一般財団法人の設立手続きとは?定款作成や必要財産などをわかりやすく解説

香川県高松市の司法書士 川井事務所です。

一般財団法人は、一定の目的のために拠出された財産を運用するための法人です。

一般社団法人と並んで非営利法人の代表的な形態ですが、設立時に300万円以上の財産の拠出が必要である点や、評議員等の機関設計が異なる点など、特有のルールがあります。

また、税務上で優遇される「非営利型法人」となるためには、定款に特定の定めを置く必要があるため、事前の準備が極めて重要です。

今回は、遺言によらない一般財団法人の設立手続きの流れをはじめ、定款作成時の注意点や非営利型法人となるための要件、さらに設立登記の具体的な手続きについて取り上げます。

なお、この記事では、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律を「法人法」と表記します。

目次

一般財団法人とは?

一般社団法人との違い

一般財団法人は、一定の目的のために拠出された財産を運用する法人であり、「財産」の集まりに対して法人格が与えられるものです。

これに対し、一般社団法人は「人」の集まり(社員)を基礎として成立する法人という根本的な違いがあります。

また、一般社団法人の場合は社員総会の決議によって自らの意思で解散することができますが、一般財団法人には社員総会に相当する機関がなく、評議員会の決議による自主解散は認められていません。

一般財団法人は、定款で定めた存続期間の満了や、基本財産の滅失等の事由による目的事業の成功の不能など、法人法で定められた特定の事由によってのみ解散することになります(法人法第202条第1項)。

任意で定めることができる「基本財産」とは

一般財団法人には「基本財産」という概念があります。

法人の財産のうち、目的である事業を行うために不可欠なものとして定款で定めた基本財産があるときは、理事は定款で定めるところによりこれを維持し、かつ、目的事業を行うことを妨げることとなるような処分をしてはならないとされています。

なお、設立時に拠出された財産や、法人の存続のために確保すべき純資産が当然に「基本財産」になるわけではなく、一般財団法人が個々の事情に応じて任意に定款に設けるものです。

必ず置かなければならない機関とその人数要件

一般財団法人は、設立時から「評議員」「評議員会」「理事」「理事会」「監事」をすべて置かなければなりません。

各機関には厳格な人数要件や兼任禁止のルールが定められています。

評議員は3人以上、理事も3人以上必要となります(法人法第160条第1項)。

また、監事は、当該一般財団法人やその子法人の理事または使用人を兼ねることができません。

これらに加えて定款の定めにより「会計監査人」を置くこともできますが、貸借対照表の負債合計額が200億円以上の「大規模一般財団法人」の場合は、会計監査人の設置が法律で義務付けられています(法人法第2条第3号)。

税務上で優遇される「非営利型法人」とは?

普通法人との課税範囲の違い

一般財団法人は、法人税法上の区分において、一定の要件を満たすことで「非営利型法人(公益法人等)」として扱われます。

非営利型法人に該当する場合は、収益事業から生じた所得のみが課税対象となります(法人税法第2条第9号の2)。

これに対し、要件を満たさない「普通法人」となった場合は、法人が行うすべての事業から生じるすべての所得が課税対象となります(法人税法第14条第1項第20号)。

非営利型法人となるための2つの類型

非営利型法人には、「非営利性が徹底された法人」と「共益的活動を目的とする法人」の2つの類型があります。

これらのいずれかの要件のすべてに該当することで非営利型法人として扱われます(法人税法施行令第3条第1項・第2項)。

一般財団法人の設立に必要な財産と解散ルール

設立時には300万円以上の財産拠出が必要

一般財団法人を設立するには、設立者が財産を拠出する必要がありますが、設立に際して拠出をする財産の価額の合計額は300万円を下回ってはなりません(法人法第153条第2項)。

拠出する財産は金銭に限定されておらず、金銭以外の財産を拠出の目的とすることも可能です。

また、設立者の氏名又は名称を定款に記載するため、個人だけでなく既存の法人が設立者となって財産を拠出することも可能です。

なお、設立者の資格について、「自然人でも法人でもまた権利能力なき社団・財団でもよい」という意見がありますが(神﨑満治郎著『法人登記入門』P111)、法人格のない組合が、株式会社の発起人になることができない(松井信憲著『商業登記ハンドブック第5版』P71)こととの平仄が合わないようにも考えられ、設立者は自然人・法人に限られるのではないかと考えられます。

