香川県高松市の司法書士 川井事務所です。
NPO法人(特定非営利活動法人)の解散手続きは、株式会社などの営利法人とは異なり、特定非営利活動促進法に基づく特有のルールが存在します。
社員総会の決議による解散をはじめとする法定の解散事由や、解散後に原則として理事がそのまま清算人に就任する点など、実務上押さえておくべきポイントが多岐にわたります。
また、法務局での登記だけでなく、所轄庁に対する遅滞ない届出や認定手続きも欠かせません。
この記事では、NPO法人の解散事由から清算人の就任、忘れがちな所轄庁への手続き、そして最終的な解散及び清算人就任の登記手続きに至るまでの流れを取り上げます。
NPO法人(特定非営利活動法人)の解散事由と決議
NPO法人が解散する場合、その事由は法律で明確に定められています。
特定非営利活動促進法(以下「NPO法」といいます。)第31条第1項によれば、以下の7つの事由によって解散します。
- 社員総会の決議
- 定款で定めた解散事由の発生
- 目的とする特定非営利活動に係る事業の成功の不能
- 社員の欠亡
- 合併
- 破産手続開始の決定
- 設立の認証の取消し
まず「社員の欠亡」についてですが、NPO法人は設立の認証を受けるための要件として「10人以上の社員を有するものであること」が求められています(NPO法第12条第1項第4号)。
そのため、社員が一人もいなくなってしまった場合(欠亡した場合)には、法人の人的な存立基盤が失われるため、法定の解散事由となります。
NPO法人が社員総会の決議によって解散する場合、総社員の4分の3以上の賛成がなければ、解散の決議をすることができません(NPO法第31条の2本文)。
ただし、定款に別段の定めがあるときは、その定めに従うことになります(同条ただし書)。
また、「目的とする特定非営利活動に係る事業の成功の不能」によって解散する場合は、社員総会の決議とは異なり、所轄庁(都道府県知事や指定都市の長)の認定がなければその効力を生じません(NPO法第31条第2項)。
この認定を受けようとするときは、事業の成功が不能となった事由を証する書面を所轄庁に提出しなければなりません(同条第3項)。
さらに、NPO法人がその債務につきその財産をもって完済することができなくなった場合には、裁判所は、理事若しくは債権者の申立てにより又は職権で、破産手続開始の決定を行います(NPO法第31条の3第1項)。
この場合、理事は、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならないと規定されています(同条第2項)。
解散が決定すると、法人は清算手続きへと移行します。
解散したNPO法人は、清算の目的の範囲内において、その清算の結了に至るまではなお存続するものとみなされます(NPO法第31条の4)。
清算人の就任
NPO法人が解散した場合、法人の残務処理を行う責任者として「清算人」が就任します。
NPO法によれば、破産手続開始の決定による解散の場合を除き、理事がそのまま清算人となるのが原則です(法定清算人)(NPO法第31条の5本文)。
ただし、これには例外が設けられています。
定款に別段の定めがあるとき、又は社員総会において理事以外の者を選任したときは、理事が当然に清算人となるわけではありません(NPO法第31条の5ただし書)。
ところで、この第31条の5ただし書に「社員総会において理事以外の者を選任したときは」とあることから、社員総会の決議により解散する場合、株式会社のように、同総会で理事のうち1名を清算人に選任して登記することはできないのかという疑問が生じます。
理事全員が清算人なるのは都合が悪いという場合もあるでしょう。
その点、『商業・法人登記実務相談事例2800問』のQ28-027に同様の問いがあり、それに対して回答者が選任可能ではないかとの私見が述べられ、念のため登記官の見解を確認するようにと回答されています。
もし、清算人となるべき者がいない場合や、清算人が欠けたために損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人若しくは検察官の請求により、又は職権で、清算人を選任することができます(NPO法第31条の6)。
逆に、重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、清算人を解任することができます(NPO法第31条の7)。
裁判所が清算人を選任した場合には、NPO法人が当該清算人に対して支払う報酬の額を定めることができ、その際には清算人及び監事の陳述を聴かなければならないとされています(NPO法第32条の6)。
また、清算人の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない点も押さえておきましょう(NPO法第32条の5)。
清算人が就任すると、以下の職務を行うことになります(NPO法第31条の9第1項)。
- 現務の結了
- 債権の取立て及び債務の弁済
- 残余財産の引渡し
清算人は、これらの職務を行うために必要な一切の行為をすることができる権限を有しています(NPO法第31条の9第2項)。
特に重要な実務手続きとして「債権の申出の催告」があります。
清算人は、NPO法人が解散した後、遅滞なく、公告をもって、債権者に対し、一定の期間内にその債権の申出をすべき旨の催告をしなければなりません。
