投資事業有限責任組合(LPS)効力発生の登記

香川県高松市の司法書士 川井事務所です。

投資事業有限責任組合(LPS)は、スタートアップや不動産ファンドへの投資などを目的として組成される組合です。

LPSは、無限責任組合員(GP)と有限責任組合員(LP:Limited Partner)から構成されます。

今回はLPSについて、投資事業有限責任組合契約、組合の事業、登記手続きについて取り上げます。

なお、投資事業有限責任組合契約に関する法律を「LPS法」と、投資事業有限責任組合契約に関する法律施行令を「LPS法施行令」と表記します。

目次

投資事業有限責任組合契約

無限責任組合員(GP)と有限責任組合員(LP)

投資事業有限責任組合(Limited Partnership:以下「LPS」といいます。)とは、投資事業有限責任組合契約(以下「LPS契約」といいます。)によって成立する無限責任組合員(GP:General Partner)及び有限責任組合員(LP:Limited Partner)からなる組合をいいます(LPS法第2条第2項)。

合資会社の組合版のようなものだといえばイメージが湧きやすい人もいるかもしれません。

LPS法では無限責任組合員や有限責任組合員となる者の資格について特段制限はされていません。

しかし、後述のとおり無限責任組合員の氏名又は名称及び住所は登記事項であるところ、無限責任組合員は登記できる主体、つまり法人格を有する主体であることが必要と解されています。

たとえば民法上の組合を無限責任組合員として登記することはできず、組合員を無限責任組合員として登記している例もあるようです。

ところが、令和5年6月に投資事業有限責任組合契約及び有限責任事業組合契約登記規則が改正され、有限責任事業組合(Limited Liability Partnership:LLP)をLPSの無限責任組合員として登記することが可能となりました。

なお、LPSもLLPも登記できる組合です。

また、無限責任組合員の氏名又は名称及び住所が登記事項であることから、会社法上の外国会社は別として、外国法人を無限責任組合員として登記をすることはできないとされています(石川魁著『LPS法/LLP法』P.10注2参照)。

つまり外国法人が日本で無限責任組合員になるには、会社法第817条の規定に従い日本における代表者を置き、外国会社の登記をする必要があります。

依頼者に外国法人をGPにしたい旨を相談されたら

司法書士K

Japan Branchを置く必要がありますね

と答えられたらプロフェッショナル感が出るかもしれません。

諾成契約

LPS契約は、各当事者が出資を行い、共同で事業を営むことを約することにより、その効力が生じます(LPS法第3条第1項)。

つまり出資の履行は組合の成立要件ではなく、契約の効力発生後でもかまわないということになります。

絶対的記載事項

LPS契約は契約書を作成して次の絶対的記載事項を記載し、各組合員が署名又は記名押印しなければなりません(LPS法第3条第2項)。

契約書の押印については、無限責任組合員は個人であれば個人実印、法人であれば代表者個人実印または法人実印を押印します(後記の登記申請添付書類参照)。

なお、LPS契約はオンラインでも締結することか可能です。

この場合は、無限責任組合員がマイナンバーカードによる電子署名あるいは商業登記電子署名を施すことになります。

絶対的記載事項

  1. 組合の事業
  2. 組合の名称
  3. 組合の事務所の所在地
  4. 組合員の氏名又は名称及び住所並びに無限責任組合員と有限責任組合員との別
  5. 出資一口の金額
  6. 組合契約の効力が発生する年月日
  7. 組合の存続期間

経済産業省のモデル契約

経済産業省からLPSのモデル契約が公表されています。

上記絶対的記載事項の他、当該モデル契約記載事項をベースにLPSの目的に合った契約書を作成するのが実務上のやり方であろうと考えられます。

(令和7年版モデル契約)
https://www.meti.go.jp/press/2025/06/20250623001/20250623001.html

投資事業有限責任組合の事業

LPS法第3条第1項各号に、LPS契約の目的となり得る事業が列挙されています。

これは、一部の構成員についての有限責任を法令において認めるための前提としてLPSの実際に行う事業の類型を明確にするという目的で規定されたものであり、LPSにおいて本条第1項各号に含まれない行為を行うことを積極的に禁止又は制限する趣旨まで含むものではないとされています(石川魁著『LPS法/LLP法』P.10)。

