有限会社の株式会社への移行と同時に代表者変更・本店移転

香川県高松市の司法書士 川井事務所です。

特例有限会社の株式会社への移行は、登記によって効力が発生します。

それと同時に代表取締役の変更、市内での本店移転の依頼を受けた場合、どのような手続きとなるでしょうか。

今回は特例有限会社の株式会社への移行と同時に代表取締役変更・本店移転する場合の手続きについて取り上げます。

目次

事例

  • 唯一の株主であり(代表)取締役であるAからその子であるBに株式を全部譲渡して、Aは取締役からも退任しBが(代表)取締役に就任します。
  • Bはそれと同時に会社の本店を高松市内で移転すること、事業目的を追加することを希望しています。
  • 登記に先行してAからBへの株式譲渡の手続きが済んでいます。

特例有限会社の株式会社への移行

特例有限会社の通常の株式会社への移行は、商号中に株式会社という文字を用いる定款の変更にかかる株主総会の特別決議を行い、本店所在地において移行の登記をすることにより、効力が生じます(整備法第45条)。

株式会社への移行の登記は、①株式会社の設立の登記と②特例有限会社の解散の登記を申請することになります(以下①②の登記を合わせて「移行の登記」といいます。)。

先行してBが会社の全ての株式を譲り受けており、また、Bの希望により有限会社を株式会社に移行したいため、株主B提案による株主総会書面決議により定款変更をするのが実態に即しており簡便でもあります。

なお、事業の目的は、株式会社への移行と同時に変更することができます。

別途登録免許税はかかりません。

本店移転

ところが、本店移転は上記①の株式会社の設立の登記の申請書に記載することができません。

株式会社の登記記録に移転後の本店が直接記録されると、当該登記記録から商号変更前の特例有限会社の登記記録を探すことができなくなるためです。

定款の本店所在地の記載が最小行政区画まで(本事例の場合「香川県高松市」)であって、同一市内で移転するのであれば、移行の登記の前件でも後件でも本店移転登記を申請することができます。

ただし、定款の本店所在地を具体的な所在場所まで定めている場合であって、株式会社への移行効力発生と本店移転の効力発生が同時に生ずるように定款変更の決議を行った場合は、株式会社への移行は登記が効力発生要件のため、本店移転登記は移行の登記の後件で申請せざるを得ません。

依頼会社が香川県内の高松市外の市町村に移転する場合も定款変更が必要となりますので、株式会社への移行効力発生と本店移転の効力発生が同時に生ずるように定款変更の決議を行う限りにおいては、移行の登記の後件で本店移転登記を申請することになります。

香川県外に移転するのであれば、法務局管轄外の移転となりますので、後件の本店移転登記が経由申請となります。

具体的には次のとおりとなります。

  • 1/4:設立の登記
  • 2/4:解散の登記
  • 3/4:本店移転の登記(旧本店所在地)
  • 4/4:本店移転の登記(新本店所在地)

本事例の場合、移行の登記の前件でも後件でもよいケースでしたが、株式会社の新しい登記簿に本店移転登記が入るのを避けたいと考え、前件で申請することにしました。

本店移転の時期及び場所(定款の定める最小行政区画内の具体的場所)は、取締役会設置会社でない場合、取締役の過半数の一致で決定すると解説されることが多いですが、株主総会決議でもかまいません。

本事例ではAの決定で移転することもできますが、本店移転はBの希望であり、株主B(まだ(代表)取締役ではない)提案による株主総会書面決議とするのが実態に即していると考えられます。

代表取締役変更

有限会社に役員の任期という概念はありませんでしたが、株式会社に移行すると任期を定めなければなりません。

移行時点で役員の在任期間が新たに設定した任期を超えている場合は、移行と同時に任期満了により退任することになります。

移行後の代表取締役の選定方法が株主総会の決議であれば、移行を決議する株主総会で代表取締役である取締役を選任することができます。

あるいは定款附則で代表取締役である取締役を定めることもできます。

移行後の代表取締役の選定方法が取締役の互選であったり、取締役会設置会社に移行する場合は、移行前に新取締役が代表取締役を選定することができませんが、この場合も定款附則に新体制の役員を記載する方法が有効となります。

本事例では、代表取締役の選定方法を株主総会の決議とし、移行を決議する株主総会で代表取締役である取締役としてBを選任することにしました。

登記手続き

上記検証のとおり、本店移転については移行の登記の前件で申請し、移行を決議する株主総会で代表取締役である取締役としてBを選任することにしました。

このことから株主総会の議案は、次のとおりとなります。

  • 第1号議案 本店移転の件
  • 第2号議案 定款の変更及び株式会社への移行の件
  • 第3号議案 取締役の任期満了による改選の件

申請は次の3連件となります。

  • 1/3:本店移転の登記
  • 2/3:設立の登記
  • 3/3:解散の登記

申請書(1/3)

申請人はA、添付書類は株主総会議事録、株主リスト、委任状。

株主総会議事録は後件でも添付しますので原本還付処理が必要です。

委任状はAが委任者で、改印するのであれば、改印前の会社実印を押印します。

申請書(2/3)

申請人はB、添付書類は定款、株主総会議事録、株主リスト、就任承諾書、印鑑証明書、委任状です。

定款は株主総会議事録の別紙として添付して、株主総会議事録の記載を援用することが多いと考えられます。

株主総会議事録は原本還付したい場合は、2件目でも原本還付処理をする必要があります。

委任状はBが委任者で、改印するのであれば、改印後の会社実印を押印します。

申請書(3/3)

申請人はB、添付書類はありません。

参考書籍

『商業登記ハンドブック〔第5版〕』松井信憲(著)|商事法務

『事例で学ぶ会社法実務〈全訂第2版〉』東京司法書士協同組合(編集)金子登志雄・立花宏・幸先裕明(著)|中央経済社

『会社法務書式集〈第3版〉』神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介・株式会社リーガル(著)|中央経済社

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この記事を書いた人

愛媛県四国中央市出身
早稲田大学政治経済学部卒業

平成28年司法書士試験合格
平成29年から約3年間、東京都内司法書士法人に勤務
不動産登記や会社・法人登記の分野で幅広く実務経験を積む

令和2年から香川県高松市にて開業
地元四国で超高齢社会の到来による社会的課題への取組みや地方経済の発展のために尽力している

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