この期間は、2箇月を下ることができません(NPO法第31条の10第1項)。
この公告は「官報」に掲載して行います(同条第4項)。
公告には、債権者がその期間内に申出をしないときは清算から除斥されるべき旨を付記しなければなりませんが、法人が既に把握している「判明している債権者」を除斥することはできず(同条第2項)、これら判明している債権者には各別に申出の催告をしなければならない点に注意が必要です(同条第3項)。
期間経過後に申出をした債権者は、法人の債務が完済された後、まだ権利の帰属すべき者に引き渡されていない財産に対してのみ、請求をすることができます(NPO法第31条の11)。
なお、清算中にNPO法人の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、清算人は、直ちに破産手続開始の申立てをし、その旨を官報に掲載して公告しなければなりません(NPO法第31条の12第1項、第4項)。
清算人が破産管財人にその事務を引き継いだときは、清算人の任務は終了します(同条第2項)。
所轄庁への届出・認定手続
NPO法人の解散・清算手続において、株式会社や一般社団法人と大きく異なる特徴の一つが、所轄庁(主たる事務所が所在する都道府県知事や指定都市の長など)に対する各種の届出や手続が義務付けられている点です。
法務局への登記だけでは手続は完結しません。
まず、法人が解散したときには、所轄庁への届出が必要です。
清算人は、「社員総会の決議」「定款で定めた解散事由の発生」「社員の欠亡」「破産手続開始の決定」によって解散した場合には、遅滞なくその旨を所轄庁に届け出なければなりません(NPO法第31条第4項)。
前述のとおり、「目的とする特定非営利活動に係る事業の成功の不能」によって解散する場合には、届出ではなく、所轄庁の「認定」が必要となります(NPO法第31条第2項)。
また、清算人が就任した際にも手続きがあります。清算中に就任した清算人は、その氏名及び住所を所轄庁に届け出なければなりません(NPO法第31条の8)。
すべての清算事務が終わり、清算が結了した際にも届出が必要です。清算が結了したときは、清算人は、その旨を所轄庁に届け出なければなりません(NPO法第32条の3)。
ここで、清算手続における「残余財産の帰属」についても触れておきます。解散したNPO法人の残余財産は、合併及び破産手続開始の決定による解散の場合を除き、所轄庁に対する清算結了の届出の時において、定款で定めるところにより、その帰属すべき者に帰属します(NPO法第32条第1項)。
NPO法によれば、定款に残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には、国又は地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人のいずれかから選定されるようにしなければならないと制限されています(NPO法第11条第3項)。
もし定款に残余財産の帰属すべき者に関する規定がないときは、清算人は、所轄庁の認証を得て、その財産を国又は地方公共団体に譲渡することができます(NPO法第32条第2項)。
これらによっても処分されない財産は、最終的に国庫に帰属することになります(同条第3項)。
解散・清算人就任の登記
NPO法において、特定非営利活動法人は、政令で定めるところにより登記しなければならないとされており(NPO法第7条第1項)、登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもって第三者に対抗することができないと規定されています(同条第2項)。
NPO法人の登記手続の詳細は「組合等登記令」という政令に定められています。
組合等登記令によれば、組合等(NPO法人を含みます)が解散したときは、合併や破産手続開始の決定等による解散の場合を除き、2週間以内に、その主たる事務所の所在地において、解散の登記をしなければなりません(組合等登記令第7条)。
また、解散によって理事が清算人となった場合や、新たに清算人が選任された場合には、代表権を有する者に関する変更として登記手続が必要になります。
組合等登記令では「代表権を有する者の氏名、住所及び資格」が登記事項とされており(組合等登記令第2条第2項第4号)、清算人が就任した際にもこの規定に基づいて登記を行うことになります。
その後、官報公告期間の経過や債務の弁済、残余財産の引渡しなどすべての清算事務が終了すると、清算結了となります。
組合等登記令によれば、清算が結了したときは、清算結了の日から2週間以内に、その主たる事務所の所在地において、清算結了の登記をしなければなりません(組合等登記令第10条)。
NPO法人の解散・清算手続では、法務局に対する「解散の登記」「清算人の登記」「清算結了の登記」という一連の登記手続と、所轄庁に対する「解散の届出(又は認定)」「清算人就任の届出」「清算結了の届出」という2つのルートの手続を並行して漏れなく行う必要があります。
参考書籍
『第3版 Q&A法人登記の実務 NPO法人』吉岡誠一(著)|日本加除出版
『NPOの法律相談[改訂新版]』BLP-Network(著)|英治出版
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