意外と知らない会社の解散・清算手続き

香川県高松市の司法書士 川井事務所です。

会社の解散・清算手続きについて、慣れていない人が多いかもしれません。

私は不動産証券化業界にいたことがありSPC(特別目的会社)の会計業務に携わっていました。

SPCは計画的に設立され、計画的に解散していきますので、解散・清算手続きは割と日常業務でした。

かつ、SPCは事業の実体がない会社であるだけにきっちり法律の規定に従って処理が進んでいく世界です。

今回はその経験に基づき、主に株式会社と合同会社の解散・清算手続きについての流れや問題点、株式会社と合同会社の違いなどを取り上げます。

目次

会社の解散・清算とは

会社は事業の目的があって設立されますが、自らその事業をやめることもできます。

自ら事業をやめること、つまり廃業することを「解散」といいます。

会社を解散すると決めたら直ちに会社の法人格が消滅するわけではありません。

会社の解散が決定すると、目的に定められた事業をすることができなくなり、清算手続きをしていくことになります。

株式会社の場合、取締役は退任し、清算人が就任することになります。

合同会社も清算人が就任することになります。

清算人は債権があれば回収し、債務があれば弁済します。

すべての債権者に債務を弁済してもなお会社に財産が残っている場合は株主に分配します。

最終的に会社の債権債務がゼロになったら清算結了となります。

清算結了により会社の法人格が消滅します。

ここで大事なのは、株式会社・合同会社が解散して清算手続きに入ったら、まずは何よりも債権者が優先されるということです。

会社の解散原因

株式会社の場合(会社法第471条)

  1. 定款で定めた存続期間の満了
  2. 定款で定めた解散の事由の発生
  3. 株主総会の決議
  4. 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
  5. 破産手続開始の決定
  6. 第824条第1項の解散命令または第833条第1項の解散判決

また、休眠会社のみなし解散という制度もあります(会社法第472条)

合同会社の場合(会社法第641条)

  1. 定款で定めた存続期間の満了
  2. 定款で定めた解散の事由の発生
  3. 総社員の同意
  4. 社員が欠けたこと。
  5. 合併(合併により当該持分会社が消滅する場合に限る。)
  6. 破産手続開始の決定
  7. 第824条第1項の解散命令または第833条第1項の解散判決

合併はともかくとして、株式会社は株主総会の決議、合同会社は総社員の同意により解散することが多いと思います。

解散・清算スケジュール

おそらくいちばん多いと思われる株式会社の株主総会決議による解散を例に解散・清算スケジュールをみていきます。

前提

  • 3月31日に解散した場合の「一例」です
  • なるべく短い期間での清算スケジュールです
  • 債務超過はないものとします
  • 従業員を雇用していた場合は労働基準監督署やハローワーク、年金事務所への届出手続きが必要となりますが、ここでは取り上げません

解散・清算スケジュール

官報公告申込み・解散準備
  • 費用の自動振替などあれば止める(理由は後に債務弁済禁止期間に入るため)
株主総会の解散決議(解散日)
解散公告の官報掲載日、知れている債権者への個別催告
  • この日の翌日から2か月間は債権の申出期間となり、会社にとっては債務弁済禁止期間に入る
解散・清算人選任の登記
4/1から納税までの間
  • 清算人が清算開始日(=解散日)における財産目録及び貸借対照表を作成し、株主総会でそれらの書類を承認する(条文上は「いつまでに」とは書かれていないが、税務申告が解散から2か月以内のため、結果として申告日以前に承認する必要がある)
  • 債務弁済禁止期間の納税のために、裁判所に債務弁済許可申立てをする(少額であれば役員等が立替払いをして、弁済禁止期間後に精算することもできる)
  • 税務署に異動届出書(解散)の提出(解散登記後)
解散事業年度の税務申告、納付期限(解散から2か月以内)
債権の申出期間・債務弁済禁止期間満了日
  • 会社が把握していない債権の債権者であって債権の申出をしなかったものは、清算から除斥され、分配がされていない残余財産に対してのみ、弁済を請求することができる
債務弁済・残余財産の確定
残余財産確定日から1か月以内に残余財産確定事業年度の税務申告(その期間内に残余財産の最終分配が行われる場合には行われる日の前日まで)
残余財産の分配(税務申告後)、決算報告の作成
株主総会で決算報告の承認決議、清算結了登記
清算結了届の提出(清算結了登記後)

債務弁済許可申立てについて

解散公告の官報掲載日は最短でも解散日の翌日になります。

解散した後に、遅滞なく、債権者への公告をせよと会社法の条文は言っています(会社法第499条第1項)。

会社法
(債権者に対する公告等)
第499条 清算株式会社は、第475条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、2箇月を下ることができない。
2 前項の規定による公告には、当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない。

