

co-ba takamatsu

高松市のコワーキングスペース「co-ba takamatsu」さん。

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定期交流会や朝の瞑想のイベントなどでお世話になっています。

本屋ルヌガンガ

高松市亀井町の攻めた本のセレクトでおなじみ「本屋ルヌガンガ」さん。

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本を買うだけではなく、セミナーを開催させてもらったりしています。

今回のイベントの宣伝用チラシを置いてくださいました。

オルタナティブ・ファクトリー

高松市亀井町の記者やライターと企業の広報担当者との交流サロンであり、カフェバーであり、コワーキングスペースでもある「オルタナティブ・ファクトリー」さん。

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デジタルハリウッドSTUDIO高松

高松市の中心部にあるWebデザイン・動画編集を学ぶ社会人向けスクール「デジタルハリウッドSTUDIO高松」さん。

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参考書籍まとめ

『株式会社の世界史:「病理」と「戦争」の500年』平川克美(著)|東洋経済新報社

『生涯投資家』村上世彰(著)|文藝春秋

『起業のファイナンス増補改訂版』磯崎哲也(著)|日本実業出版社

『増補改訂版 起業のエクイティ・ファイナンス』磯崎哲也(著)|ダイヤモンド社

『資本政策立案マニュアル〈第2版〉』石割由紀人(著)|中央経済社

『ベンチャー企業の法務AtoZ』後藤勝也・林賢治・雨宮美季・増渕勇一郎・池田宣大・長尾卓(編集)|中央経済社

『実践スタートアップ・ファイナンス 資本政策の感想戦』山岡佑(著)|日経BP

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この記事を書いた人

愛媛県四国中央市出身
早稲田大学政治経済学部卒業

平成28年司法書士試験合格
平成29年から約3年間、東京都内司法書士法人に勤務
不動産登記や会社・法人登記の分野で幅広く実務経験を積む

令和2年から香川県高松市にて開業
地元四国で超高齢社会の到来による社会的課題への取組みや地方経済の発展のために尽力している

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