では事業目的について以下確認していきます。

株式会社の株式・新株予約権、合同会社又は企業組合の持分の取得・保有(第1号・第2号)

株式等の取得及び保有がLPSの事業として認められています。

第1号で設立時に発行されるもの、第2号で設立後に発行されるものと区別されています。

区別されている理由は、「株式会社等の法人は登記を設立要件としている。そのため、設立に際して(設立登記の前に)発行される株式等は、厳密には株式会社等が発行するものとはいえない。」というものです(石川魁著『LPS法/LLP法』P.11注4)。

ところで、法人格のない組合(民法上の組合、投資事業有限責任組合(いわゆるLPS)、有限責任事業組合(いわゆるLLP))は、株式会社の発起人になることができないとされています(松井信憲著『商業登記ハンドブック』P.71)。

LPSが株式会社設立時に株式を取得するためには、①組合員個人が発起人となる、あるいは②募集設立として設立時募集株式の申込みをするのいずれかの方法になると考えられます。

指定有価証券の取得及び保有(第3号)

指定有価証券の取得及び保有がLPSの事業として認められています。

金商法上の有価証券の全てを取得できるわけではありません。

指定有価証券の内容は、LPS法施行令第2条に規定されており、社債券や投資信託の受益証券、投資法人の投資証券等が含まれます。

金銭債権の取得及び保有(第4号)

①事業者に対する金銭債権及び②事業者の所有する金銭債権の取得及び保有がLPSの事業として認められています(「事業者」の定義はLPS法第2条第1項のとおり)。

金銭の貸付け(第5号)

LPSは事業者に対する金銭の新たな貸付けを事業の目的とすることができますが、これが業としての金銭の貸付け(貸金業法第2条第1項)に該当する場合、貸金業法による規制を受けることになります。

匿名組合契約の出資の持分及び信託の受益権の取得及び保有(第6号)

匿名組合契約の出資の持分及び信託の受益権の取得及び保有がLPSの事業として認められています。

この信託の受益権における信託財産の種類は特段制限されていませんが、不動産の信託受益権が多いだろうと考えられます。

なお、LPSは、原則として現物不動産を取得・賃貸することはできません。

事業者のために発行される暗号資産の取得及び保有(第6号の2)

LPSが暗号資産も取得できるようになりました。

Web3.0スタートアップが資金調達の場面において有償で発行する暗号資産をLPSが取得する場面を想定した規定とされています。

工業所有権又は著作権の取得及び保有(第7号)

工業所有権とは、特許権、実用新案権、意匠権及び商標権や種苗法に基づく育成者権、半導体集積回路の回路配置に関する法律に基づく回路配置利用権等が含まれます。

経営又は技術の指導(第8号)

経営又は技術の指導とは、種々のコンサルティングやアドバイス等をいい、事業者の役員会への参加や事業者に対する役員その他の人材の斡旋、紹介及び派遣等を含むとされています。

他の投資ビークルへの出資(第9号)

LPSが他のLPSその他の投資ビークルへの投資をすることが可能です。

付随事業(10号)

第1号から第9号の事業に付随する事業であって政令で定めるものがLPSの事業として認められています。

この政令とはLPS法施行令第3条第1項各号のことを指します。

海外投資(11号)

外国法人の発行する株式等の取得及び保有であって、投資金額の合計額が既出資総額の50%未満に収まる範囲内のものであれば、LPSの事業として認められています。

余裕金の運用(12号)

LPS契約の目的を達成するためにLPS法施行令で定める方法により行う業務上の余裕金の運用が認められています。

具体的には次のものが認められています。

  • 銀行その他の金融機関への預金
  • 国債又は地方債の取得
  • 外国の政府関係機関等が主たる出資者となっている法人又は外国銀行等が発行又は債務保証する債券の取得

