日本政策金融公庫の新株予約権付融資

香川県高松市の司法書士 川井事務所です。

金融機関による新株予約権付融資としては、現状、日本政策金融公庫が取り扱っているものがあります。

今回は、日本政策金融公庫の新株予約権付融資の概要、新株予約権の内容、新株予約権の登記について取り上げます。

目次

新株予約権付融資の概要

新株予約権付融資は主にスタートアップ向けに、必要な資金を無担保で融資する代わりに公庫が新株予約権を取得するという制度です。

日本政策金融公庫が公表している新株予約権付融資の実績は次のようになっています。

令和4年度5年度6年度前年度比
先数69先75先75先100%
金額75億円133億円143億円108%

(参考)日本政策金融公庫ウェブサイト
https://www.jfc.go.jp/n/recruit/business/business02.html

まだ年間100件ないぐらいですが、今後増えてくる可能性はあります。

融資限度額は20億円。

利率は基準利率(上限3%)、返済期間は20年以内(うち据置期間10年以内)となります。

通常、VC投資が入った後に融資が受けられることが想定されているようです。

新株予約権の内容

新株予約権の数

原則として、新株予約権を行使したものとして算出した発行済株式総数の50%以内。

新株予約権の目的たる株式の種類及び数又はその算定方法

直近で発行した優先株式が新株予約権の目的たる株式の種類になると考えられます。

募集新株予約権の払込金額若しくはその算定方法又は払込を要しないとする旨

無償

新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法

直近で発行した優先株式の行使価額と同額になると考えられます。

発行要項には、ストックオプションなど通常の新株予約権では見慣れない行使価額の「総額」が記載されているかもしれませんが、削除できるなら削除した方がよいと考えます。

たとえば、行使価額1株10,000円、新株予約権の目的となる株式数100株、総額1,000,000円であったところ、株式の分割により3分割した場合、調整式により、行使価額1株3333円、新株予約権の目的となる株式数300株、総額999,900円となり、当初総額と一致しなくなります。

当初総額が登記されていない事例もありますので、おそらく発行要項からも削除されていると推察します。

司法書士に発行要項が届いた段階で公庫の稟議が下りた後であれば、発行要項の修正ができないかもしれません。

その場合は、発行要項に記載されているものを登記しないでよいという根拠はなく、当初総額を登記せざるを得ないでしょう。

当初総額を登記した後に、実際に株式の分割が発生した場合は、総額も変更する(上記の例でいうと1,000,000円から999,900円に変更)ことで対応するしかないのではと考えられます。

新株予約権を行使することができる期間

新株予約権発行日から償還期限まで

会社が新株予約権を取得することができる事由及び取得の条件

会社が上場申請を決定した時に、新株予約権の全部を取得し、普通株式を目的とする新株予約権を対価として交付する内容の取得条項が付されます。

対価となる普通株式を目的とする新株予約権の内容も決まっており、それも登記することになります(会社法第236条第1項第7号へ・同法第911条第3項第12号ホ)ので、登記する内容は2倍のボリュームになります。

