香川県高松市の司法書士 川井事務所です。
上場廃止とは、証券取引所での株式などの売買が終了することをいいます。
廃止の理由としては、証券取引所の定める上場廃止基準に抵触したり、上場企業自らが廃止を選択するなどがあげられます。
今回は、上場廃止の流れ、上場廃止時に発生する可能性のある登記、各登記の手続き上の注意点などをまとめました。
上場廃止とは
上場廃止とは、証券取引所での株式などの売買が終了することをいいます。
廃止の理由としては、証券取引所の定める上場廃止基準に抵触したり、上場企業自らが廃止を選択するなどがあげられます。
なお、上場廃止基準には「上場維持基準への不適合」「有価証券報告書等の提出遅延」「虚偽記載又は不適正意見等」などがあります。
上場廃止手続きの流れ
上場廃止の方法により手続きの流れは様々のようですが、一例をあげると次のようになります。
上場廃止申請する場合
基準日:X年8月8日
公告日:X年7月22日
公告方法:電子公告
開催日:X年8月30日
X年8月30日
X年8月30日
整理銘柄とは、上場廃止基準に該当した場合、または、発行者からの上場廃止申請により上場廃止が決定した場合に、証券取引所により指定された銘柄のことです。
要は上場廃止が決定された銘柄のことです。
原則として1か月間整理銘柄に指定された後に上場廃止になります。
X年9月28日
X年9月29日
上場廃止の翌営業日
原則として上場廃止=証券保管振替機構の取扱廃止となりますが、例外もあります。
上場廃止時に発生する可能性のある登記
上場廃止の方法としては株式の併合による方法が多く取られているようです。
その場合は、株式の併合と同時に発行可能株式総数の変更と単元株式数の廃止をすることが一般的です。
上記も含めて上場廃止時に発生する可能性のある登記をあげてみます。
- 電子提供措置に関する規定の廃止
- 公告方法の変更
- 単元株式数の定め廃止
- 発行可能株式総数の変更
- 株式の譲渡制限の規定の設定
- 株主名簿管理人の廃止
- 取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定の廃止
- 非業務執行取締役等の会社に対する責任の制限に関する規定の廃止
- 取締役会設置会社の定め廃止
- 監査役会設定会社の定め廃止
- 監査役設置会社の定め廃止
- 監査等委員会設置会社の定め廃止
- 指名委員会等設置会社の定め廃止
- 会計監査人設置会社の定め廃止
- その他役員に関する変更登記
などが考えられます。
各登記手続きの注意点
上に挙げた登記についてそれぞれ注意点などをまとめてみます。
電子提供措置に関する規定の廃止
上場企業(=振替株式発行会社)は株主総会資料の電子提供措置に関する規定を置くことを義務づけられています。
上場企業のための制度といってもいいでしょう。
上場廃止となれば株主の数も限られますので不要となるはずです。
なお、この制度は2022年9月1日から始まりましたが、まだ電子提供措置の規定の設定の登記をしていない場合は、設定と同時に廃止の登記を申請することになります。
設定の登記を省略することはできません。
そんなケースはほぼないとは思いますが・・・。
公告方法の変更
場合によっては、電子公告から官報公告に変更することになります。
単元株式数の定め廃止
単元株式を設定したままだと単元未満株式の管理しなければならなくなるため、廃止した方がよいと考えられます。
上にも書いたように株式の併合による方法で上場廃止する場合は、併合と同時に廃止することになるようです。
発行可能株式総数の変更
上にも書いたように株式の併合による方法で上場廃止する場合は、併合と同時に変更することになるようです。
株式の譲渡制限の規定の設定
必ず設定することになるはずです。
また、上場廃止の一連の手続きの中でも急所となる手続きです。
上場廃止日以降もこの規定が設定されるまでは公開会社のルールで手続きを進めていく必要があります。
特に株主総会招集の手続きには注意しましょう。
当該規定を設定する場合はいわゆる特殊決議(会社法第309条第3項)が必要になりますので、上場廃止後に株主が複数残っている場合には、株主に対する事前の周知はしておいた方がよいと考えられます。
当該手続きには反対株主の株式買取請求が認められています(同法第116条第1項第1号)。
効力発生日の20日前までに株主に対する通知をする必要があります(同法同条第3項)。
招集手続きとあわせてスケジュールについては注意が必要です。
株主名簿管理人の廃止
発行会社の株式が証券保管振替機構での取扱いが廃止となれば、株主名簿管理人も不要となります。
登記手続き上、契約解除に関する書面の添付は不要ですが、念のため契約が解除されたかどうかの確認はしておいたほうがよいと考えます。
取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定の廃止
必ずしも廃止する必要はありませんが、監査役を廃止する場合は同時に廃止する必要があります(同法第426条第1項)。
非業務執行取締役等の会社に対する責任の制限に関する規定の廃止
廃止する場合があります。
取締役会設置会社の定め廃止
株式の譲渡制限の規定の設定をすることにより、公開会社でなくなるため、取締役会を廃止することが可能となります(同法第327条第1項第1号)。
必ずしも廃止する必要はありませんが、監査役を廃止する場合(かつ会計参与がいない場合)は同時に廃止する必要があります(同法第327条第2項)。
登記は発生しないのですが、取締役会廃止により代表取締役選定方法が変わることになりますので、代表取締役選定に関する手続きを忘れないようにしましょう。
監査役会設定会社の定め廃止・監査役設置会社の定め廃止・監査等委員会設置会社の定め廃止・指名委員会等設置会社の定め廃止・会計監査人設置会社の定め廃止
上場廃止しても、会社法上の大会社の要件を満たしている場合は会計監査人の定めを廃止することはできず、監査役も廃止することはできません(同法第327条第4項、第328条第2項)。
上場していても会社法上の大会社の要件を満たしていない場合があり、そのような会社が上場廃止した場合は監査役・会計監査人を廃止する可能性はあります。
監査役設置会社の定めを廃止すれば監査役は任期満了により退任し(同法第336条第4項第1号)、上記の通り取締役会設置会社の定めや取締役等の会社に対する責任の免除の規定に影響が及びます。
監査等委員会設置会社を廃止する場合は、重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定めも廃止することになります。
その他社外取締役などの役員の登記も発生することになります。
参考書籍
『商業登記ハンドブック〔第4版〕』松井 信憲(著)|商事法務
『事例で学ぶ会社法実務〈全訂第2版〉』金子登志雄・立花宏・幸先裕明(著)東京司法書士協同組合 (編集)|中央経済社
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