登記手続

対抗要件

LPSは、組合員全員が無限責任を負う民法上の組合とは異なり、有限責任組合員も存在することで成立する組合です。

そのため、一部の組合員が有限責任しか負わないにもかかわらず、そのことを知らずに当該組合員の信用力を評価して取引を行った相手方が不測の損害を受けるおそれがあります。

そこで、取引の相手方を保護するために公示制度としてLPSの登記をすることが認められています。

前述のとおり、LPS契約は、各当事者が出資を行い、共同で事業を営むことを約することにより、その効力が生じます(LPS法第3条第1項)。

登記は組合契約の効力発生とは関係がありません。

しかし、LPSの組合員は、組合契約の効力の発生の登記をしなければ、LPS法に規定された登記事項を第三者に対抗することができません(LPS法第4条)。

登記事項

LPSの登記事項は次のとおりです(LPS法第17条)。

LPSの登記事項

  1. 組合の事業
  2. 組合の名称
  3. 組合契約の効力が発生する年月日
  4. 組合の存続期間
  5. 無限責任組合員の氏名又は名称及び住所
  6. 組合の事務所の所在場所
  7. 法定の解散事由以外の解散の事由を定めたときは、その事由

組合の事業

前述の組合の事業を登記します。

組合の名称

組合にはその名称中に投資事業有限責任組合という文字を用いなければなりません(LPS法第5条第1項)。

有限責任組合員は、その氏、氏名又は名称を組合の名称中に用いることを許諾したときは、その使用以後に生じた組合の債務については、無限責任組合員と同一の責任を負うことになります(LPS法第5条第4項)。

組合契約の効力が発生する年月日

前述のとおり、LPSは組合契約を締結すれば成立する諾成契約です。

LPS契約に記載された効力発生日の到来によって組合契約の効力が生じます。

無限責任組合員の氏名又は名称及び住所

前述のとおり、令和5年6月に投資事業有限責任組合契約及び有限責任事業組合契約登記規則が改正され、LLPをLPSの無限責任組合員として登記することが可能となりました。

なお、LLPの組合員が無限責任組合員として登記されているLPSが、当該LLPを無限責任組合員として記載している投資事業有限責任組合契約書を添付して、当該LLPを無限責任組合員として更正登記をすることが可能です(令和5年6月12日民商第113号通達)。

組合の事務所の所在場所

契約書記載の組合の事務所の所在場所を登記します。

法定の解散事由以外の解散の事由を定めたときは、その事由

法定の解散事由以外の解散の事由を定めたときは、その事由を登記する必要があります。

法定の解散事由は次のとおりです。

(解散の事由)
第13条 組合は、次の事由によって解散する。ただし、第2号に掲げる事由による場合にあっては、その事由が生じた日から2週間以内であって解散の登記をする日までに、残存する組合員の一致によって新たに無限責任組合員又は有限責任組合員を加入させたときは、この限りでない。
一 目的たる事業の成功又はその成功の不能
二 無限責任組合員又は有限責任組合員の全員の脱退
三 存続期間の満了
四 組合契約で前3号に掲げる事由以外の解散の事由を定めたときは、その事由の発生

上記法定の解散事由に対して、経産省のLPSモデル契約の解散事由と比較したときに、どれが登記すべき解散事由となるかを確かめてみます。

経産省のLPSモデル契約の解散事由は、次のとおりです。

第43条 解散
1. 本組合は、次の各号に規定するいずれかの事由に該当する場合、解散するものとする。
① 本契約期間の終了
② 無限責任組合員が、総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員の同意を得た上、本組合が第5条第1項に規定する本組合の事業の目的を達成し、又は達成することが不能に至ったと決定したこと
③ 有限責任組合員の全員の脱退
④ 無限責任組合員が脱退した日から2週間以内であって本組合の解散の登記がなされる日までに、[有限責任組合員の全員一致 / 総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員の同意]により、後任の無限責任組合員が選任されないこと
⑤ 有限責任組合員の全員一致により本組合の解散が決定されたこと
⑥ 全ての有限責任組合員が適格機関投資家でなくなることその他の事由により、本組合を適法に運営することが困難であると無限責任組合員が合理的に判断した場合

