香川県高松市の司法書士 川井事務所です。
司法書士の業務は、多岐にわたり専門性が求められます。
日々の実務において、適切な判断と確実な対応を行うためには、信頼できる情報源が不可欠です。
2024年も司法書士業務を支えてくれた数多くの実務書がありました。
その中から、本当に現場で役立ち、実践に即した内容を提供してくれた7冊を厳選してご紹介します。
これらの書籍が、皆様の業務に新たな視点や安心感をもたらす一助となれば幸いです。
なお、2023年版実務書7選はこちらのリンクからご参照ください。
非上場株式取引の法務・税務〔スタートアップの資金調達編〕
2024年はストックオプションやJ-KISSなど新株予約権のことを考えることが多かった印象です。
ストックオプションのルールは目まぐるしく変わっていくように感じ、なんとかついていかなければ、という思いでした。
J-KISS型新株予約権も発行のほか、転換期限が過ぎた場合の対応ややむを得ない事情でJ-KISS投資家が離脱する場合どうする?などといった課題に向き合う場面もありました。
そんな時によく読んだ印象なのが『非上場株式取引の法務・税務〔スタートアップの資金調達編〕』です。
本編以外のコラムにも「みなし優先株式」や、「拒否権を種類株式の内容として定めるか、株主間契約で定めるか」など興味深くて、ためになる情報が盛りだくさんです。
ところで、ストックオプションといえば、私が所属するBAMBOO INCUBATOR(https://bambooincubator.jp/)で税制適格ストックオプション発行のための割当契約書・発行要項のひな形が開発されリリースされた2024。
シン・ストックオプション(新SO)
https://bambooincubator.jp/template/startup/so
無料でダウンロードできますのでぜひご活用ください。
この開発プロジェクトに私も参加したということもあり、今年一年けっこう新株予約権のことを考えたなという印象が残っています。
詳解商業登記【全訂第3版】
詳解商業登記。
分厚い。
登記六法よりも分厚い。
鈍器のようなものといっていいかもしれない。
大地震が起きて、書棚から落ちてきたら命にかかわるかもしれない。
さて、商業登記について調べたいことがあれば、まずは、全司法書士必携の『商業登記ハンドブック』を開きます。
そこに載っていないことは、他の本で調べるという流れになります。
あるいは、ハンドブックはある程度読み込んでいて、いま調べたいことはハンドブックに載っていないことはもうわかっているというときは、もちろん、いきなり他の本を探す旅に出るしかありません。
総論が充実している。
この分厚さなのだから、充実しているに決まっている。
総論が読みたいのだ。
総論について調べないといけないような事件が起きたような気がする2024。
本書のおかげで助かった。
33,000円払った甲斐があるってもんだよ。
もちろん各論も充実している。
なぜなら分厚いからである。
しかも上下巻セットだ。
とにかく商業登記をやりたい人は『詳解商業登記【全訂第3版】』もできれば持っていた方がよいでしょう。
ところで話は変わりますが、同業者から商業登記についての質問を受けることがあります。
質問を受けるのは別に煩わしいとは思わないタイプなので、気軽に質問していただいて構わないのですが、『商業登記ハンドブック』に書いてあることを質問されるのはちょっと…困るかもしれない。
ハンドブックといえば、2025年1月に『第5版』が発売されます。
「株主総会資料電子提供制度の創設や支店所在地登記の廃止のほか、バーチャルオンリー型株主総会の実現、定款認証に係る公証人手数料見直し、実質的支配者リスト、旧氏の記録柔軟化やDV被害者等住所非表示措置、いわゆるストック・オプションプール、代表取締役等住所非表示措置等を盛り込んだ改訂版」だそうです。
ハンドブックは必携。
結局ハンドブックのことを書いてしまった。
事例で学ぶ会社法実務〈全訂第2版〉
実務の知恵のようなものを授けてくれます。
個人的には意外と役員変更のことで調べることが多い気がします。
誰だよ役員変更が簡単だとか言っているのは。
そういえば、取締役の任期が満了しているにもかかわらず、その取締役の辞任の登記をしてしまっている例が散見されます。
取締役の辞任の登記が「簡単にできた」ように思えたかもしれませんが、そもそもやってはいけない登記です。
Q&Aの答えを自分なりに考えてみるのがいいと思います。
【新訂版】公益法人・一般法人の登記
徐々に一般社団法人・一般財団法人(以下「一般法人」)のご依頼が増えてきているように感じた2024。
一般法人の依頼はもっと増えてほしい。
