香川県高松市の司法書士 川井事務所です。
第2章株式会社の変更の登記の各論、株式に関する登記に入ります。
長いのでその株式のパートの途中までとなります。
修行は続くよどこまでも。
これは商業登記ハンドブック第5版を読みながら自分なり思ったこと、疑問点、恐れながら補足などを自分用にメモしたものでありながら公開してみるという試みです。
なので、繰り返し読むたびに加筆修正されていくかもしれません。 今回は「2-3①編」です。
2-3株式に関する登記
引き続き商業登記ハンドブック(以下「ハンドブック」)を丁寧に読んでいく。
第2章株式会社の変更の登記の各論、株式に関する登記まできた。
P.237④登記申請書の例(注)
今のところ(2026年6月時点)発行可能種類株式総数を変更した場合、全ての種類株式に係る発行可能種類株式総数とその内容を登記しなければならない。
つまり新株予約権のように登記事項ごとに変更登記ができない(新株予約権の場合、たとえば、「新株予約権の目的たる株式の種類及び数又はその算定方法」のみ変更登記をすることができる。)。
また、スタートアップの資金調達で利用される優先株式では、普通株式を対価とする取得請求権、取得条項を付けることが一般的だが、会社法第114条の規定に反していないかどうか確認する必要がある。
P.238 2株式の内容の変更(1)単一株式発行会社の場合
(1-1・1-2①編)にも書いたが、発行する全部の株式を取得請求権付株式または取得条項付株式にする会社は全くないわけではない。

P.238①譲渡制限株式の定めの設定
株式の譲渡制限の定めを設定するのは、上場廃止があった場合や上場申請したが承認されなかった場合など、かなり場面が限られていると考えられる。
株主総会の特殊決議が必要となる点に注意を要する。
P.244②譲渡制限株式の定めの変更又は廃止
株式上場申請前に譲渡制限の定めを廃止するのが一般的である。
発行可能株式総数が発行済株式総数の4倍を超えることができない点のほか、取締役(監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社除く)・監査役の任期が満了する点に注意する必要がある。
P.247 ①優先株式の定めの設定、変更又は廃止(a)手続
優先株式の内容の例は、ハンドブック28ページ以下に記載がある。
30ページから31ページにわたって甲種優先株式・第一種優先株式・第二種優先感株式の記載例があり、それらについて、甲種優先株式及び第一種優先株式は、定款で、具体的内容まで定められているが、第二種優先株式は、定款では、その内容の要綱を定めるに止まっているという説明がされている。
具体的内容により、確定額が算出されるが、優先配当の上限を定めるに留まる場合は、要綱と解釈されるということだと考えられる。
定款で種類株式の内容を定めた場合には、当該種類の株式を初めて発行する時までに、株主総会(取締役会設置会社にあっては、株主総会又は取締役会)の決議により、その具体的内容を定めなければならない(会社法第108条第3項)。
この決議をした場合、発行する各種類の株式の内容の変更の登記をしなければならない(平18・3・31民商782号通達)。
P.249 ①優先株式の定めの設定、変更又は廃止(ⅳ)登記申請書の例
単一株式発行会社が種類株式発行会社になる場合、登記の事由は「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の変更」とする。
P.253 ③株式の譲渡制限の定めの設定、変更又は廃止(b)登記手続
たとえばスタートアップが資金調達する際に、A種優先株式の発行要項に「譲渡によるA種優先株式の取得については、当会社の承認を要する。」という記載があったとして、定款には、通常すでに株式の全部についての譲渡制限の定めが置かれているはずなので、定款の種類株式の内容として、発行要項に記載のあった「譲渡によるA種優先株式の取得については、当会社の承認を要する。」の部分は定めなくてもよいと考えられる。
仮に定めたとしても、ハンドブックの記載のとおり、必ずしも定款の文言と登記簿が一致している必要はなく、株式の譲渡制限の定めを変更する必要はない。
ところで、種類株式発行会社となって、たとえば「普通株式・A種株式・B種株式」を発行している会社の株式の譲渡制限の定めが「譲渡によるA種株式及びB種株式の取得については、当会社の承認を要する。」となっている例を見たことがある。
普通株式の譲渡制限が外れて、意図せずに公開会社になってしまっていたのである。
これをしばらく気づかずに非公開会社のつもりで様々な手続きを積み重ねてしまうと取り返しのつかないことになるおそれがある。
P.253 ④取得請求権付株式の定めの設定、変更又は廃止
スタートアップが資金調達する際に利用される優先株式の内容として取得請求権付株式が設定されることが多い。
普通株式を対価とするものと金銭を対価とするものがある。
普通株式を対価とするものは、「転換請求権」と呼ばれることが通常である。
株式市場で流通する株式は通常は普通株式であるため、スタートアップが発行する優先株式は株式上場前に普通株式に転換しておく必要がある。
もっとも、株式上場前は、転換請求権よりも下記で述べる取得条項による強制転換により普通株式に転換されることが通常である。
スタートアップ投資で利用される種類株式についての詳細は以下リンクの記事をご参照ください。

P.254 ⑤取得条項付株式の定めの設定、変更又は廃止
上記の取得請求権とあわせてスタートアップが資金調達する際に利用される優先株式として普通株式を対価とする取得条項が付されることが通常である。
取得請求権のところで書いたように、株式上場前に優先株式を普通株式に転換しておく必要があるため、この条項を設定する。
会社が強制的にその優先株式を取得することとなり、一部の上場に反対する株主のために上場できないなどといった事態を回避することができる。
P.256 ⑦拒否権付株式又は取締役等選解任権付株式の定めの設定、変更又は廃止
拒否権付株式と取締役等選解任権付株式、どちらも誤解されていそうな株式。
拒否権付株式は俗にいう黄金株で、なにしろ黄金というぐらいだから何だかありがたそうじゃないか。
しかし、黄金株を1株持っていれば一安心!というわけではないということは以下の記事が参照になります。
黄金株に関してよくある誤解|しまのわ司法書士法人
取締役等選解任権付株式については、以下リンクの記事に詳しく書きました。

P.257 株券発行会社の定めの設定又は廃止
会社法では株券不発行が原則だが、銀行から融資を受けるために株式を担保(質権設定)に入れる際には株券発行会社にすることがある。
そういったケースでなければ株券発行会社にする実益があまりなさそうである。
なお、譲渡制限株式に担保設定をした場合、担保権実行の際の株式譲渡の承認について、あらかじめ以下のような株式の譲渡制限に関する規定を置くことがある。
当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を要する。ただし、当会社の株式に係る担保権の実行(法定の手続によるもののほか、法定の手続によらない任意売却または代物弁済による実行を含む。)に伴う担保権者もしくはその子会社・関連会社または担保権者の指定する第三者に対する譲渡による取得については、株主総会の承認があったものとみなす。
では、会社法第128条をどう読むかということになるが、株券発行会社において、第1項で「株券発行後」の株式譲渡は株券の交付がなければ無効、第2項で「株券発行前」の株式譲渡は会社との関係では無効と読むということになりそうである。
P.259 単元株式数の設定、変更又は廃止
上場会社の単元株式数のことやデュアルクラスの手法については「(1-1・1-2①編)」で書いたとおりです。

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参考書籍
『商業登記ハンドブック〔第5版〕』松井信憲(著)|商事法務
『スタートアップ投資契約 モデル契約と解説』宍戸善一、ベンチャー・ロー・フォーラム(VLF)(編集)|商事法務