まず、モデル契約第1号ですが、「本契約期間」は、モデル契約第6条第2項で「本組合の存続期間」であることが定義されていますので、LPS法第13条第3号の「存続期間の満了」に該当します。

第6条 本契約の効力発生日及び本組合の存続期間
1. 本契約の効力は、[ ]年[ ]月[ ]日(以下「効力発生日」という。)
2. 本組合の存続期間(以下「本契約期間」という。)は、効力発生日より[ ]年間とする。但し、無限責任組合員は、総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員の同意を得た場合には、各有限責任組合員に通知の上、当該期間の終了日の翌日から[更に1年間ずつ、最大[ ]年間 / 更に[ ]年間]を限度として、本契約期間を延長することができる。

モデル契約第3号・第4号はLPS法第13条第2号に該当します。

LPS法第13条第1号の「目的たる事業の成功又はその成功の不能」は、発生したか否かを客観的に判断することは困難です。

そのためモデル契約第2号のように一定の持分割合を有する有限責任組合員の同意を得て、無限責任組合員が事業の目的を達成し、または達成することが不能に至ったと決定したことを解散事由として規定するのが一般的です。

当該解散事由は、LPS第13条第4号に規定されるLPS契約で定めた解散事由となるため、登記する必要があります(同法第17条第4号)(モデル契約第二分冊逐条解説P. 67 参照)。

モデル契約第5号・第6号の解散事由はLPS法第4号に規定されるLPS契約で定めた解散事由と考えられるため、登記が必要です。

モデル契約のとおりの解散事由を定めた場合の登記する内容をまとめると次のとおりです。

  1. 無限責任組合員が、総有限責任組合員の出資口数の合計の[ ]分の[ ]以上に相当する出資口数を有する有限責任組合員の同意を得た上、本組合が第5条第1項に規定する本組合の事業の目的を達成し、又は達成することが不能に至ったと決定したこと
  2. 有限責任組合員の全員一致により本組合の解散が決定されたこと
  3. 全ての有限責任組合員が適格機関投資家でなくなることその他の事由により、本組合を適法に運営することが困難であると無限責任組合員が合理的に判断した場合

添付書類

組合契約の効力発生の登記申請の添付書類は次のとおりです。

添付書類

  1. 組合契約書(LPS法第27条)
  2. 組合契約書に押印した無限責任組合員の印鑑に関する次の書面(投資事業有限責任組合契約及び有限責任事業組合契約登記規則第7条第1項)
    ●無限責任組合員が自然人であるときは市町村発行の印鑑証明書
    ●無限責任組合員が法人であるときは当該法人の登記事項証明書(または会社法人番号等の提供)と当該法人代表者の個人の印鑑証明書(当該印鑑と当該法人の代表者(当該代表者が法人である場合にあっては当該代表者の職務を行うべき者)が登記所の提出している印鑑とが同一であるときを除く。)
  3. 登記の申請をする無限責任組合員が法人であるときは当該法人の登記事項証明書(または会社法人等番号の提供)(LPS法第26条第2項)

登録免許税

組合契約の効力発生の登記の登録免許税は3万円です(登録免許税法別表第一28(一)イ)。

印鑑届出

投資事業有限責任組合契約及び有限責任事業組合契約登記規則第8条において印鑑証明書に関する商業登記規則の諸規定を準用しています(商業登記規則第22条第1項前段、第32条の2等)。

したがいまして、LPSの無限責任組合員は代表印を届け出て、その印鑑証明書の交付を受けることができます。

参考書籍

『Q&A 投資事業有限責任組合の法務・税務(改訂版)』ファンド法務税務研究会(著)|税務経理協会

『LPS法/LLP法』石川 魁(著)|商事法務

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この記事を書いた人

愛媛県四国中央市出身
早稲田大学政治経済学部卒業

平成28年司法書士試験合格
平成29年から約3年間、東京都内司法書士法人に勤務
不動産登記や会社・法人登記の分野で幅広く実務経験を積む

令和2年から香川県高松市にて開業
地元四国で超高齢社会の到来による社会的課題への取組みや地方経済の発展のために尽力している

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