加えて、印鑑登録がされていない任意団体などは、事実上定款認証手続きができず、やはり設立者となるのは難しいでしょう。

純資産額が2期連続で300万円を下回ると解散

一般財団法人は、ある事業年度及びその翌事業年度に係る貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満となった場合には、当該翌事業年度に関する定時評議員会の終結の時に解散することとされています(法人法第202条第2項)。

一般財団法人は「財産」の集まりを基礎とする法人であるため、法人としての実体を保つために純資産を維持することが厳格に求められているのです。

一般財団法人の設立手続きの流れ

一般財団法人を設立する際の手続きは、主に以下の流れで進みます。

1. 定款の作成と公証人の認証

一般財団法人を設立するには、設立者(設立者が2人以上あるときは、その全員)が定款を作成し、署名または記名押印をしたうえで(法人法第152条第1項)、公証人の認証を受けなければなりません(法人法第155条)。

公証人の認証を受けなければ、定款の効力は生じません。

2. 財産の拠出の履行

設立者は、定款の認証後遅滞なく、設立者が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、拠出に係る金銭の全額を払い込み、または金銭以外の財産の全部を給付しなければなりません(法人法第157条第1項・第2項)。

3. 設立時評議員・理事・監事の選任

定款で設立時評議員、設立時理事、設立時監事を定めていないときは、財産の拠出の履行が完了した後、遅滞なく、定款で定めるところにより、これらの者を選任しなければなりません(法人法第159条第1項)。

4. 設立手続の調査

設立時理事及び設立時監事は、その選任後遅滞なく、財産の拠出の履行が完了していることや、一般財団法人の設立の手続きが法令又は定款に違反していないことを調査しなければなりません(法人法第161条第1項)。

5. 設立の登記

設立時理事の中から選定された法人を代表すべき者(設立時代表理事)が、法定の期限内に、主たる事務所の所在地を管轄する法務局へ設立の登記を申請します。

一般財団法人は、この設立の登記をすることによって成立します(法人法第163条)。

登記手続きの詳細については後述します。

定款作成における重要なポイント

定款の絶対的記載事項

一般財団法人の定款には、必ず記載しなければならない以下の10項目の絶対的記載事項があります(法人法第153条第1項)。

  1. 目的
  2. 名称
  3. 主たる事務所の所在地
  4. 設立者の氏名又は名称及び住所
  5. 設立に際して設立者が拠出をする財産及びその価額
  6. 設立時評議員、設立時理事及び設立時監事の選任に関する事項
  7. 会計監査人設置一般財団法人であるときは、設立時会計監査人の選任に関する事項
  8. 評議員の選任及び解任の方法
  9. 公告方法
  10. 事業年度

非営利型法人になるために必要な定款の記載

「非営利性が徹底された法人」として税務上の優遇を受ける要件を満たすためには、定款に特定の定めを置くことが求められます(法人税法施行令第3条第1項)。

  • 剰余金の分配を行わない旨(記載例:「この法人は、剰余金の分配を行うことができない。」)
  • 解散時の残余財産が国等に帰属する旨(記載例:「この法人が清算する場合において有する残余財産は、評議員会の決議を経て、国若しくは地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人…に贈与するものとする。」など)

親族等である理事の割合に関する制限

非営利型法人の要件を満たすためには、「理事のうち、理事のいずれか1名とその配偶者又は三親等内の親族その他法令で定める特殊の関係にある者の合計数は、理事総数の3分の1を超えてはならない」という実務上の重要要件があります(法人税法施行令第3条第1項第4号)。

一般財団法人では理事が最低3人必要となるため、親族が理事に就任する場合には構成に細心の注意が必要です。この要件違反を防ぐため、定款にあらかじめ定めておくことも考えられます。