なぜなら理事の任期が原則2年だから。
ご依頼お待ちしております。
すばらしい。
なお、登記以外の法人の法務について確認したいときは『最新 社団法人・財団法人のガバナンスと実務』を参考にしています。
三訂版 相続登記の全実務 相続・遺贈と家事・非訟手続
相続登記の申請が義務になった2024。
こんな商業登記に偏りがちな私のような者のところにもそれなりに相続登記のご依頼がありました。
インスタのDMから混み入った相続のご相談があったのは今年の事件の一つ。
そんな2024年に発売された『三訂版 相続登記の全実務』。
近時の相続に関する法改正を受けて改訂されています。
これまた全司法書士必携の書。
実務に携わる者であれば持っておいた方がいいに決まっている。
相続登記については本書と昨年ご紹介した『全訂 設問解説 相続法と登記』があれば何とかなりそうな気がする。
本書は、相続登記に関連する家事事件・非訟事件手続きも網羅されています。
補訂版 仮登記の実務
令和5年4月1日から法改正により農地法第3条許可の面積要件が廃止されたからか、こんな私のところにも農地の仮登記の本登記の依頼がきた2024。
法改正前に農地が売買されたけど、農地法の許可がおりないので売買予約で仮登記だけしてそのまま放置という土地がけっこうあるそうです。
それが上記の法改正により農地法第3条の許可がおりて、最近、仮登記の本登記が増えているのだとか。
そんなときにまず買って読んだのが、『補訂版 仮登記の実務』。
地方の司法書士は持っておいた方がよいかもしれない。
ところで農地の実務に関する書籍が少ない気がするなと思っていたところ今年出版された『農地・生産緑地に関する実務と事例ー登記、税務、転用、相続、売買』。
は?生産緑地?何それ?という都会民も読んだ方がいいやつ。
地方では農業をやりたいという若者が意外といたりして、来年は農業関連の起業のご依頼が来るかもしれない。
そんなとき農地の基礎知識をインプットしておくために、この本を見返すことになるような予感。
事例でわかる 任意後見の実務 専門職後見人が初めて受任する際のポイントと書式記載例
任意後見契約案作成にも携わった2024。
思い返せばいろいろな業務をやっている。
それが司法書士。
いちばん参考にしたのは『事例でわかる 任意後見の実務』でした。
なお、受任した任意後見契約案作成は、親族間での契約であって私が受任者となるものではありません。
番外編 エンジェル投資の教科書: 普通株・みなし優先株・J-KISS・令和5年改正エンジェル税制の活用
手前味噌で恐縮ですが、2024年は私が所属しているBAMBOO INCUBATORから『エンジェル投資の教科書』というkindle本が出版されました。
私も一部執筆しており、けっこういいこと書いたような気がします。
スタートアップ支援に興味がある人にはぜひ読んでいただきたいおすすめ書籍です。
ご紹介した書籍
『非上場株式取引の法務・税務〔スタートアップの資金調達編〕』小山浩・間所光洋・立石光宏・髙橋悠(著)|税務経理協会
『詳解商業登記【全訂第3版】』筧康生・神﨑満治郎・土手敏行(編集)|きんざい
『事例で学ぶ会社法実務〈全訂第2版〉』東京司法書士協同組合(編集)金子登志雄・立花宏・幸先裕明(著)|中央経済社
『【新訂版】公益法人・一般法人の登記』伊藤文秀(著)|全国公益法人協会
『三訂版 相続登記の全実務 相続・遺贈と家事・非訟手続』田口真一郎・黒川龍(著)|清文社
『補訂版 仮登記の実務』青山修(著)|新日本法規出版
『事例でわかる 任意後見の実務 専門職後見人が初めて受任する際のポイントと書式記載例』勝猛一(著)|日本加除出版
『商業登記ハンドブック〔第5版〕』松井信憲(著)|商事法務
『社団法人・財団法人の登記と書式〔第3版〕』大貫正男・久我祐司(編集)|民事法研究会
『最新 社団法人・財団法人のガバナンスと実務』梅本寛人(著)|中央経済社
『全訂 設問解説 相続法と登記』幸良秋夫(著)|日本加除出版
『農地・生産緑地に関する実務と事例ー登記、税務、転用、相続、売買』鹿島久実子・鹿島崇之・清田幸弘(著)|日本加除出版
『高齢者の財産管理 モデル契約書式集-ホームロイヤー契約・家族信託・死後事務委任等-』第二東京弁護士会 高齢者・障がい者総合支援センター運営委員会(編集)|新日本法規出版
『エンジェル投資の教科書: 普通株・みなし優先株・J-KISS・令和5年改正エンジェル税制の活用』BAMBOO INCUBATOR(著)
エンジェル投資の教科書: 普通株・みなし優先株・J-KISS・令和5年改正エンジェル税制の活用
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