登記記録例

以下、新株予約権の登記の一例です。

発行要項と比較して察してください。

「新株予約権の名称」
第1回新株予約権
「新株予約権の数」
●個
「新株予約権の目的たる株式の種類及び数又はその算定方法」
A1種優先株式●株
各新株予約権1個当たりの目的たる株式数は、1株とする。
なお、会社が株式分割(A1種優先株式の無償割当てを含む。以下同じ。)又は株式併合を行う場合、次の算式により本新株予約権の目的たる株式の数を調整するものとする。ただし、かかる調整は、本新株予約権のうち当該時点で権利行使していない新株予約権の目的たる株式の数についてのみ行われるものとする。
調整後株式数=調整前株式数×分割(又は併合)の比率
上記のほか、行使価額の調整を行う場合は、各新株予約権1個当たりの目的たる株式の数を、次の算出方法により調整する。
             調整前  調整前の各新株予約権1個
調整後の各新株予約権1個 行使価額×当たりの目的たる株式数
当たりの目的たる株式数 =─────────────────
                  調整後行使価額
「募集新株予約権の払込金額若しくはその算定方法又は払込を要しないとする旨」
無償
「新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法」
(1)権利行使に際して払込みをなすべき額
イ 当初1株につき、金●円(以下「行使価額」という。)
ロ 本新株予約権の行使価額の総額は金●円とする。
(2)(3)の各号に掲げる事由により、行使価額の調整の必要が生じる場合は、行使価額を次に定める算式(以下「行使価額調整式」という。)をもって調整する。
     既発行 調整前  新発行 1株当たり
調整後  株式数×行使価額+株式数×払込金額
行使価額=──────────────────
       既発行株式数+新発行株式数
2 行使価額調整式の計算については、円位未満小数第1位まで算出し、小数第1位を四捨五入する。
3 行使価額調整式で使用する既発行株式数は、株主割当日がある場合はその日、また、株主割当日がない場合は調整後の行使価額を適用する日の前日における会社のA1種優先株式に係る発行済株式数(自己株式数を除く。)とする。
4 行使価額調整式で使用する新発行株式数は、(3)の各号に掲げる事由により発行されることとなるA1種優先株式(A1種優先株式以外の権利である場合には、その目的となるA1種優先株式)の数とする。なお、新株予約権の場合、新株発行に代えて自己株式を移転する場合及び自己株式を処分する場合の当該自己株式数を含むものとする。
5 行使価額調整式で使用する1株当たりの払込金額は、新株予約権の場合、新株予約権の払込金額と当該新株予約権の行使に際しての払込金額との合計額の1株当たりの額とする。
6 行使価額の調整が行われる場合には、会社は関連事項決定後直ちに本新株予約権者に対してその旨並びにその事由、調整後の行使価額及び適用の日、その他必要事項を届け出なければならない。
(3)行使価額調整式により行使価額の調整を行う場合及び調整後の行使価額の適用の日は、次の各号に定めるところによる。
一 行使価額調整式に使用する調整前行使価額を下回る払込金額をもってA1種優先株式を発行し又は移転する場合。
調整後の行使価額は、払込期日の翌日以降、また株主割当日がある場合はその日の翌日以降これを適用する。
二 株式の分割によりA1種優先株式を発行する場合。
イ 調整後行使価額は、株式分割のための株主割当日の翌日以降、これを適用する。ただし、剰余金から資本金に組入れられることを条件としてその部分をもって株式分割によりA1種優先株式を発行する旨会社法所定の承認機関で決議する場合で、当該剰余金の資本金組入れの決議をする株主総会の終結の日以前の日を株式分割のための株主割当日とする場合には、調整後の行使価額は、当該剰余金の資本金組入れの決議をした株主総会の終結の日の翌日以降これを適用する。
ロ 上記イただし書きの場合において、株式分割のための株主割当日の翌日から当該剰余金の資本金組入れの決議をした株主総会の終結の日までに行使をなした者に対しては、次の算出方法により、会社のA1種優先株式を発行する。
    ┌調整前  調整後 ┐ 調整前行使価額により当該
    │    -    │×
    └行使価額 行使価額┘ 期間内に発行された株式数
株式数=────────────────────────
            調整後行使価額
この場合に1株未満の端数を生じたときは、その端数に前記の調整後行使価額を乗じて算出された金額を現金をもって支払う。
三 行使価額調整式に使用する調整前行使価額を下回る価額をもってA1種優先株式の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを含む。以下この号において同じ。)を発行する場合。但し、会社が会社のインセンティブ報酬として会社又は会社の子会社の役員、従業員又はアドバイザーその他の役務提供者(以下「役職員等」という。)に対して新株予約権を発行する場合には、当該発行後において会社が会社のインセンティブ報酬として会社又は会社の子会社の役職員等に対して発行した新株予約権(但し、発行後権利行使されることなく放棄されたもの又は消却されたものを含まない。)の目的たる株式の合計数が当該発行の直後における発行済株式数の●%を超えないときは、適用されないものとする。
調整後の行使価額はその新株予約権の割当日に、また株主割当日がある場合はその日に、発行される新株予約権の全部が行使なされたものとみなし、その割当日の翌日又は株主割当日の翌日以降これを適用する。
(4)(3)の各号に掲げる事由のほか次の各号に該当する場合は、行使価額の調整を適切に行うものとし、会社は関連事項決定後直ちに本新株予約権者に対してその旨並びにその事由、調整後の行使価額及び適用の日、その他必要な事項を届け出なければならない。
一 合併、会社分割、資本金の減少、又は株式併合のために、行使価額の調整を必要とするとき。
二 前号のほか会社の発行済株式数(自己株式数を除く。)の変更又は変更の可能性を生じる事由の発生によって行使価額の調整を必要とするとき。
三 (3)の第三号に定める新株予約権の行使請求期間が終了したとき。ただし、その新株予約権の全部が行使された場合を除く。
「新株予約権を行使することができる期間」
令和●年●月●日から令和●年●月●日まで
(行使請求期間の最終日が会社の休日に当たる場合は、その前営業日が最終日となる。)
「会社が新株予約権を取得することができる事由及び取得の条件」
①会社が、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第16項に定める金融商品取引所に対しその株式を上場申請するために、申請基準決算日を取締役会の決議により決定した場合には、取締役会の決議日をもって、本新株予約権の全部を取得し、引換えに本新株予約権者に対し会社の普通株式を目的とする他の新株予約権を交付する。
②取得により発行すべき普通株式を目的とする他の新株予約権
本新株予約権1個の取得と引換えに交付すべき普通株式を目的とする他の新株予約権は1個とする。