官報公告は朝一番に出ますので、解散決議の日に官報公告は出せません。

仮に3月31日に解散した場合、どうがんばっても解散公告は4月1日になります。

そうすると、4月1日から債務弁済禁止期間に入ります(同法第500条第1項)。

(債務の弁済の制限)
第500条 清算株式会社は、前条第1項の期間内は、債務の弁済をすることができない。この場合において、清算株式会社は、その債務の不履行によって生じた責任を免れることができない。
2 前項の規定にかかわらず、清算株式会社は、前条第1項の期間内であっても、裁判所の許可を得て、少額の債権、清算株式会社の財産につき存する担保権によって担保される債権その他これを弁済しても他の債権者を害するおそれがない債権に係る債務について、その弁済をすることができる。この場合において、当該許可の申立ては、清算人が2人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。

この債務弁済禁止期間の満了日は2か月後の6月1日です。

ところが、税務申告と納税の期限は解散日から2か月以内となっています。

この例の場合、5月31日が期限です。

税金の納付は債務の弁済にあたります。

会社法のルールを守りつつ、納税するには、第500条第2項の裁判所の許可を得るしかないようにみえます(ただし、次のテーマをご覧ください)。

解散日から解散公告までの間に債務の弁済をしてよいか?

解散日から解散公告までの間に、支払いしちゃっていいですか?

こういう質問してくる人がいます。いました。

たとえば、3月31日に解散、4月10日を解散公告の官報掲載日とすると、4月1日から4月9日までの間に債務を弁済していいですか?ということを言っています。

先ほどみた会社法第500条の条文をよく読むと「前条第1項の期間内は、債務の弁済をすることができない。」とあり、前条第1項とは、第499条の解散公告期間です。

たしかに、会社法は「解散日から債務弁済禁止期間満了日までは弁済禁止」とは言っていません。

さきほどの質問は、条文を読んだ上での質問ということになります。

司法書士K

手ごわい…。

この問題について、私が知る限りにおいてですが、書かれてある書籍等を見たことがありません。

もしあったら教えていただきたいです。

第500条の趣旨としては、清算会社の把握していない債務があるかもしれず、結果、債務超過になることもありうるため、債権申出期間が満了して、清算会社の把握していない債権者が清算から除斥されるまで、債務の弁済を禁止する。ということなのではないかと思います。

知れている債権者に弁済し終わって財産がなくなったところに知らない債権者が現れましたというのはよろしくないということでしょう。

債権者平等の原則からも特定の債権者に先に弁済するというのは好ましくないと考えられます。

だとすると、「解散日から」債権申出期間が満了するまで債務の弁済をすべきではないと考えられるのですが、どうなんでしょうか。

個人的には、さきほどのような質問に対しては「弁済禁止期間満了までは支払をしないほうが無難」と答えます。

違う考えもあるかもしれません。

先に解散事業年度の税務申告をして、その後に解散公告をしても条文に反しているとはいえません。

そうすれば、債務弁済許可申立てをしなくても納税することができそうです。

ただし、清算期間が長くなりますが…。

解散事務年度について株式会社と合同会社のちがい

話はがらりと変わります。

合同会社の清算スケジュールも株式会社とほぼ同じような流れで進んでいきます。

ただし、決定的に違うのが清算事務年度です。

株式会社は、清算開始原因の発生日(=解散日)の翌日から1年の期間の清算事務年度が開始します。

(貸借対照表等の作成及び保存)
第494条 清算株式会社は、法務省令で定めるところにより、各清算事務年度(第475条各号に掲げる場合に該当することとなった日の翌日又はその後毎年その日に応当する日(応当する日がない場合にあっては、その前日)から始まる各1年の期間をいう。)に係る貸借対照表及び事務報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。

ところが、合同会社(持分会社全部そうなのですが)は、それに対応する会社法の規定が定められていません。

具体例

株式会社の場合、たとえば、3月決算の法人が令和3年12月31日に解散し、清算株式会社となった場合には、その法人の事業年度は次のとおりとなります。

  1. 令和3年4月1日~同年12月31日:事業年度開始の日から解散の日まで
  2. 令和4年1月1日~同年12月31日:解散の日の翌日からその事業年度(=清算事務年度)終了の日まで

合同会社の場合、たとえば、3月決算の法人が令和3年12月31日に解散し、清算合同会社となった場合には、その法人の事業年度は次のとおりとなります。

  1. 令和3年4月1日~同年12月31日:事業年度開始の日から解散の日まで
  2. 令和4年1月1日~同年3月31日:解散の日の翌日から定款所定の事業年度終了の日まで

合同会社は解散日に注意をしないと短い期間で税務申告の期限がやってきます。

3月決算の合同会社が2月に解散してしまうと、清算期間に入って1か月で事務年度が終了して税務申告が必要となってしまいます。

登記とは関係のない話ですが、案外知られていないようですので、知っておくとよいかもしれません。

参考書籍

『株式会社法〔第8版〕』江頭憲治郎(著)|有斐閣

『商業・法人登記先例インデックス』鈴木龍介(編集)|商事法務

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この記事を書いた人

愛媛県四国中央市出身
早稲田大学政治経済学部卒業

平成28年司法書士試験合格
平成29年から約3年間、東京都内司法書士法人に勤務
不動産登記や会社・法人登記の分野で幅広く実務経験を積む

令和2年から香川県高松市にて開業
地元四国で超高齢社会の到来による社会的課題への取組みや地方経済の発展のために尽力している

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