定款に定めても無効になる事項

以下のような定めは、定款に記載しても効力を有しません。

  • 理事又は理事会が評議員を選任し、又は解任する旨の定款の定め(法人法第153条第3項第1号)
  • 設立者や社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定め(法人法第153条第3項第2号)
  • 法人法の規定により評議員会(社員総会)の決議を必要とする事項について、理事や理事会が決定できるとする定め(法人法第178条第3項)

一般財団法人の設立登記の手続き

登記の申請人・期限・管轄

設立の登記は、法人を代表すべき者(設立時代表理事など)の申請によって行います(法人法第319条第1項)。

申請の期限は、設立手続の調査が終了した日または設立者が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内です。

登記は、主たる事務所の所在地を管轄する法務局(登記所)に申請します(法人法第302条第1項)。

設立登記の主な登記事項

設立登記においては、主に以下の事項が登記記録として公示されます(法人法第302条第2項)。

  • 目的
  • 名称
  • 主たる事務所の所在場所
  • 存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め
  • 評議員、理事及び監事の氏名
  • 代表理事の氏名及び住所
  • 役員等の責任の免除に関する規定や、非業務執行理事等との間の責任限定契約についての定款の定めがあるときは、その定め
  • 公告方法(電子公告の場合は、情報提供を受けるために必要なウェブサイトのURL等)

設立登記の添付書面

設立登記の申請書には、法令に別段の定めがある場合を除き、主に以下の書類を添付する必要があります。

定款

公証人の認証を得たものが必要です。

定款の詳細については上記のとおりです。

財産の拠出の履行があったことを証する書面

金銭による拠出の場合は、設立時代表理事の作成に係る払込金額を証明する書面に、設立者名義の預金通帳の写しを合綴したもの等がこれに該当します。

設立時役員等の選任・選定に関する書面

  • 設立時評議員、設立時理事及び設立時監事の選任に関する書面
  • 設立時代表理事の選定に関する書面

就任承諾書(就任を承諾したことを証する書面)

設立時評議員、設立時理事、設立時監事及び設立時代表理事が就任を承諾したことを証する書面

設立時会計監査人を選任した場合の追加書面

  • 設立時会計監査人の選任に関する書面
  • 就任を承諾したことを証する書面
  • 設立時会計監査人が法人であるときは、当該法人の登記事項証明書(当該登記所の管轄区域内に当該法人の主たる事務所がある場合を除く)
  • 設立時会計監査人が法人でないときは、その者が公認会計士であることを証する書面

同意又は一致を証する書面

登記すべき事項につき設立者全員の同意又はある設立者の一致を要するときは、その同意又は一致があったことを証する書面

印鑑証明書 

一般財団法人は理事会を設置することが義務付けられているため、就任承諾書に押印した印鑑につき市区町村長が作成した証明書(印鑑証明書)を添付しなければならないのは、設立時代表理事のみとなります。

本人確認証明書 

上記の「印鑑についての証明書」を登記の申請書に添付する設立時代表理事を除き、設立時理事、設立時監事、設立時評議員が就任を承諾したことを証する書面には、そこに記載された氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている、市区町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(住民票の写しなど)を添付する必要があります。

登録免許税

主たる事務所の所在地における設立登記の登録免許税は、申請1件につき6万円です(登録免許税法別表第一第24号(一)ロ)。

参考書籍

『【新訂2版】公益法人・一般法人の登記』伊藤文秀(著)|全国公益法人協会

『内閣府モデル定款から読み解く公益・一般法人の法人運営手続 財団編 上巻』渋谷幸夫(著)|全国公益法人協会

『内閣府モデル定款から読み解く公益・一般法人の法人運営手続 財団編 下巻』渋谷幸夫(著)|全国公益法人協会

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この記事を書いた人

愛媛県四国中央市出身
早稲田大学政治経済学部卒業

平成28年司法書士試験合格
平成29年から約3年間、東京都内司法書士法人に勤務
不動産登記や会社・法人登記の分野で幅広く実務経験を積む

令和2年から香川県高松市にて開業
地元四国で超高齢社会の到来による社会的課題への取組みや地方経済の発展のために尽力している

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