「本新株予約権を取得するのと引換えに交付する他の新株予約権の内容、数及びその他条件」
「新株予約権の数」
●個
「新株予約権の目的たる株式の種類及び数又はその算定方法」
普通株式●株
各他の新株予約権1個当たりの目的たる株式数は、1株とする。
なお、会社が株式分割(普通株式の無償割当てを含む。以下同じ。)又は株式併合を行う場合、次の算式により他の新株予約権の目的たる株式の数を調整するものとする。ただし、かかる調整は、他の新株予約権のうち当該時点で権利行使していない新株予約権の目的たる株式の数についてのみ行われるものとする。
調整後株式数=調整前株式数×分割(又は併合)の比率
上記のほか、行使価額の調整を行う場合は、各他の新株予約権1個当たりの目的たる株式の数を、次の算出方法により調整する。
              調整前  調整前の各他の新株予約権
調整後の各他の新株予約権  行使価額×1個当たりの目的たる株式数
1個当たりの目的たる株式数=──────────────────
                   調整後行使価額
「募集新株予約権の払込金額若しくはその算定方法又は払込を要しないとする旨」
無償
「新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法」
(1)権利行使に際して払込みをなすべき額
イ 当初1株につき、金●円(以下「行使価額」という。)
ロ 本新株予約権の行使価額の総額は金●円とする。
(2)(3)の各号に掲げる事由により、行使価額の調整の必要が生じる場合は、行使価額を次に定める算式(以下「行使価額調整式」という。)をもって調整する。
     既発行 調整前  新発行 1株当たり
調整後  株式数×行使価額+株式数×払込金額
行使価額=──────────────────
       既発行株式数+新発行株式数
2 行使価額調整式の計算については、円位未満小数第1位まで算出し、小数第1位を四捨五入する。
3 行使価額調整式で使用する既発行株式数は、株主割当日がある場合はその日、また、株主割当日がない場合は調整後の行使価額を適用する日の前日における会社の普通株式に係る発行済株式数(自己株式数を除く。)とする。
4 行使価額調整式で使用する新発行株式数は、(3)の各号に掲げる事由により発行されることとなる普通株式(普通株式以外の権利である場合には、その目的となる普通株式)の数とする。なお、新株予約権の場合、新株発行に代えて自己株式を移転する場合及び自己株式を処分する場合の当該自己株式数を含むものとする。
5 行使価額調整式で使用する1株当たりの払込金額は、新株予約権の場合、新株予約権の払込金額と当該新株予約権の行使に際しての払込金額との合計額の1株当たりの額とする。
6 行使価額の調整が行われる場合には、会社は関連事項決定後直ちに他の新株予約権者に対してその旨並びにその事由、調整後の行使価額及び適用の日、その他必要事項を届け出なければならない。
(3)行使価額調整式により行使価額の調整を行う場合及び調整後の行使価額の適用の日は、次の各号に定めるところによる。
一 行使価額調整式に使用する調整前行使価額を下回る払込金額をもって普通株式を発行し又は移転する場合。
調整後の行使価額は、払込期日の翌日以降、また株主割当日がある場合はその日の翌日以降これを適用する。
一の2 行使価額調整式に使用する調整前行使価額を下回る潜在株式取得価額をもって普通株式を取得し得る潜在株式(取得請求権付株式又は取得条項付株式を意味する。以下同じ。)を発行し、又は移転する場合。なお、「潜在株式取得価額」とは、普通株式1株を取得するために当該潜在株式の取得及び取得原因(潜在株式に基づき会社が普通株式を交付する原因となる保有者若しくは会社の請求又は一定の事由を意味する。)の発生を通じて負担すべき金額を意味するものとし、以下同様とする。
調整後の行使価額は、払込期日の翌日以降、また株主割当日がある場合はその日の翌日以降これを適用する。
なお、本号に該当する場合における行使価額調整式の適用にあたって、「1株当たり払込金額」とは、潜在株式取得価額を意味するものとする。
二 株式の分割により普通株式を発行する場合。
イ 調整後行使価額は、株式分割のための株主割当日の翌日以降、これを適用する。
ただし、剰余金から資本金に組入れられることを条件としてその部分をもって株式分割により普通株式を発行する旨会社法所定の承認機関で決議する場合で、当該剰余金の資本金組入れの決議をする株主総会の終結の日以前の日を株式分割のための株主割当日とする場合には、調整後の行使価額は、当該剰余金の資本金組入れの決議をした株主総会の終結の日の翌日以降これを適用する。
ロ 上記イただし書きの場合において、株式分割のための株主割当日の翌日から当該剰余金の資本金組入れの決議をした株主総会の終結の日までに行使をなした者に対しては、次の算出方法により、会社の普通株式を発行する。
    ┌調整前  調整後 ┐ 調整前行使価額により当該
    │    -    │×
    └行使価額 行使価額┘ 期間内に発行された株式数
株式数=────────────────────────
            調整後行使価額
この場合に1株未満の端数を生じたときは、その端数に前記の調整後行使価額を乗じて算出された金額を現金をもって支払う。
三 行使価額調整式に使用する調整前行使価額を下回る価額をもって普通株式の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを含む。以下この号において同じ。)を発行する場合。但し、会社が会社のインセンティブ報酬として会社又は会社の子会社の役員、従業員又はアドバイザーその他の役務提供者(以下「役職員等」という。)に対して新株予約権を発行する場合には、当該発行後において会社が会社のインセンティブ報酬として会社又は会社の子会社の役職員等に対して発行した新株予約権(但し、発行後権利行使されることなく放棄されたもの又は消却されたものを含まない。)の目的たる株式の合計数が当該発行の直後における発行済株式数の●%を超えないときは、適用されないものとする。
調整後の行使価額はその新株予約権の割当日に、また株主割当日がある場合はその日に、発行される新株予約権の全部が行使なされたものとみなし、その割当日の翌日又は株主割当日の翌日以降これを適用する。
(4)(3)の各号に掲げる事由のほか次の各号に該当する場合は、行使価額の調整を適切に行うものとし、会社は関連事項決定後直ちに他の新株予約権者に対してその旨並びにその事由、調整後の行使価額及び適用の日、その他必要事項を届け出なければならない。
一 合併、会社分割、資本金の減少、又は株式併合のために、行使価額の調整を必要とするとき。
二 前号のほか会社の発行済株式数(自己株式数を除く。)の変更又は変更の可能性を生じる事由の発生によって行使価額の調整を必要とするとき。
三 (3)の第三号に定める新株予約権の行使請求期間が終了したとき。ただし、その新株予約権の全部が行使された場合を除く。
「新株予約権を行使することができる期間」
令和●年●月●日から令和●年●月●日まで
(行使請求期間の最終日が会社の休日に当たる場合は、その前営業日が最終日となる。)
「原因年月日」令和●年●月●日発行

新株予約権の登記手続き

公庫側で発行要項と総数引受契約のひな形が用意されています。

非公開会社・非取締役会設置会社であれば、原則として、株主総会特別決議で発行決議と総数引受契約の承認決議をすることになります。

非公開会社・取締役会設置会社であれば、原則として、株主総会特別決議で発行決議をし、取締役会で総数引受契約の承認決議をすることになります。

また、新株予約権付融資の新株予約権を発行する会社は、通常、種類株式発行会社となっているケースが多いと考えられますので、原則として、会社法第238条第4項の種類株主総会決議が必要となります。

ただし、定款で決議を要しない旨の定めを置いている場合は、種類株主総会決議は不要となり、定款を添付することになります。

参考書籍

『商業登記ハンドブック〔第5版〕』松井信憲(著)|商事法務

『「会社法」法令集〈第十四版〉』中央経済社(編集)|中央経済社

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この記事を書いた人

愛媛県四国中央市出身
早稲田大学政治経済学部卒業

平成28年司法書士試験合格
平成29年から約3年間、東京都内司法書士法人に勤務
不動産登記や会社・法人登記の分野で幅広く実務経験を積む

令和2年から香川県高松市にて開業
地元四国で超高齢社会の到来による社会的課題への取組みや地方経済の発展のために尽力している

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